密室 「……参ったな、」
「あはは~…怒ってます?」
「怒ってる。勿論君じゃなくて、こんなバカなことを考えた恐れ知らずなヤツに」
キラリ、とメガネの奥を光らせながら言う刑部にへらへらと唯は苦笑いを浮かべた。
刑部と唯。
目を覚ますとそこは真っ暗で、お互いの息遣い近すぎる距離が分かるくらいで一体どこに詰められてしまったのかも分からない。刑部はそんな今の状態に内心冷や汗ものだったが逆に唯はいつもと変わらず、それがまた刑部を苛立たせた。
「…君は、何も思わないのか?」
「えっ?」
素っ頓狂な声を上げる唯に深く刑部は息を吐いた。
「だから、俺とこんなに近い距離にいて何も思わないのかって聞いてる。…まあ、普段から誰彼構わず距離が近い君のことだ。気にしないのも当然、か」
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