寝れぬ夜に※ハイプ×ワイスピ
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(とりあえず一区切りついたな……)
キーボードを数回叩いて、保存が完了したダイアログが表示されるのを確認し、パソコンをスリープモードにする。コーヒーでも飲んで休憩にしようと思い仕事部屋からリビングに通じる扉を開けて部屋を出た瞬間ぼすん、と何かを蹴った感触。足元を見れば、扉横の壁のところにこんもりとした大きな白い山、俺が蹴ったのはその白い山裾の部分だった。
白い山の正体は、ベッドから掛け布団を持ってきて頭からそれを被っているオクタビオ。何がしたいんだと思いつつしゃがんで話しかける。
「オクタビオ。なにしてるんだこんなところで」
「…………」
反応がない。そっと布団を持ち上げて捲ると、両目いっぱいに涙を溜めながら両手で尻尾を掴み、その尻尾の先を噛んで嗚咽を堪えて震えるオタクビオが居た。
想定外の光景に驚きつつも、優しく頭を撫でてやる。1人で先に寝させるのは初めてじゃないし、喧嘩してるわけでもない、今日一日機嫌はよかったのに……と考えているとオクタビオが尻尾から口を離した。
「ぅっ、ぅぇ…っ、てじゅ、てじゅ…う゛っ」
「どうした、俺ならここにいる」
尻尾をぎゅうぎゅう握り締める手を優しく解いて自分の手を握らせる。かなり強く握りしめていたのか俺の手を握るオクタビオの指先が冷たくなっている。温めるように両手で包み込んでやるが撫でるのをやめて欲しくはなかったらしく、耳がぺったりと下がったままの頭をこちらに控えめに差し出してくる。
(流石に仕事に戻るわけにはいかないな)
何があったのかはわからないがこのまま放ったらかしにするわけにも、寝かせてまた1人にするわけにもいかない。
差し出された頭に軽くキスをして一撫でしてから、蹲って小さくなるオクタビオを抱き抱えて、すぐそばのソファに腰を下ろした。抱えて移動したわずかな時間の間にまた強く握る尻尾から手を離して繋ぎ、もう片手で頭から小さく丸まった背中を撫でる。
「何があった?話してみろ」
「てじゅん、てじゅん」
「ここにいる。大丈夫だ」
大丈夫、大丈夫と繰り返し耳元で囁いてやる。体が冷えないようにソファの背もたれにかけていたブランケットで包んでやれば、少しだけほっと息を吐いたようだ。
手を握って、背を撫でて、大丈夫だ俺はここにいると囁きながら時折キスをして、震える子猫が落ち着くのを待つ。
しばらくして嗚咽が微かになった頃、ようやくオクタビオが口を開いた。
「こわい、ゆめ」
なるほど、怖い夢を見たらしい。状態から察するに夢だとわかっても相当怖かったらしい。もしかしたら今もまだ怖くて不安なのかもしれない。
「どんな夢だったんだ?話せば怖くなくなるさ」
「……テジュンが、……う゛ぅ」
俺が、とだけ言って思い出して怖くなってしまったのかまたぐすぐすと嗚咽が漏れ始める。ここにいるから大丈夫だと伝えると嗚咽混じりに話し始めた。
「テジュンが、いなくなって……、それで、俺、ひとりになって……。ひうっ、ずっと待っ、てたけど。まって、たのに、ひくっテジュン、帰ってこなくてっ」
つまり、俺がどこかに消えてしまい、自分がひとりぼっちになる夢だったらしい。
「大丈夫だ、お前を置いてどこかに行ったりしない。お前を独りにしたりしない」
「こわ、あ、っこわかった……!」
「怖かったな。もう大丈夫だ」
優しく抱きしめれば、ぎゅうぎゅうと俺を離すまいとしがみついてくる。
「オー。顔あげて」
「…?」
涙の跡だらけの頬を撫でて、まだ溢れ続ける涙を指で拭ってやる。そのままやんわりと力を入れて上を向かせ、ほんのり開いた唇に優しくキスをしてやる。
「……しょっぱいな」
「んぅ…、てじゅん」
もっと。と言われる前に塞ぐ。ちゅ、ちゅっと子供みたいなキスを繰り返していれば、ようやく落ち着いたようだ。
「……ごめん、仕事してたのに」
「そんなことはいい。お前こそ、一人で我慢して部屋の前にいたんだな?」
「そりゃそうだろ、邪魔したくない」
「仕事よりお前の方が大事だ。今度何かあったら気にせず入ってこい」
「でも……」
「お前が我慢して一人で泣かせてることが嫌なんだ。泣くなら俺の前にしろ」
「……」
どうしてお前は変なところに気を使うんだろうな。そんなのさっさと捨てちまえばいい。もっと俺を頼ればいい。声には出さずにもう一度唇にキスをすれば、観念したように「わかった」と小さくオクタビオが呟いた。
「……もうちょっとだけ、こうしてて欲しい」
「ああ、もちろん」
変なところに気を使うのはすぐには治らなそうだな。と思いながら、俺は腕の中でいじらしくねだる恋人を優しく抱きしめた。
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チーターの時こどもみたいになっちゃうの誰かたすけて……!!!
次はちゃんと24歳児で書きたいネタ
2022-07-30 一生休日
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2022-08-31 一生休日