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    まめだぬき

    @mamedanuki__hp

    書いてはみたけど支部に投げるのは考えちゃうものを置いておきます。

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    まめだぬき

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    ※キャラ崩壊、特殊設定注意

    マシュマロでいただいた「生理男子の司」というお題を元に書かせていただきました。マロ主さんありがとうございました!

    生々しい部分もあると思うので、苦手な方はご注意ください。

    司が生理男子の話ドロリ、と何か柔らかいものが股から流れ出たのが分かった。司はビクッと肩を揺らし、ぎこちない動きで脚本を近くのベンチに置いた。背中を嫌な汗が伝う。水分補給をしながらガリガリとノートに何かを書き込んでいる類にそっと近寄ると、司は少々引き攣った笑みを浮かべた。

    「すまん。トイレに行ってくるが、もしかすると練習の再開時間に間に合わないかもしれん」

    「うん、分かったよ。ゆっくりで大丈夫だからね」

    優しく微笑んだ類にまたすまん、と呟いて、司は更衣室へと向かった。一応あれも持っておいた方がいいだろう。シンプルなポーチを鞄から取り出した司は、更衣室から一番近い場所にあるトイレに入った。個室の扉に鍵を掛けて、ゆっくりとズボンと下着を下ろしていく。

    「……はぁ……」

    口をついて出たのは掠れたため息だった。べっとりと下着に付着した赤黒い体液が、嫌でも司に自分の身体は普通とは違うということを突きつけてくる。ポーチの中から新しい下着を取り出して履き替え、ナプキンを貼り付ける。脱いだ下着はビニール袋に入れて、またポーチにしまった。家に帰ったらすぐに洗わないといけない。
    どうりで今日は朝から熱っぽかった訳だ、と一人で納得し、司はトイレを出た。

    ***

    中学生の頃、初めて生理がきた瞬間司は「病気か!?」と両親も咲希もいない夕方の家で一人で大騒ぎした。妹がいたこともあり何となく生理の存在は知っていたが、まさか男もなるとは思わなかったし、真っ先に病気の可能性を疑うのは極めて正常だった。心配させまいとその場で両親に連絡こそしなかったものの、翌朝真っ赤に染まったシーツを見た母親がすぐに司を病院に連れていった。結果、子を孕むことはほぼ不可能に等しいが、司の身体の中には子宮が存在することが判明した。生殖機能は無いにも関わらず、生理は訪れるらしい。さらに、あまりにも未発達な司の子宮は定期的に生理がくることが難しく、不定期にしか訪れない、と医者は語った。お腹が痛い、腰が痛い、と毛布にくるまって泣いていた咲希の辛さを、ようやく分かってやれる気がしていた。
    その後司は理不尽に訪れる生理に何とか対応しながら生活してきた。鞄にはいつもナプキンが入っていたし、いつか自分のおかしな特徴がみんなにバレて軽蔑されるのではないか、とヒヤヒヤしながら過ごしていた。幸いにも誰にもバレることはなかったが、油断はできない。いつ生理がくるか分からない分、常に気をつけていないと大変なことになってしまう。
    酷い生理痛や感情の乱れこそ無かったものの、気温が下がれば腹は痛むし普段よりイライラしてしまうのは事実だった。誰にも迷惑をかけないように、と友人から距離を置いていた時期もある。振り回されてばかりだが、この身体で産まれてきてしまった以上うまく付き合っていくほか無かった。

    ***

    司はトイレを出ると、再び練習に戻った。早かったね、と声を掛けてきた類は一転怪訝そうに眉を顰めると、顔色が優れないけれど大丈夫かい?と静かに聞いてきた。司は内心気付かれる可能性に怯えながらも、大丈夫だと笑顔で返した。腹に力を込めれば込めるほど、あの不快な感覚に襲われる。たまったものじゃない。
    薄着で来ていた司は、どんよりと曇った空へ視線をやった。今日は暖かくなると聞いたが、珍しく天気予報が外れたらしい。キリキリと痛み出した腹をそっとさすると、心配そうにこちらを見つめる類に向かってもう一度大丈夫だからな、と言い聞かせて、司は練習に合流した。
    激しいアクションシーンの練習が始まったのは、運が無かったと言うしかない。ワンダーステージの点検の日程が迫っていることから、類が実際のステージで動く様子を見たい、と言ったのはあまりにも自然な流れだった。コンディションが最悪な司は何度もやり直しをくらい、その度に類からあれが違うこれが違うと口を出され、分かったと頷けば頷くほど無茶な要求をされる。普段の司なら難なくやってのけることも、今日は無理だった。腹が痛い。背中を曲げないと立っていられない。身体を伸ばそうものなら内臓を引っ張られるような酷い痛みに襲われ、必死に声を抑える。

