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    まめだぬき

    @mamedanuki__hp

    書いてはみたけど支部に投げるのは考えちゃうものを置いておきます。

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    まめだぬき

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    ※年齢操作、体調不良
    🤡司と司の話です。
    ショタ司と🤡司の出会い的な内容。ショタ司の発熱、嘔吐など含まれます。ご注意ください。作品内で🤡司のことを「クラウン」と呼んでます。

    書いたはいいものの我慢できずにこの部分を先に出したんで、後ほど続き書きます。

    🤡司と司の話一体いつからそうだったのか、もう思い出せない。彼がいつ、人間の姿を得たのか。彼がなぜ、両親や咲希には見えないのか。
    考えたって分かるわけもないので、幼い司は差し伸べられた彼の手を取るしかなかった。

    ***

    その日は朝から体が重かった。目もぼんやりとしか開かず、口を開けばげほげほと咳が出るような、所謂“すごく体調の悪い日”だった。頭が痛い。司はごろんと寝返りをうつと、今日退院予定の妹の顔を思い浮かべた。この間四歳になったばかりの妹は、遊ぶことが大好きなのに生まれ持ったもののせいでそれを制限されている。入院と退院を繰り返して、辛い治療も薬も我慢して耐えて、ようやく今日帰って来られるのだ。

    「…………いえない」

    そんなハレの日に「体調が悪い」と申告すればどうなるだろうか。咲希のおかえり会は確実に中止になるだろうし、両親のどちらかは咲希をほったらかして自分を医者に診せに行くことになる。そんなこと、今日を誰よりも楽しみにしているであろう咲希の気持ちを踏み躙るようなこと、絶対にできない。

    「くらうん……?」

    「ん?なんだ?」

    窓の外をぼんやりと眺めていた彼、クラウンはいつもと同じニコニコ笑いのまま司の方を振り返った。

    「その……さきが、もうすぐかえってくるから…………だから、いつもみたいにしてくれ」

    「……本当に良いのか?」

    「うん」

    布団にくるまりながら小さく頷く。

    「後で今よりも辛くなるぞ」

    「だいじょうぶ」

    ピエロ衣装に身を包んだ青年、やや大人びてはいるが司とそっくりな顔で頬には涙の模様のフェイスペイントがある彼、クラウンは司に近寄るとそっとその小さな体を包み込むように抱きしめた。
    瞬間、あれだけ司を苦しめていた体調不良はどこへやら、あっという間にいつも通りの元気を取り戻してしまった。司はベッドから飛び起きると、苦虫を噛み潰したような顔で見つめてくるクラウンに抱きついた。

    「ありがとう!これでさきも、とうさんもかあさんも、みんなあんしんできる!」

    「……いつも言っているが、オレが操れるのは最初の辛い部分だけだ。その後、」

    「もうおぼえた!『はんどうででるしょうじょうは、あやつれない』だろ?」

    「はぁ…………」

    一言一句覚えるまでこき使うなら親にくらい自分のことちゃんと話せるようにしろよ、という文句は咄嗟に飲み込んだ。今このガキにそれを言ったところで、きっと改善はしないだろうと分かっていたからだ。

    元々ただのぬいぐるみだったクラウンは、在庫処分のワゴンの中から奇跡的に司に拾われた。司がもっと小さかった頃、それこそぬいぐるみとほとんど同じような頭身だった司は、父に抱っこされながらおもちゃ屋さんに入ってきた。咲希の誕生日プレゼントを買うために来た二人は、入り口に置かれているセール品のワゴンなど見向きもせずに女の子向けのコーナーへと消えていった。彼らはしばらく戻ってこなかった。
    クラウンはなんとも思っていなかった。別にこのまま廃棄されても構わないし、乱暴な子どもの家に買われて四肢をビリビリに破かれるなんてこっちから願い下げだ。壊されるぐらいなら捨てられる方がマシ、と考えていたクラウンは、ふわりと体が浮く浮遊感に目を回した。

