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    ON6s2

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    これが問題児。最終日なのに…終わらない。
    あえて載せる。
    本当はこの後のことが書きたくて書き始めたのに、書きたい場面に辿り着かなさすぎて諦めかけている……
    ここに晒すことで続きを書くよう尻をたたく!

    DAY3Day.3

    アラーム音が鳴り響く室内。もそもそと最初に布団から動き出したのは、昨日と同じく櫛山だった。眠い目を擦りながら上体を起こし眠気と闘っていると徐々に頭が冴えてくる。そして、意識が覚醒すると、眠っている二翼へと勢いよく視線を向けた。昨日と違い、別々の布団で眠る2人を目撃し、安堵に胸を撫で下ろした。ひと安心して、いつものヘアセットへと洗面台に姿を消した。
    次にのそりと目を覚まし、起き上がったのは千歳だった。洗面台から水の流れる音や、何かがぶつかり合う物音が小さく聞こえてくる。
    隣を見れば、橘は姿勢よく静かに眠っている。昨日もそうだったが、寝付くとなかなか起きないらしい。決まった時間には起きるが、それ以外では起きたくないのだと昨日ぼやいていた。
    昨日の薄暗かった部屋と比べて、今朝はすでに部屋の中は明るく照らされていた。太陽の光が窓から差し込み、橘の金髪がきらきらと目に眩しい。やっぱりまつ毛が長いだとか、微かに額が汗ばんでいるとか、唇が柔らかそうだとか、ぼおっとしながら眺めていた。すると、ペシンッと頭を軽く叩かれた。
    「いて」
    「朝チュンやめろ」
    「何もしとらんばい〜」
    枕元に何か気配を感じて起きた宇野木によって、千歳は頭を叩かれたのだった。叩かれた頭を撫でながら文句を言う千歳に、宇野木が真顔で返す。
    「よう考えてみなっせ。千歳が寝てたら、大丸がお前のこと見下ろして愛おしげに微笑んどるとぞ」
    「それは…最悪たい……」
    「そういうこつばい」
    「すみませんでした…」
    大丸が微笑む姿を想像して、口元を押さえて顔を青ざめさせる千歳。実は起きていた大丸だったが、この状況で起きたくなかったので狸寝入りしながら、とんだ言い草に額には青筋を浮かべていた。
    起きる気配がない橘を放置して、各々身支度を始める。寝ている人がいる事など気にも留めずに音を立てるが、橘が起きる気配はない。
    本当に眠っているのか?と疑問に思い宇野木がなんとなしに眺めていた時だった。橘の携帯からアラーム音が鳴り響くと、橘の目が大きく開かれた。
    「ひっ!?」
    がばりと上体を起こして軽く腕を伸ばすと、すぐに橘は布団から出て身支度を始めた。その様子をぽかんとして見ていると、寝起きとは思えないはきはきとした声で、橘がおはようとあいさつを交わす。
    驚いた時に尻餅をついた宇野木は呆然と橘を見上げることしか出来なかった。
    「こわ……」
    宇野木は、やっぱりこいつは意味が分からないと再確認することとなった。

    朝のランニングを終えた賑やかな朝の食堂。食堂のおばちゃんにレシピを聞くのが日課になりつつある橘を置いて、先に席に着いて他愛の無い話で盛り上がる。いっときして、橘がご機嫌で戻ってきた。
    「たいぎゃ嬉しそうやね。今日は何教えてもらったと?」
    ふふんと意味深な笑みを浮かべた橘が、何か書かれた紙を取り出した。よくよく見ると、そこには何かのレシピが書かれているようだ。
    「おばちゃんたちが、俺んために書いてくれてん。合宿で出てない献立まであって、帰ってから作るのが楽しみたい」
    この紙をもらってこんなに嬉しそうにするのはお前くらいだけん、全然羨ましいとは思わん。という野暮な言葉は飲み込んだ。
    「ヨカッタナー」
    「おう」
    「桔平、俺にも作ってな」
    「よかよ」
    橘は温かい目に見守られ、美味しそうに焼き鮭を齧った。