    「……今日は、もう駄目かな」

    類の独り言が、容赦なく司を貫いた。頭をトンカチで殴られたような衝撃で、目の前がぐらぐらと揺れる。息が苦しい。ツンと鼻の奥が痛む。じわじわと視界が滲み、顔が熱くなっていくのが分かった。
    痛い、辛い、キツイ、座りたい、横になりたい、類の期待に応えたい、と司の願望がごちゃ混ぜになった瞬間、見ている景色全てが突然灰色になった。気持ちが悪い。何も聞こえない。真っ暗で何も見えない。だんだんと世界が色を取り戻し、視界が回復してくる。目に映ったのは、慌ててこちらに駆け寄ってくる類の姿だった。ワンダーステージの床がすぐ近くにある。倒れたのか、と理解した頃にはもう類に助け起こされていた。上半身を類に抱きしめられて、妙に安心する暖かさに司はふっと息を吐いた。

    「大丈夫かい?」

    切羽詰まった類の声が頭の横から聞こえて、司はうんうんと小さく頷いた。

    「随分身体が冷えているね。指先も冷たい。寧々、えむくんと一緒に毛布を何枚か持ってきてくれるかい?」

    「分かった」

    「うん!あたし、たくさん持ってくる!」

    バタバタと走っていった二人の背中を見届けた類は、司をぎゅっと抱きしめて背中をさすった。

    「無理をさせてしまったみたいだね。気付けなくてごめん。倒れた時にステージの床にあちこちぶつけていたけれど、身体は痛くないかい?」

    「あー、大丈夫だ」

    「……分かった。多少の打撲もあるだろうし、頭を打ったのが心配だから、万が一のことを考えて一度病院に行くことを勧めるよ。……本当に、ごめん」

    「気にするな」

    司は類の背中にそっと手を回した。類が一瞬ビクッと震えたのが分かった。まだ腹が痛む。どうせ迷惑を掛けたことには変わりないし、もう少しわがままを言っても許されるだろう。

    「……類、その、腹をさすってもらうことは、できるだろうか……」

    「もちろん構わないよ」

    類の手が司の腹に触れ、優しく撫でる。リラックスできたことも関係しているのか、さっきまでのような激しい痛みは薄れていった。司は類に寄りかかり、目を閉じてえむと寧々の到着を待った。
    数分後、両手いっぱいに毛布やブランケットを抱えた二人がステージに戻り、司はあれよあれよという間にもこもこに包まれた。寧々が握らせてくれたカイロやえむが救護室から持ってきてくれた湯たんぽの熱が、ほこほこと毛布の中に篭っていく。寒くないか、ぶつけたところは痛くないか、温かい飲み物はいるか、と司の要望を聞いて世話をする女子たちを、類は少し離れた場所で心配そうに眺めていた。

    「類くん、こっち来なくていいの?」

    「……うん」

    「はぁ……ねぇ司、類のこと嫌いになった?」

    「は!?なにを突然……オレが類を嫌いになることなど後にも先にも無いと思うが……」

    「聞いた?司、類のこと嫌いになってないって」

    「類くん!あのね、自分のせいで司くんのこと傷つけちゃったかも!ってドキドキ〜もやもや〜ってなるの、分かるよ。でもでも、類くんはちゃんと司くんのこと助けてくれたでしょ!」

    「顔にごめんなさいって書いてある。いい加減こっち来たら?」

    「……いいのかい?」

    「さっきまでのしっかりした類はどこに行ったんだ……類はより良いショーを作ろうとしてくれただけじゃないか!気にするな」

    類は視線を彷徨わせると、おずおずと近寄ってきた。毛布をステージの床に敷いてさらに分厚い毛布を被せられて横になっている司は、ごめんよ、と差し出された手をそっと握った。何だか、今なら打ち明けられる気がした。打ち明ける、というよりは、ここまでしてくれる仲間に対して何も説明せずにはいられなかった。

