ピロートーク「なぁ、赤い糸の話って、知ってる?」
「勿論。それこそ青木と繋がってなかったら泣いてしまいそうだ。」
見えないその『糸』を手繰るように井田の手がそっと近づいて、青木の小指に自分の小指を絡めてきた。
「ちょっと冷たいな。」
季節は秋の入り際、真夏の暑さがようやく過ぎようとする頃、朝晩はもう涼しいくらいで、青木の指先の熱は素早く奪われてゆく。
井田は年がら年中羨ましい恒温動物で、井田と触れてるとだんだん温まっていく感じがとても心地良く感じた。
小指を絡め合わせたままで、青木は聞いた。
「赤い糸の話って、どう生まれたんだろうな?」
「うーん、青木的には、あまり深掘りしない方が良いと思うぞ。」
「って事は、井田は知ってるのか?」
1119