    「司、本当にこの子が良いのか?」

    「うん!」

    さっきまで抱っこされていたはずの子どもは、どうやら父親の手を引っ張ってこのワゴンまで歩いてきたらしい。

    「それじゃあこの可愛い子も、一緒に帰ろうか!」

    「うんっ!そぇ、もつ」

    必死に手を伸ばす司に渡されたクラウンは、オレは可愛いじゃなくてカッコいいだっつーの、と内心ムカついていた。せっかく連れて帰ってもらえるのに、こんなわんぱくそうなガキと遊ぶことになるなんて最悪だ。下手したら指一本残らないかもしれない。

    「落とさないようにレジまでちゃんと抱っこするんだぞ?」

    「うん」

    高い場所から見ていた世界がぐんぐん下がっていき、ぎゅっと抱きしめられた。ぽんぽこりんのお腹が柔らかい。幼児特有の匂いに包まれながら顔を見上げたクラウンは、司の慈愛に溢れた瞳を見て(あぁ、コイツは大丈夫だ)と確信した。

    「ぬいぐぅみさん、あっこいいね」

    ふん、分かってんじゃねーか。クラウンは得意げに笑った。そっと語りかけてきたこの子どもは慎重にレジへと歩いた。まるで恭しくエスコートされている気分になって、クラウンは少しだけ恥ずかしかった。
    その後家に帰ると、司によく似た妹が母親に抱っこされながら出迎えてくれた。今日が誕生日らしい彼女はにこにこと笑いながら父親にも手を伸ばして抱っこをせがんだ。そのまま家族四人はリビングに向かい、司と父親は手洗いうがいを済ませてから席に着いた。
    誕生日パーティーは楽しそうだった。ラッピングバッグに入れられたクラウンはその景色を見ることができなかったが、笑い合う声も幸せそうな雰囲気も全部伝わってきた。あたたかい家だと思った。
    しばらくわいわい喋っていたと思ったら、クラウンのすぐ隣からガサリと袋が擦れる音が聞こえて、そのすぐ後にクラウンの袋も持ち上げられた。いよいよプレゼントが渡される時間だとドキドキしながら順番を待った。
    先に開けられたのはクラウンではなかった。ガサガサと袋を開ける音と嬉しそうな歓声が少し遠くから聞こえた。幼児が必死にありがとうと伝える声が聞こえてきて、次は自分が司に渡される瞬間だと誇らしくなった。
    ふわりと袋が浮きどこかに起き直されると、耳障りな音を立てながら包装が解かれクラウンの顔を照明が照らした。眩しさに目が眩む。目の前にいたのは司ではなく、司より一回り小さい少女だった。

    「かぁいい〜!!パパ、さちの!?」

    「それは咲希と司で遊ぶんだぞ」

    「はぁーい!」

    元気よく返事をした少女はぬいぐるみを持ち上げてぎゅっと抱きしめた。

    「司も、咲希と仲良くな」

    「……うん!」

    あ、とクラウンは声を漏らしそうになった。だってあの少年、司の悲しそうな顔といったら!ちょっと異常な妹ほどの想いなのだろうか。仲良くしろと言われて頷いた時の、諦めて何か大切なものを手放したような笑顔も、ぬいぐるみは二人の物だと告げられた時の、絶望した顔も。
    お前はオレと遊ぶんだぞ、分かったか。にこにこと笑みを浮かべる司を、クラウンは咲希の腕の中からジッと睨みつけていた。

    もはやクラウン本人でさえも、いつから司と話せるようになっていたのか覚えていなかった。けれど、毎日毎日ショーの練習に付き合ううちにいつの間にか司とだけ会話ができるようになっていた。しかも、見た目まで変わっていたのだ。幼い司を軽々と抱っこできるくらいには背丈もあり、何度も司を抱き上げた。だんだん重くなる体重が嬉しかった。
    初めて自分の力を使った日のことは、よく覚えている。あの日司は家で一人留守番をしていた。両親は朝から家を空けていて、クラウンは絵を描いている司の隣でそれを見守っていた。