    「生理がきたんだ」

    「ほえ?どういうこと?」

    「その、中学生の頃から、なぜか生理がくる体質でな。子宮があるんだ。……子供は、できないらしいが」

    シンと辺りが静まり返った。司は、やっぱり話さない方が良かったかと思い、毛布を頭まで被った。

    「……仲間がこんな気持ち悪い奴で、すまん」

    「気持ち悪い気持ち悪くないは置いといて、じゃあ司が今日倒れたのって、貧血?」

    淡々と語りかけてくる寧々に司は、多分、と短く返事をした。体調管理ができていないと怒られるかもしれない。練習を中断するなと責められるかもしれない。
    しかし、寧々は予想外の言葉を投げてきた。

    「生理痛は?お腹痛かったりしない?」

    今日寒いもんね、とえむが心配そうに呟く。もしかして、受け入れてもらえる?と期待した頃には、全てが遅すぎた。

    「類、わたしの鞄持ってきて。更衣室のロッカーに入ってるから。あ、中入る時はちゃんとドアをノックすること」

    「分かった」

    「えむ、追加の湯たんぽ持って来られる?」

    「あいあいさー!いくつ必要?」

    「とりあえず二個」

    「了解!すぐ持ってくる!」

    あっという間に走っていった二人を見つめながら、司は唖然としていた。寧々は横に残っていた毛布の山からブランケットを引っ張り出すと、小さく畳んで司の方へ持ってきた。

    「……何鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔してんの」

    「いや、もっと驚かれたり、軽蔑されると思ったのだが、」

    「バカじゃないの?変人がさらに変人になったところで、少なくともここにいるメンバーは何とも思わないから。それに、今さら面倒見るなとか言っても意味ないからね。とりあえず横向ける?背中にこれ挟む。……ちょっと楽になるといいけど」

    言われた通りに司が横を向くと、寧々が一瞬寒いかも、と声を掛けてから毛布をめくり司の背中にクッション代わりのブランケットを置いてくれた。確かに、だいぶ楽になった気がする。

    「ありがとう、寧々」

    「別に。この後薬飲んでもらうから。苦いから嫌だって泣いても、意味ないからね」

    「流石にこの歳になって薬が苦いと泣くことはないが……」

    「うるさい。薬飲んだ人は、この後の練習もあったかい格好で見てなきゃ駄目だから。約束破ったら、類がタイキックされるからね」

    「なに!?オレのせいで、類が……」

    「あーあ、可哀想な類。痛くて泣いちゃうかもね」

    「クッ……今日は、練習は見学にする……」

    「その調子、その調子」

    うまく司を丸め込んだ寧々は、小さくため息をついた。下手したらこの変人は、体調の優れない身体に無理をさせてでも練習に参加してしまうのだから、ここにいたのがえむでも類でも今日は休めと言うだろう。
    すまん、類、と呟きながらうんうん唸っている司を見ながら、寧々はキョロキョロと辺りを見回した。こちらへ走ってくる影が二つ見えて、ほっと息をつく。

