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    まめだぬき

    @mamedanuki__hp

    書いてはみたけど支部に投げるのは考えちゃうものを置いておきます。

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    まめだぬき

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    ※特殊設定注意

    ヤンデレタコ類くんが、好きになった王様の司くんにアタックする話です。
    類くんのタコ化、及び司くんの王様設定が含まれますので、苦手な方はご注意ください。

    エアスケブ依頼、ありがとうございました!そこまでヤンデレしてませんが、目を瞑っていただけると有り難いです。

    タコ類に見つかる司の話初めて彼に出会ったのは、公務で国の状態を見に行っていた時だった。国民に大きな貧富の差はないか、人々が笑って過ごせているのか、スラム街で病気が発生していないか。数週間かけて確認項目を埋めていくのだから、大勢での移動は向いていない。護衛の者を数人引き連れて、司はハードなスケジュールをこなしていた。
    束の間の休息、とでも言うべきか。海沿いの街へ移動し、予め予約していた宿で荷物を下ろした後、司はこっそり海へと向かった。宿に到着した時間が予定より少し早かったため、仕事まで暇な時間が出来てしまったのだ。もちろんやるべき事は山のようにあるが、それでもやはり長期的な公務を行うには息抜きだって必要だろう、と心の中で言い訳をし、誰にも言わずに宿を出た。
    もしかしたら、一人になりたかったのかもしれない。そんな本音を曖昧に飲み込みながら、サクサクと砂浜を歩く。砂に靴が埋まる感覚が楽しくて、司は夢中になって歩いていた。ハッと気づいた時には、宿へ戻る道は遥か後ろへ遠のいており、司はしまったとため息をついた。その瞬間だった。

    「あれ?見ない顔だね?」

    「だ、誰だ!」

    「フフ、そんなに驚かないでよ。もしかして、旅行に来たの?」

    波の音に掻き消されずに司の耳に届いた甘い声。慌てて振り返った岩場には、上半身を覗かせてゆったりと岩にもたれる紫色の髪の男がいた。男はにっこりと笑うと、まるで歌うように司に話しかけてくる。

    「僕は類っていうんだ。君の名前は?」

    「……つ、司だ……」

    「司くんっていうんだ!素敵な名前だね」

    ふわりと類が微笑む。金色の瞳に見つめられ、ドキンと胸が高鳴った。今までに見たことがないほど、端正な顔立ちをしている。きっと女性なんかはあっという間に類に恋をしてしまうんだろうな、なんて司はぼんやりと考えていた。

    「ねぇ司くん。君はどこから来たんだい?」

    「あ、あぁ、えっと、」

    自分がいた街の名前を出そうか迷ったが、あの街は比較的位の高い人間が多く住んでいる。下手に街の名前を出して、司が王様だと類に気付かれては、今回の公務は意味がない。そもそも今回司は、自分が王である事を黙って視察に来ていたのだ。ここでうっかり口を滑らせて仕事をおじゃんにするのは、司だって本意ではない。
    司は類に悟られぬように小さく深呼吸をすると、国の東の方にある小さな街の名前を答えた。一昨日見に行ったばかりだし、名産品だって把握している。相当マニアックな質問をされない限り、この嘘がバレることはないだろう。
    案の定類は司の嘘を信じたのか、あぁ、確か織物が有名な、なんて呟いていた。司はホッと息をついた。どうやら司が王であるということは、気付かれていないらしい。

    「今日は一人旅に来ていてな。類はここに住んでいるのか?」

    「そうだよ。海が綺麗な街だろう?魚がすごく美味しいから、ぜひ司くんも食べるといいよ」

    人の良さそうな笑みを浮かべる類に相槌を打ちながら、司はそろそろ宿に戻らねばと考えていた。まだ次の仕事までは時間があるが、部屋に司がいないとなれば一緒に来ていた奴らが大騒ぎするに違いない。

    「すまん、類。オレはそろそろ宿に戻らないといけないんだ」

    「あぁ、言われてみれば、丁度お昼時だしねぇ。僕も帰るとするよ」

    「お前に会えて楽しかったぞ!色々教えてくれてありがとう!」

    「フフ、どういたしまして。旅行、楽しんでね」

    ひらりと手を振る類に手を振り返し、司は慌てて来た道を引き返した。そういえば類はずっと海に浸かっていたのだろうか、とか、類の声はどうして波の音に掻き消されなかったのだろうか、なんて疑問は、宿に着いて部屋に入った瞬間に浴びせられた大臣の怒号により全て吹き飛んでしまった。

    ***

    あぁ、可愛い。まさか噂に聞いていた王様がこんなに可愛いなんて。歳だって、きっとまだ若いんだろうな。だってあんなに純粋無垢な顔をしていたのだから。
    多くの人に好かれる王様、司くんを、早く手に入れたい。早く僕のものにしたい。僕だけの司くんにしたい。
    あぁ、いけない。口元が緩んで仕方ないや。だって、あんなに綺麗な司くんをぎゅって抱きしめたら、それはそれは良い気分になれそうなんだから。
    ……司くんを味わうのは、僕だけでいいよね。

