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    広義弓槍

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    まいにちいちちょこへの残骸

    現パロ11.24

    しとしとと雨が降る中、長次がページを捲る音だけが部屋に響く。大人しくしていられないと思われがちな小平太だが、雨の日に本を読んでいる長次の側で大人しくしているのは学生の時から好きだった。

    後ろからぎゅっと抱きしめたり背中にもたれ掛かったりしているとなんだか心も体もぽかぽかとしてくるし、膝に頭を乗せていたら本を読む片手間に髪を撫でてくれたりする。長次の手は大きいのにとても優しくて、ついうっかりうとうとしそうにもなる。そうするとどこからか毛布を持ってきて背中にかけてくれるのだ。まるで子供みたいだとは思わなくもないけれど、こればっかりは抗えないのだから仕方ない。
    それに、真剣な眼差しで活字を追う長次はいつまで見ていても飽きないのだ。それはもう本当にかっこいい。今はページを追っているあの瞳が自分を映す時に柔らかくなるのなんてたまらないと思う。

    「小平太、読み終わった。」
    「そうか!面白かったか?」
    「……ああ。」
    「ところで私は久しぶりにぼうろが食べたいぞ!」
    「……一緒に作るか?」
    「いいの!?」

    何より、最後まで読み終わった後の長次はたくさんかまってくれる。実はそれがいちばん嬉しいのだ。
     


    ─────────────────────


    11.25


    ただいまー!と元気な声と共に小平太が帰ってきた。その手にビール缶のパックがあるのを見て唐揚げにしておいて正解だったな、なんて思う。金曜日は家で飲む、というのが習慣になり始めたのはたしか大学生になってしばらくした頃。

    「わぁ、今日も美味そうだなぁ。」
    「つまみも作ってある。だから早く手を洗ってこい。」
    「わかってるさ!」

     あのころは一緒に住んでいなかったしお互い違う大学に進学していたから毎日会うという訳にもいかなかった。それに痺れを切らした小平太が毎週金曜日に酒と共にうちに上がり込んでは一泊して帰るようになったのがはじまりだ。そして同棲している今でもその習慣は続いている。
    たわいもない事を小平太が面白おかしく話して、自分がそれに相槌を打ち、また小平太が別の話をし始める。それがいつもの光景。

    「なあちょうじー。」
    「……なんだ?」
    「わたし、長次と一生一緒にいたいなぁ。」

    危うく椅子から転げ落ちそうになるのをなんとか堪えて小平太に向き直った。突然なんて事を言い出すんだろう。

    「あのな、職場の同僚が最近嫁さんの話ばっかりするんだ。羨ましいなぁって。」

     私と長次も結婚できれば良かったのにな、と溢す小平太が愛おしくってしょうがない、と思う。

    「ずっと一緒にいたいと思ってくれるなら、ずっといればいい。」
     
    小さい時からずっと隣にいたのはお互いだったのだ、これからもそうある事がいけないなんて事はないだろう。


    ──────────────────

    11.26

     ――寒い。朝起きた時にはすっかり冷たくなっていた鼻先に触れる。そろそろ炬燵やストーブを出す時期かもしれない。十一月になると一気に冷え込みが増してくる。本格的に寒くなり始める前に長次と冬支度をしてしまわないと、なんて考えながら小平太は布団から抜け出した。つい先程まで隣にいた自分がいなくなって寒いのだろうか、もぞもぞと動くかたまりが丸くなったのを見て思わず笑みが溢れる。

    「ちょうじ、ちょうじ。朝だぞ、もう八時だ。わたしはお腹が空いた。」

    ゆさゆさ揺すって起こそうと試みていたら、布団から手が出てきて逆に自分がすっぽりと長次の腕の中に収められてしまった。はなせ、と暴れていたら余計にしっかりと抱え込まれてしまう。

    「長次ー、朝だってば。起きてご飯食べよう?」

    「……小平太がいないと、寒い。」

    そのままぎゅっと抱きしめられては動くこともできない。さっきまでぱっちりと醒めていた目にも再び眠気が降りてきてしまう。

    「しかたないなぁ、じゃあちょっとだけだぞ。三十分だけだからなー……」

     そのまま、起きたらほとんど昼だったのはまあ言うまでもないだろう。お昼と朝ごはんが一緒になったみたいな食事を済ませ、少し遅めの一日が始まる。

     
    ─────────────────────

    11.27

    「紅葉が綺麗だってさ、長次。」
    地方ニュースを見ていたらしい小平太がソファから振り返って言った。もうそんな時期かと思わずカレンダーを見ると十一月も既に終盤、もう冬はすぐそこまで来ているらしい。
    「原稿の方も一段落ついてるんだろう?今日は天気も良いし見に行こう!」
    そうと決まれば早いのが小平太で、一時間後には小平太に連れられ、私は車の助手席に座っているのだった。
     
    「何故また急に......?」
    「今年は秋が短かったからな、長次と秋らしい事が出来なかったと思って!」
    確かに、言われてみれば今年の十月は私も小平太も忙しかったから珍しくどこにも出かけていなかった。学生時代ですら月に一回は二人で予定を合わせて出かけていたからこれだけ間が空いたのは珍しい事かもしれない。私も小平太もそれなりに仕事をいろいろ任されるようになったのはいいが、少し寂しい気もする。
     
    「来月は年締めだからまた少し忙しくなりそうなんだ、長次を補給しておかないと持たないと思って。」
    昨日思う存分ゆっくりしたから今日は一緒に出掛けたかったんだと小平太が笑った。あまり普段そういう事を言わないだけにどきりとしてしまう。
    「ふふ、久しぶりのデートだぞ!」
    深い意味はないのだろうが改めてそう言われると照れくさい。思わず赤くなる頬をマフラーを引き上げて隠すのだった。

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