    「寧々!鞄持ってきた!」

    「寧々ちゃーん!湯たんぽ!ほっかほかだよー!」

    「ありがとう。湯たんぽは、司の腰とお腹を挟むように入れてあげて」

    「分かった!ごめんね司くん、手入れるよー!」

    「類も、鞄ありがとう。確か薬が入ってるはず」

    寧々がゴソゴソと鞄の中を探している間、類はそっと司に近寄った。司の顔の横にしゃがみ込んだ類は、困ったように眉を下げると小声で話し掛けた。

    「身体のこと、話しにくかったと思うけど、……えっと、僕たちに教えてくれて、ありがとう」

    「……引いたか?」

    「多少驚きはしたよ。でも、それ以上の感想は無いかな。それが司くんの特性だと思うし、もっと僕たちに司くんのお手伝いをさせてくれたら嬉しいな、なんて」

    「……ははっ、優しいな」

    「そんなことないよ。みんな君のことが好きだからこうして動くのさ」

    「じゃあ、オレが今から練習に参加したいと言ったらどうする?」

    「あ、それは駄目。タイキック痛いもん」

    「なぬ!?知っていたのか!?」

    「知ってたどころか、君が無理して練習に参加した日は、僕必ず着ぐるみくんからタイキックされてるからね」

    「知らなかったぞ!」

    「言ってないもん。司くんだって見たくないだろう?公演を終えた直後に魔王がタイキック受けてシクシク泣いてる様なんて」

    「魔王……あの時の、バレてたのか……」

    「そりゃあ、君の他に三人もショーの参加者がいればね」

    困ったように肩をすくめた類は、司の水筒と薬を持って走ってくる寧々を確認して立ち上がった。類と入れ替わりでやってきた寧々は、司の目の前に薬をパッケージごと置いた。

    「これ、見たことくらいはあるでしょ」

    「ん?あぁ、そういえば咲希も飲んでいた気がするな」

    「知ってるなら良かった。とりあえず二錠ね。飲み物は飲めそう?」

    「問題ない。だが、痛みもかなり和らいできたし、」

    「この後また痛くなったらどうするつもり?もう一回倒れられるのはご免なんだけど」

    むっとした顔の寧々に薬を渡され、司はしぶしぶ受け取った。

    「とにかく、身体をあっためること。薬が効いて痛くなくなったからといって練習に参加しようとしたら、どうなるか分かるでしょ?」

    寧々が、ん、と言いながら親指で後ろにいる類を指差した。情けない顔で立ち尽くす類を見て、司は寧々の言葉に従うしかなかった。

    「……分かった。今日はもう、見学にする」

    「ならよし。さっさと薬飲んで、見学するなら見学して、帰るなら帰って」

    「流石にまだ帰らんぞ!」

    「司くーん!無理しちゃダメだよー!類くんが可哀想だからねー!」

    「えむまで知っているのか!?」

    「分かった?いわば類は人質。あんたが軽率な行動をとれば苦しむのは類なんだからね」

    「司くん……よろしく頼むよ……」

    得意の泣き真似すらもできないほど怯えきった類を見て、司はなんだか不憫だなと苦笑した。それでも、類を守ためと考えるといくらか休むことへの後ろめたさが薄れる。

    「あ、ちなみに前回のタイキックの時は、僕蹴られた後三十分椅子に座れなかったからね」

    「そんなにヤバいのか!?」

    「あの時の類くん、死んじゃいそうで怖かったな……」

    えむと類が切なげな視線を司に向けた。もしここでそれでも練習に参加すると言ったら、逆にそういう性癖を持っていると疑われてもおかしくないだろう。

    「そういう、ことなら……今日は、帰らせてもらうぞ……」

    「それがいいと思うよ」

    「ただ、キリのいいところまでは見学するからな!」

    「どうせ駄目って言っても無駄なんでしょ?体調悪くなったら、我慢して倒れる前にすぐわたしたちに言うこと。いい?」

    「もちろんだ!」

    「……まぁ、イマイチ信用できないけど……とりあえず無理だけはしないで」

    その後司は毛布にくるまったままベンチに腰掛け、練習風景を眺めていた。客席から見ていて初めて気付くこともあるし、隣に類がいるのが嬉しかった。
    ポカポカして眠くなった司は類の肩を借りて少しだけ眠り、目が覚めた時にはなぜか膝枕に変わっていたことに仰天しながら、気分がマシなうちに帰れと言われフェニックスワンダーランドを出た。寒そうだからと類の上着を無理やり着せられ、ボタンを一番上まで閉められたから、そう簡単に熱が逃げなくて暖かい。ぬくぬくしながら家に帰りつき、おかえりと出迎えてくれた咲希に「お兄ちゃんからるいさんの匂いがする〜!」と笑顔で言われたことで初めて顔を真っ赤にし、慌てて自室へと逃げ込んだのだった。
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    まめだぬき

    DONE※派生、トルペの不調、キャラ崩壊注意

    団トルです。不穏にしたかったのですが、団トルトラップに引っかかり見事にいちゃいちゃしだしました。
    派生、トルペの耳が片方聞こえない描写がございます。苦手な方はご注意ください。

    長いことお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。マシュマロでも依頼をいただいていたので、申し訳ございませんがこちらのお話で回答とさせてください。
    団トル子供の頃、高熱で倒れたことがあった。心の底からピアノを楽しめていて、まだ世の中の残酷さを知らない無垢な生き物だった。夜中にもかかわらず両親が必死に駆けずり回り、大金を叩いて医者を呼んでくれたおかげで、トルペは一命を取り留めた。
    しかし、代償は大きかった。ピアノを弾くために必要な聴力を、半分失った。左耳が聞こえなくなったトルペは、呆然とこちらを見つめる両親のありありと絶望を読み取れる顔を見て、泣けなかった。悲しい気持ちもあったし、この先片側では何も聞き取れない一生を、神様を、恨んだ。だが、自分以上に悲しそうな顔をする両親を前にすると、自分にはそんな風に泣く資格は無いと思った。お金を払って医者を呼んでくれたのは彼らであって、自分ではない。それからトルペは泣くのをやめた。
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