雪に咲く華の、それはそれは朱きこと 綺麗な姿はいつも見ている。
ファンデーションの上からまた何かの粉を叩いて普段からスベスベしている肌をより一層煌めかせ、目元にはジャケットに合わせたほんのりの青と、大きな瞳を引き締めるさりげないグレー。ばさばさ音を立てそうな睫毛は軽く流れを整えるだけでクルンと天を向き、仕上げにリップクリームをん〜ま…っと塗り込めば光の粒がぷるぷる弾けた。
「……で? さっきからなんなんですか。鬱陶しい」
「え〜。や、綺麗だなー…って」
「は?」
「なんでキレるんすか……」
「いえ別に怒ってはいませんけど」
「えぇ……。それにしちゃあ言葉の圧が強いっすよぉ〜?」
共演者の女の人が持ち歩いているものよりはだいぶ小さなメイクポーチ、ポーチというよりは小銭入れにも見えるサイズのそれをポイッとハンドバッグに放り込んで、着込んだコートのボタンを留めながら茨は片眉を持ち上げた。
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