日常が壊れるのはいつも突然だ。
結婚をして約三年、夫婦になってひと段落つき出した頃、光ノは夫の不審な部分を見つけた。元々光ノと夫は夫婦というには冷めている関係で同じ家に暮らしてはいるが、一般的なするであろう会話をしない。唯一あるとすれば、夫が光ノをクズや出来損ないの妻と言って罵倒をするぐらいだ。始めはグッと堪え言われた所を直そうと努力をしてきたが、三年間毎日毎日同じ言葉を浴びせ続けられると本当に自分は言葉通りの存在なのかもしれないと一種の洗脳にかかってしまう。
光ノも例外ではなく、はじめに比べれば夫が望む家事と仕事をこなすお人形のような妻になれているのだろう。いつしか光ノの顔から表情が消えた。たまに来る兄からの連絡も始めの方はちゃんと返していたが、途中どんどん返せなくなりいつしか疎遠になってしまっていた。光ノの唯一の味方は仕事で使う式神たちのみ。紙でありながらも意思を持つ子たちは光ノのそばにいてくれた。
35444