私にはシンには言えない願いがある。
言ってしまえばきっと、彼は泣いてしまうから。
「射撃を教えてほしい?」
「はい」
見知った黒服の背中を見かけて声をかけた。
久しぶりだな、と気さくな挨拶をしてくれた先輩は以前より憧れていたエルスマン大尉だ。
「いやいや、赤服のエリートに教えることなんてないって。ていうかイザークじゃなくて俺?
それにルナマリアにはアイツがいるだろ?」
アイツとはシンのこと。
でもシンには言えない、という訳ではないけれど、出来ればシンには伏せておきたい。
「…内緒にする訳じゃないですけど、出来ればシンには悟られたくないんです。
ジュール中佐の射撃の腕は知ってますけど、大尉も先の大戦で活躍されてるじゃないですか。
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