    今日の練習は、紅白戦だ。内容は不明だが、負けた方には罰ゲームがあるらしい。シングルスとダブルスの選手、ダブルスで組ませるメンバーなど、采配は全てチームリーダーに任される。惷先輩と鷲尾先輩はそれぞれのチームに監督として入り、戦力としては数えられない。
    全体のチーム分けが順番に発表されていく。
    櫛山、大丸、宇野木が紅チームへ。
    橘、千歳が白チームへ。
    「お前らなんでセットなん」
    「紅にレギュラー陣が多いからやろ」
    レギュラーが多いからと言うよりかは、この二翼を考慮しての采配に感じて、大丸は複雑な気持ちになった。
    1年にして全国レベル。実力主義の強豪校なのだから仕方ないにしても、同じ1年である身として面白くはない。それでもいつか、肩を並べる選手になってやると、グリップを強く握りしめる。
    チームごとに集まる時、櫛山が大丸の肩を組んだ。にやにやしながら大丸の顔をつつく。
    「顔に出とるぞ」
    「うるしゃー」
    「ま、まずは試合でコートに立てるようになってからたい」
    宇野木が飄々とした調子で隣へ並ぶ。
    「そんなこと分かっとるばい」
    同じ学年に強い奴がいると大変だなと、三人は笑い合った。
    一方、白チームになった橘と千歳。
    「俺らが一緒なのは」
    「ダブルスやね」
    元々シングルスの方が性に合う2人だが、惷先輩と鷲尾先輩が抜け、ダブルスが弱くなっていることを懸念してのことだろう。
    「ばってん、惷先輩と鷲尾先輩が相手やないのは悔しか」
    「先輩に勝ったら、試合してもらえばよか」
    「それ良かな。もちろん、勝つばい」
    橘の熱量ある力強い瞳が千歳の瞳を射抜く。
    普段あまり何かに熱くなれない千歳に、こんなにも簡単に熱を点すのは橘だけだ。じんわりと内側から熱くなっていく。この瞬間が、千歳は好きだ。
    どちらからともなく突き出した拳をぶつけ合った。
    そんな2人の元へ惷先輩が合流する。
    「やる気満々やね」
    「先輩らと試合がしたかったです」
    「可愛かこつ言ってくれるばい。ばってん、俺の後輩舐めんな」
    全国区の後輩だとはいえ、自分達と一緒に戦ってきた後輩への敬意が感じられずつい噛みついてしまった。すると、間髪入れずに橘から真っ直ぐに言葉が返された。
    「俺たちの先輩ば、舐めるこつせんです」
    一瞬面食らった顔をしたが、すぐににんまりと楽しそうに惷先輩が笑う。
    「後輩舐めとるのは、俺の方やったみたいやな」
    ぽんぽんと頭を撫でる様は、まるで犬をかわいがっているようだ。さすが猛獣使いだと様子を見守る部員たち。
    「俺らが先輩に勝ったら、試合してほしかです」
    頭を撫でる腕越しに向けられる痛いほどの視線が突き刺さる。思わず惷先輩の撫でる手が止まった。千歳も黙ったままだが、橘と同じように真っ直ぐに見つめていた。
    後輩から向けられる熱い視線に思わず漏れる笑み。まるで獲物を狙う猛獣のようだ。
    「お前らの実力次第ばい」
    さて、この二匹の猛獣は、今回は狩る側か狩られる側か。惷先輩はただ、瞳を細めた。