    ***

    崖の上にある、海が良く見えるレストラン。夕食はそこで食べようと決めた司たちは、案内された大きなテーブル席に座り、翌日の予定を話し合っていた。意外と広いこの街は、見て回るのに案外時間が掛かる。
    少し早い時間に来たからか、夕焼けが海に反射してキラキラとオレンジ色に輝いていた。綺麗だな、と口から言葉が溢れる。司がいた街から海は見えなかったので、明日のスケジュールを話し合う声に適当に返事をしながら、海を瞳に焼き付けるようにじっと見つめていた。

    「お待たせしました」

    柔らかい、それでいてしっかりと通る男の声が響く。どうやら注文した料理が運ばれて来たらしい。確か自分はシーフードパスタか何かを頼んだ記憶がある。料理を受け取ろうと手を伸ばした瞬間、司はウェイターの顔を見てピシリと固まった。

    「お、お前、」

    「おや、どこかで見た顔だと思ったら」

    類だった。白を基調とした、それでも海を感じさせるような水色の刺繍の施された制服を身に纏い、彼はにっこりと笑った。
    腕に乗せた料理を次々とテーブルへ移しながら、類はそっと大臣たちへ視線を移す。申し訳なさそうに眉を下げながら、まるで舞台にでも立っているかのような調子で、類はこう語った。

    「突然すみません。彼がどうしても、亡くなった僕の友人に似ているもので……もしよろしければ、ほんの少しだけ二人きりにさせてくれませんか?」

    いとも簡単に人間の同情を買う、悲痛な訴えと声色。もちろん大臣たちが頷かない筈もなく、国民の心を労わるのも王の役目だ、とばかりに送り出され、類に手を引かれて店の奥の個室へと連れて行かれた。
    終始にこにこと笑っている類に若干の不気味さを覚えつつも、一人旅に来ていると嘘をついたことがじわじわと司の良心を侵食し始めていた。もし類にそのことについて深く問われれば、自分が王であることを自白してしまいそうなほど、司は類に対して申し訳なさを感じていた。
    しかし、そんな司のことはつゆ知らず、類は部屋の扉をバタンと閉めた後、間髪入れずに司に抱きついてきたのだ。人はあまりにも驚くと、声も出ないらしい。司が反応しないのをいいことに類はすり、と司に頬擦りしながら、まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のように、まるで愛しい恋人との運命の再会を果たしたかのように、それはそれは嬉しそうに話した。

    「あぁ、やっぱり司くんだ。いきなり連れ出してごめんね。でも僕、どうしても君と話したかったんだ」

    「ま、待て!」

    「ん?どうしたんだい?」

    「類は、ここで働いていたのか!?」

    「あー、……まぁ、今はそういうことにしておいてよ」

    「なんだその曖昧な返事は!」

    「フフ、元気だねぇ」

    「……それで、結局お前はどうしてオレを連れ出したんだ?そろそろ向こうに戻らないと、いい加減叱られてしまうんだが……」

    「ふむ、そうか……じゃあ、続きは向こうで話そう」

    「は?向こうで?じゃあこっちに来た意味って、」

    「違うよ、司くん。向こう……海の中でね」

    瞬間、ぎゅう、と音が鳴りそうなほど強く類に抱きしめられる。苦しい。息ができない。そう言おうとしたところで、異変に気がついた。抱きついている腕が、二本じゃない。少なくとも、四本はあるような。

    「……ひっ、!」

    「大丈夫、怖がらないでよ。すぐ離してあげるからね」

    かひゅ、と喉から音が鳴った。ちらりと見えた類の下半身が、完全にタコと化していたのだ。さっきまでは人間の姿をしていた筈なのに、どうして。思えば、海岸で会った時も、決して岩の後ろから動こうとはしなかった。もしかしてあれは、タコであることを司に悟られないように、下半身を隠していたのでは。
    考えることに酸素を使い果たしてしまったのか、司の体はだんだんと力が入らなくなり、抵抗しようともがいていた腕もいつしかだらんと垂れ下がるだけになった。足音一つ立てない類に抱えられて窓辺まで運ばれる。類は優雅な動きで窓を開けると、司に向かって優しく微笑んだ。

    「さぁ行こうか、司くん」

    ぼんやりと霞みがかったような頭では類の言葉の裏に隠されている本当の意味にも気付けず、司は従順にもこくんと小さく頷いた。潮の匂いがする。意識を飛ばす直前に、波が崖にぶつかって弾ける音が、すぐ耳元で聞こえた気がした。

