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    @7_kankankan_100

    気の赴くままに書き物。今はエク霊、芹霊。(以前の分はヒプマイどひふです)
    正しい書き方はよく分かっていません。パッションだけです。
    書きかけ多数。

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    @7_kankankan_100

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    楠を育てる霊幻とエクボの話。
    なんか何書きたいか分からなくなってきた……。
    ブロマンスにしたかったんです。

    冒頭でみんなの未来をド捏造してるし、途中が書きかけのとこあります。

    #エク霊
    EkuRei

     茂夫が大人になり結婚して父親になった。
     子煩悩そのもので、時々霊幻の元へ子供の顔を見せに遊びに来てくれる。最初は人見知りしていた子供も霊幻に慣れてくると、ぱっと笑顔を向けるようになって、霊幻は初めて庇護欲というものを感じた。

     トメは必死に勉強をして理工学部へ進学し、今では宇宙科学館の学芸員として働いている。以前宇宙人にもらった石は誰に見せても信じてもらえていないそうだ。

     芹沢は転職はせず相談所にいてくれたが、ある年に世界を見てみたいと海外へ出た。あちこち移動していたようだが今は東南アジアのどこかの村で教師をしているそうだ。勉強をしたい子供たちの背中を押している。

     皆、それぞれの道を見つけた。

     そして霊幻は今でも霊とか相談所をやっている。
     
     しかし大きな依頼は受けていない。もう一人では捌ききれないのだ。そういった大口案件は、後進を育てている新羅、天草、盧舅などの系列の事務所へ再依頼している。受付窓口のようになってしまっているが、看板には未だ“霊とか”という謳い文句を掲げている。ここには霊が繋いできた縁が多過ぎる。それを未だ下げる気持ちにはなれないのだ。
     現在受けている依頼は主に口頭での相談事。霊幻の口だけは相変わらず流暢だった。
     依頼者の中には過去に出会った能力者たちもいる。霊幻の影響を大いに受けた、テロ組織爪の第七支部の幹部たちだ。
     

     相談所は人が集まる場所になった。
     けれど皆帰っていく場所がある。

     日が暮れると営業終了の相談所は、霊幻の足音がひとつだけの静かなものだった。
     
    「よう、お疲れさん」
    「エクボ。お疲れ、そっちはどうだった」

     足音はひとつだけだが、話し声はふたつ。
     エクボは今でも霊幻と行動を共にしていた。一時期姿を消していたこともあったが、どこもつまらなかったそうだ。俺様はやっぱりここが一番面白いわ、と言って以来、本当に居座っていた。もはや守護霊だ。

    「事故も事件もねえよ。平和なもんだ」
    「いいな、何よりだ」

     霊幻は出身地ではないが、自分を育ててくれたこの街を愛している。相談所の仕事がなくなったエクボに、代わりにこの街に異変がないかパトロールをするのを日課にするのはどうだと提案した。

    「ちっちぇえ小ぜり合いは説教しといてやったぜ」
    「お前の仕事もすっかり板についてきたんじゃないか。……なあエクボ」

     人がいない相談所はやたらと声が響く。霊幻は呟いたつもりだったが思いの外はっきりした音になってエクボに届いた。

    「なんだ」

     なんでここにずっと居るの?本当はそう聞こうとして、けれどすぐに口をつぐんだ。
     霊幻はなんとなく分かっているのだ。きっとエクボに好かれていると。
     ここが面白いから戻ってきたとは言っていたが、今や刺激も何も無い。平和を維持し見守るという根気のいる地味な仕事のどこにも面白みがあるというのか。
     エクボの存在は欲の塊。自分のやりたい事だけをするはずなのだ。自分の意に反して居るわけではない事が分かれば充分だ。

    「いや、今日の晩御飯何にしようかなって。商店街でもぶらついて決めるか」
    「おー、じゃあついてくぜ」

     上手く話を逸らせたようでエクボには特に怪しまれることはなかった。
     仕事が終わればエクボはこうして霊幻と少しばかり時間を過ごし、寝る時間になれば根城へ帰っていく。空き家になった氏神様の社らしい。()ついでに、参りにくる者の信仰心から霊素の補給をし、お礼にイタズラをする動物霊を懲らしめるのだそうだ。()
     時折、霊幻に引き止めれられれば共寝をする。寄り添うほど近くはないが、いるのが分かるくらい側で。
     理由は聞かない。エクボはなんとなく分かっているのだ。きっと霊幻に好かれている。
     除霊依頼を受けなくなった相談所に戻ってきたエクボを受け入れてくれたのが何よりの証拠だろう。


     二人は明確な言葉にしたことはないし、熱を持った気持ちとも違っていて、自分の時間にお前なら受け入れてもいい、と感じているからこそお互い何も言わずに連るんでいる。


     ある日、霊幻はエクボに呼ばれた。
     根城にしている社のそばにある楠が寿命なのだそうだ。その楠がエクボにお願いをしたのだという。

    「もう種はできないから、若芽を摘んで育ててほしいんだそうだ」

     鬱蒼とした雑木林。社へは、以前石畳があった痕跡の合間に子供の背丈ほどの雑草が生い茂っていて、そんなに距離はなかったが進むのに苦労した。
     しかし社に辿り着くとぽっかりとそこだけ切り取ったように空間ができていた。
     エクボの言う通り、社の後ろに巨木が佇んでいた。
    「こいつ昔に氏神に霊力分けててもらってたみてぇだな。それでここだけ領域が出来てんだ。でももう力も切れる。その最期の力で芽を生やしたんだと」
     
     霊幻はエクボとその楠の根本を覗き込むと艶々とした葉の若い芽が出ていた。

    「なんでまたエクボなんかにお願いを?」
    「なんかとはなんだ、このヤロウ。この楠は元々は氏神と一緒に拝まれたんだよ。でも時間と共に人が離れて土地も痩せちまって、寿命で果てていく覚悟してたらしいんだがな、俺様がここを根城にしちまったもんだから最盛期を思い出して惜しくなったって言うんだよ」

     霊幻が楠を見上げると葉が生い茂ってとても朽ちるようには見えなかった。それはかつては栄華を極めた者が最期まで自分を華々しく見せたい見栄のようで、霊幻は自分を投影してしまった。

    「わかった。その願いこの霊幻新隆が受けよう」

     久しく口にしていなかった決まり文句が勝手に口から溢れた。

     霊幻は楠の若芽を切り取り持ち帰った。育て方は自分で調べても良かったのだが、知識に長けた知り合いがいたので頼る事にした。
     峯岸いわく、どうやら楠は丈夫で育てやすいらしい。ただ、とんでもなく大きくなるから場所が確保できないなら育てないほうがいい、とも言われた。それは分かる。本体が、見上げた空を隠すほどの巨木だったのだ。
     幼木のうちは鉢植えでも大丈夫だそうで、植え替えの場所はその間になんとかすればいいだろう。

     霊幻の家へやってきた楠は日当たりのいい窓際へ置かれる。昔々にウォーターサーバーがあった場所だ。ここは帰ってきていの一番に目に入るうえに部屋のどこからでも見える。霊幻の部屋に大きな存在が生まれた。
     それから、楠が心配だからとエクボが根城を例の社から霊幻の家へと移した。

    「ただ今って言ったらお前がいるってこと?」
    「まあそうなるし、逆もあるだろ」
    「すげー!俺、誰かと一緒に住むの初めて」
    「暮らすんじゃなくて、俺様は居るってだけだぞ」
    「ああ、それもそうか」





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