    紅白戦とはいえ、自分の実力を見せる絶好の機会である。ここで実力を発揮できれば、1年からレギュラーを狙える。また、レギュラー陣も自分の座を奪われないように本気で挑むため、紅白戦とは思えない熱気がコートを帯びていた。これは、夏の大会に向けての選抜も兼ねた大事な練習試合だ。そのため、各学年から必ず一人以上は出場するように指示もされていた。
    獅子楽は全国大会出場の常連校なだけあり、個人の実力は高い。白熱した試合が続く。
    「今の球、お前ならどう返す?」
    「そやねぇ。地面についた瞬間の軌道の曲がり方がえぐいけん、地面に着く前に叩くたい」
    応援しながら、試合内容を分析していく。一進一退の攻防が続く試合の中、別コートでは次の試合が始まろうとしていた。相手チームからシングルスで選抜されたのは大丸だった。
    「あっちチーム大丸が出てるばい!」
    「大丸〜!いいとこ見せんねー!!」
    大丸が出てきた途端に元気に煽り出す二翼に、大丸は黙って中指を立てて見せる。それすら面白く感じるようで、ゲラゲラと笑う二人に惷先輩が警笛を鳴らした。すると、ピタリと笑うのをやめて、真面目に応援をし出す二翼。だが、どこか棒読みに聞こえる声援に、大丸は余計にイラッとしながら無視を決め込んだ。
    相手は3年、しかもレギュラーメンバーの一人だった。大丸は自分の運の悪さを恨みながら、このチャンスを逃す訳にはいかないと、軽く息を吐いて気持ちを落ち着かせた。
    「1年の中じゃ、俺らの次に上手いのは大丸だけんなぁ」
    「妥当やね」
    ホイッスルの音で始まる試合。大きな決定打も目立つようなミスもない、可もなく不可もない試合展開が続く。
    「相変わらず、大丸は決定打にかけとーね」
    そんな試合を眺めながら呟いた惷先輩の言葉に、橘と千歳も頷く。大丸は実力はあるのだが、突出した武器がないのだ。逆に、大きな穴もないと言えばない。
    「ばってん、大きな穴のなか選手なんち全国にたいぎゃおるばい」
    「全国ば目指すなら、何か技でん身につけんと厳しかろうね」
    「あいつアホやからなぁ〜。一応あとで教えてやるばい」
    そんな事を言われてるとは露知らず、大丸はベストを尽くした上で負けた。悔しかったが、チャンスをもらえただけでも一歩リードしているのだと自分に言い聞かせ、ベンチへと戻っていく背中は満足気だ。その背中を見て、橘が眉をしかめる。
    「あぎゃんテニスで満足なんちしとらせんやろな」
    「どうやろねぇ、大丸やけん」
    苛立っている橘を宥めるようにぽんぽんと軽く頭の上に手の平を乗せた。もちろんその手は勢いよく叩き落とされてしまったが。
    「千歳、アップしに行くばい」
    返事を聞く前に移動を始める橘に、何を言うでもなく千歳が後に続く。その背中に惷先輩の声が飛んだ。
    「どっか行くなら報告していけ〜」
    「アップしに行ってきま〜す!」
    「いってらっしゃ〜い」
    軽い返事で2人の背中を見送る。まだアップを始めるには早いが、見てるだけでは落ち着かないのだろう。それに、あの2人はすでに先輩を見て学べというようなレベルではない。むしろ今の獅子楽のメンツでは力量不足ですらある。試合を見ながら的確に指摘できるということは、対応できるということだ。
    「う〜ん、俺たちもアップしてた方がいいかもしれんね」
    惷先輩は鷲尾先輩へとメッセージを送り、口角を持ち上げてダブルス戦を楽しみに待ち侘びた。
    シングルス戦が終わるまでアップをしていた橘と千歳は、敵チームである大丸たちと合流した。
    「大丸く〜ん、試合出れて良かったばいね」
    「一言感想どうぞ〜」
    ニマニマと小馬鹿にした笑いを浮かべる二翼。そんな2人を相手にすると碌なことがないので大丸は無視を決め込んだ。そこへ櫛山が横から口を挟んだ。
    「お前ら次が試合やなかと」
    「俺たちは2試合目ばい」
    それを聞いて3人は顔を見合わせると、にっと勝ち誇ったように笑った。
    「お前らの負ける姿が見れるかもしれんね!」
    「なんてったって現獅子楽のエースダブルスやからなあ!」
    それを聞いた途端、橘は千歳の肩に腕を回すと引き寄せた。橘の頭の頭に乗る形になり、金の髪が千歳の顔をくすぐる。
    「俺たちが勝つに決まっとる」
    一切の迷いがない芯の通った声に、ふっと千歳の口元には自然と笑みが浮かぶ。
    「桔平と組んで負ける訳なか」
    何か言いたげな面々を置いて、2人は試合が始まる前にチームへと戻って行った。あとは実力で黙らせるしかないのだと。
    「ただいま戻りました〜」
    「おけぇり〜」
    ダブルス戦の1試合目が始まろうとしているところで、惷先輩の元へと戻ってきた。



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