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    hanakagari_km

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    hanakagari_km

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    ちゅ さん 【フェヒュ】 温かなぬくもりに包まれているのを感じながらヒューベルトは呼吸を続けた。ふわふわとしているくせにそれは力強く、頑強で、身を預けられる安心感を持っていた。身じろごうとする相手を引き留めて続きを強請ると上唇を食われた。呼吸を乱され、息苦しくなるのは自分だけだろうか。ヒューベルトはフェルディナントの香水に包まれながら口づけが解けぬよう首に巻きつけた腕に力を込めたが、すっかり蕩けた腕力には限界があり、とさりと背が寝台に沈んだ。
     ぼんやりとした輪郭は、対象物と近すぎるせいで像を描けない。
     最後まで離さなかった唇がリップ音と共に遠ざかると、熱い呼吸が唇の縁を行き交うのですら微弱な快感となった。
     緩く揺れる視界の先で恋人が気恥ずかしそうに眉を下ろす様子が見える。
     ヒューベルトが指先でいたずらにフェルディナントの耳たぶをいじれば、彼はくすぐったそうに目を細めた。身を離せば二人の間にあった温かな空気が消えたが、次はフェルディナントが上体を下ろして密着した。
     苦しまないよう加減され、耳の横に両肘を寝かせた相手は、幸福そうに微笑むと軽い啄みを仕掛けてくる。それに応えつつ、ヒューベルトは疑問を口にした。
    「どう、なさったのです」
    「いや、君は口づけが好きなのだなと」
     なにを言っているのだと眉を寄せれば、ちゅっと皺を取り除くように眉間の間に唇が下りてくる。
     そのまま唇は閉じた瞼の上に滑ると、目じりの雫を弱く吸った。
    「どういう意味です」
    「? 意味とは」
    「私が口づけを好きだとは」
    「そのままだが」
     心外だと不満を顔に出せばぺろりと唇が舌で舐められる。何をしているのかと問いかける隙はなく、続く舌がやはり唇を舐めるので音にならなかった。ぺろぺろと犬が水を飲むように唇の表面が舐められていく。
    「…ふぇ、ふ……んっ」
     それだけでは物足りなく、迎え入れるように唇を開くと舌ごと舐めら取られる。
     唇の裏を刺激されると心地は良いが、足りない。気持ちよさは満足値に達しているが何かが足りない。
     首に回したままでいた腕に力を込めて引き込むも、意図を察してくれない相手に焦れ、ヒューベルトは首を持ち上げるとフェルディナントの唇を奪った。舐めるために出されていた赤い舌を噛んで引き込み、好きなように絡ませる。
     ご満悦気味に甘く息を零すヒューベルトの額に垂れた前髪を優しく梳くと後ろに撫でつけ、そのまま髪を撫で続けるとフェルディナントも口づけに応えていく。
     次に唇が離れたのは、ジンと口先が痺れた頃であった。
    「分かったかい?」
    「……?」
     くたりと寝台に身を預けて胸で呼吸するヒューベルトの口端についた唾液を指腹でぬぐい取ると、フェルディナントは愛しさに負けた。出来るだけ刺激を与えぬようと配慮しつつも、最後にもう一度だけ唇を奪う。
    「…、ふぇるでぃ」
    「分かってなさげだな」
    「なにをです」
     少し呂律が回らない相手に覆いかぶさると、フェルディナントはヒューベルトに擦り寄って自分の匂いを擦りつけていく。
    「いや、なんでもないよ」
     きっと明日も唇が腫れる。
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