暗い部屋の中で2つの影が重なる。
触れ合った唇を離し、女の顔を覗き見る。
そこには涙が一筋、頬を伝っていた。
……どうした。
ぼうっと物思いに耽る寂雷に獄は優しく声をかけた。
また、こんなふうに獄と過ごせるなんて思ってもいなかったから……つい。
寂雷が瞳を閉じると1つ、また1つと涙がこぼれ落ちる。
自分の腕の中に寂雷を引き寄せた。
まだキスしただけだろ。そんな反応されたら、こっちまで気が狂う。
2人が恋人として過ごす時間は
キスも体を重ねることも何度も経験していた。
本心をぶつけ合ってから初めて
思えば、こうやってただ静かに過ごすなんてしたことがなかったね。昔は獄といることが当たり前で……いなくなることなんて考えてもいなかった。
寂雷は黙って頷いた。
こいつは、神宮寺寂雷という人間は、あまりにも不器用だ。
天才故に人の気持ちに疎くて、そのくせ寂しがりやで、寂雷が弱い人間だということを俺が一番よく知っていたのに。俺はあの日、寂雷から離れた。