    ***

    あの後すぐ、何かがおかしいと気付いた大臣たちが奥の部屋へ向かったが、室内に取り残されていたのは類が着ていた制服と、大きく開け放たれた窓のみだった。
    店側に紫の髪の男が働いている筈だと訴えたが、そんな男は雇っていないと困ったように言われ、何をそんなに焦っているんだ、とも言われてしまった。ハッと我に返った大臣たちは、必死に誰かを探しているということこそ覚えてはいたものの、果たして誰を探していたのかは誰一人として思い出すことはできなかった。いつも笑顔で、少し声が大きくて、国民を思いやることができて、それで。追えば追うほど、探し求めている“誰か”の影は逃げていく。もう顔も声も、何もかもが思い出せない。
    諦めた大臣たちは、レストランで夕食を済ませてさっさと宿へ帰った。取り残された一人分の荷物。それに書かれた名前を見ても、それが誰なのか彼らが思い出すことは決してなかった。

    ***

    「あ、見て司くん。君の代わりに新しい王様が就いたみたいだよ」

    「王様……?」

    「あれ、それも忘れているのか。……まぁいいや。ほら司くん、そろそろお昼寝の時間だよ」

    「分かった」

    類は手に持っていた新聞をくしゃりと握りつぶしてゴミ箱へ投げ捨てた。新しい王の就任を祝う記事は無事に、つい数十分前に司がこぼしたケチャップを拭いたティッシュたちの仲間入りを果たした。新しい王の顔写真が赤に染まろうとも、そんなことを気にする者はもう誰もこの家には存在しなかった。
    類が司を誘拐したあの日、司は酸欠と大きな精神的ショックで過去の記憶をほとんどなくしてしまっていた。気絶した司を海底にある類の家まで運び、濡れた服を着替えさせ、甲斐甲斐しく世話をした類のことを、司は命の恩人だと捉えたらしい。あれだけ抵抗していたのが嘘のように、司は類の言うことに従うようになった。
    もちろん持って生まれた性格がガラリと変わる訳ではないので最初こそ驚かれはしたものの、海で溺れていたところを助けたという類の嘘に司は完全に騙されて、お礼がしたいから自分にできることがあれば言ってほしいと自ら申し出たのだ。ずっと一人で暮らしていて寂しい思いをしてきたから、寂しさが癒えるまで僕と一緒に暮らしてくれないかい?と語る類に、司はなんて可哀想なやつなんだ!と大きく頷き、今の生活に至る。
    食料や生活に必要な物資は、海底に落ちてきたものを拾い集めたり、類が地上に出て買ってきたりする。人間に擬態するのは類の得意技だ。あの晩、レストランのシェフたちや司の元部下たちに掛けたように、いざとなれば忘却魔法も使えるので、万が一本当の姿を見られても何ら問題はない。

    「類、寝ないのか?」

    「あぁ、今行くよ」

    二人で同じベッドに寝転がり、類に司が体を預ける。そっと抱きしめてやると、司は嬉しそうに微笑むのだから堪らない。例え記憶が無くなろうと、根底にあるのはいつだって“みんなに優しく接する司”なのだ。類は困ったように眉を下げると、司の頭を優しく撫でながら語った。

    「……ねぇ、司くん。僕、しばらく君のことを離してあげられないかも」

    「ん、……夕飯までには、たのむぞ……」

    すぅすぅと寝息が聞こえてくる。夕飯まで、か。それで諦められるような、単純な気持ちじゃないんだよ、司くん。
    ようやく自分の手に堕ちてきた王様を抱きしめて、類は愛らしい同居人の額にそっとキスを落とした。どろどろに蕩けた恋心が、容赦なく司に絡みつく。例え司が死のうとも、例え腐った体から魂が抜け出ようとも、それすらも絶対に逃しはしないよ、と類は意地汚く舌舐めずりをした。
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    まめだぬき

    DONE※派生、トルペの不調、キャラ崩壊注意

    団トルです。不穏にしたかったのですが、団トルトラップに引っかかり見事にいちゃいちゃしだしました。
    派生、トルペの耳が片方聞こえない描写がございます。苦手な方はご注意ください。

    長いことお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。マシュマロでも依頼をいただいていたので、申し訳ございませんがこちらのお話で回答とさせてください。
    団トル子供の頃、高熱で倒れたことがあった。心の底からピアノを楽しめていて、まだ世の中の残酷さを知らない無垢な生き物だった。夜中にもかかわらず両親が必死に駆けずり回り、大金を叩いて医者を呼んでくれたおかげで、トルペは一命を取り留めた。
    しかし、代償は大きかった。ピアノを弾くために必要な聴力を、半分失った。左耳が聞こえなくなったトルペは、呆然とこちらを見つめる両親のありありと絶望を読み取れる顔を見て、泣けなかった。悲しい気持ちもあったし、この先片側では何も聞き取れない一生を、神様を、恨んだ。だが、自分以上に悲しそうな顔をする両親を前にすると、自分にはそんな風に泣く資格は無いと思った。お金を払って医者を呼んでくれたのは彼らであって、自分ではない。それからトルペは泣くのをやめた。
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