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    kanaria_niji

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    花火大会の燐ニキ(1714)

    今はこれで 花火大会はあんまり好きじゃない。
     たくさんの出店から漂う美味しそうな匂いが全方向から僕を襲ってくるけど、食費がカツカツな僕は頑張ってもチョコバナナくらいしか買えないから。
     それと、会場には友達同士や親子連れが沢山いるから。別に寂しくなんてないけれど、僕は一緒に行く友達もいなければ両親も日本にいないから花火大会には一人でいくはめになる。
     花火を見たってお腹は膨れないし、むしろ出店の匂いでお腹減っちゃうし。だから僕はしばらく花火大会に行ってなかったし、今年も行かないつもりだったのだ。……でも。
    「なぁ、花火ってなんだ?」
     故郷には無かった花火におにいさんは興味津々で。まぁ見るだけならと思って2人で花火大会に行くことにした。夕飯を多めに食べて、出店の誘惑に負けないようにして。人混みに紛れて迷子にならないように、僕はおにいさんの手を引っ張って花火がよく見えるところまで連れて行ってあげた。

     弾けるような音からしばしの間を置いて光華が夜空いっぱいに咲き誇る。花火なんて久しぶりに見たかも。花火大会への忌避感と共に花火までも避けていたのかもしれない、僕。何年かぶりに見た花火はとても綺麗だった。
     瞳に焼き付けて、ふとおにいさんの様子が気になって隣を見る。
    「……」
     おにいさんは瞳を輝かせて上空を見つめていた。楽しんでるみたい、よかった。初めて花火を見るおにいさん、微笑ましいなぁ。なんて思って見ていたのだけど、おにいさんの天色の瞳に反射する色とりどりの光はとても美しかった。綺麗だなぁ、おにいさん。僕はそれに目を奪われてしまって、花火を置いといてこっそりとおにいさんを見つめてしまう。
    「なぁニキ! 綺麗だな!」
     不意におにいさんが興奮気味に僕の方に視線を向けてくる。
     あ。バレた。僕がおにいさんのことじっと見てたこと。
     至近距離で僕とおにいさんの視線が絡む。そこで笑って「綺麗っすね」なんて返せばよかったのだけど、正面から見据える二対の天色と、それに溶ける色とりどりの光に僕は目が逸らせなかった。
     目が逸らせないということは、同時に、おにいさんも僕のことをじぃと見つめているわけで。はじめは僕と目が合ったことに驚いた表情を見せたおにいさん。だけど今は何かに焦がれるような、熱い眼差しで僕のことを射抜いている。おにいさんのあおい炎みたいな瞳に、焼ききれてしまいそうだった。
     ごくりと唾を飲み込んだのはどちらだったか。花火なんて気にならないくらい、2人の視線はずっと絡み合ったままだった。僕は無意識に「おにいさん」と小さく口を動かした。
     そんな僕に惹かれるようにして、おにいさんは僕に顔を近づけてきた。綺麗なおにいさんの顔が、至近距離に迫る。
     僕はどうしてか分からないけど、無意識にぎゅっと瞳を閉じた。
    「花火、見ろよ。せっかく見に来たんだし」
     耳元でおにいさんの声がして僕ははっと瞼を開ける。おにいさんは何かに耐えるような顔をして、僕を見ていた。
     僕が小さく頷くと、おにいさんもまた上空へと視線を戻す。ちらりと覗き見たおにいさんの耳元は真っ赤で、なんでか僕まで顔が熱くなってきた。

     どうしてだろう。おにいさんが顔を近づけてきた時、僕は何かに期待していた。わからない、それが何かわからないけれど。いつか、おにいさんはそれをくれる気がする。根拠の無い自身が、湧いてくるのだ。

     人混みが増えてきたから、迷子にならないように。僕は隣にいるおにいさんの大きな手をそっと掬いあげてぎゅっと握ってみた。おにいさんも優しい力でぎゅっと握り返してくれる。
    「……なはは」
     うん、今はこれでいいや。来年になったらくれるかな、僕が欲しかった何か。

     おにいさんと見る花火はとても綺麗で、少しだけ胸がドキドキした。
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