    「いつもより雑だな」

    「……うん」

    「色塗りもっと丁寧にやれよ。せっかく絵うまいのにもったいないだろ」

    「…………」

    「司……?」

    返事がないことが心配になり横に座る彼の顔を覗き込んだ。司の顔は真っ青で、お腹の辺りをぎゅっと両手で押さえつけながら必死に何かをこくこくと飲み込んでいた。
    これはヤバいやつだ、と直感で感じとったクラウンは、慌てて司を抱き上げた。

    「トイレまで我慢できるか?」

    「……ん、」

    司はふるふると首を横に振る。びくんと背中が脈打って、司はんぐ、と声を漏らしながら背中を丸めた。まだ我慢しようとしているらしい。さっさと吐けば楽になれるものを。
    その時クラウンは、あることに気が付いた。キラキラと輝く透明の糸が、自身の指先から垂れている。今までこんなものは見たことがない。興味本位で人差し指をスッと動かした。

    「あ、れ?」

    「司……?」

    司は顔を上げると不思議そうにパクパクと口を開けたり閉じたりした。まさかと思い、クラウンは自身の小指を動かす。するとさっきまでほとんど土のようだった司の顔色が、普段の健康的な血色を取り戻したのだ。

    「クラウン、おれ、なおった!」

    無理やり腕の中から降りた司は、トイレに行くこともせず再び席につくと、お絵かきを再開した。鼻歌まで歌っているようで、よほど具合は良いと見える。先程まであんなに苦しそうにしていたのに突然良くなってしまって、これはとても演技とは思えない。
    クラウンはハッと顔を上げると慌てて両手を見た。もう糸は見えなくなっていた。

    「……なんだったんだ、あれ」

    静かに呟いたクラウンの声は溶けて消えていき、誰にも拾われることはなかった。
    その翌日、司は朝からげえげえと吐き続け酷い脱水症状を起こし、意識がおぼつかなくなって救急車で運ばれていった。まるで昨日の出来事をより悪い方向へと傾けたようだった。
    その後何度も司の体調を操るうちに、クラウンは気付いてしまった。司の体調不良は全て操ることができ楽にしてやれるが、外傷を消すことはできない。そして、操った症状は翌日により酷い状態で現れ、こちらは防ぎようがない。操ることもできないので、完全に司一人で耐えさせることになる。それが嫌だったが、何を考えているのか司は体調を崩すたびにクラウンに「いつものやつをやってくれ」と頼んでくるので、断れなかった。

    そして今。司はベッドを抜け出し大急ぎで着替えをしていた。もうすぐ咲希が帰ってくるのにいつまでも寝ていられん!とはしゃいでいて、あの元気を自分が作り出してしまったことに罪悪感を抱いた。
    折り紙で部屋の飾り付けをして、咲希を迎えるためのショーの準備もして、お気に入りの服も着て、ついでに母親が朝ご飯として用意してくれたサンドイッチも食べて。準備は万端だった。あとは主役の登場を待つだけだ。

    「たのしみだな!クラウン!」

    「ふん、せいぜいオレが操ってやってる分くらいはちゃんとしたパフォーマンスをしてもらうからな」

    「あぁ!まかせておけ!」

    そう意気込んだ司は、何度も窓の外を確認してはまだかな、と嬉しそうに呟いていた。
    幾度もショーのリハーサルを重ねて時間を潰して、日が傾き始めた頃、固定電話の音がリビングに鳴り響いた。電話をかけてくる相手によって着信音を変えている天馬家で育った司は、今流れている曲を聴いて即座に誰が電話をかけてきているのか判断したらしい。泣きそうな、でもどこか安心したような顔ですぐに受話器を手に取った。

    「もしもし、かあさん……?」

    その後の司は見ていられなかった。ほんのりと希望を抱いた表情はすぐに曇り、最後はほぼ無表情に近かった。固定電話を元のスタンドに戻して、トボトボと帰ってきた司はクラウンにそっと抱きついた。

    「……かあさんたちとさき、かえってこない」

    「え?」

    「さきがぐあい、わるくなって……あした、たいいんするって」

    咲希の具合が悪くなって、様子見のため入院がもう一日延びてしまった。母さんも父さんも今日は病院に泊まるから、お夕飯は冷凍庫の中のパスタを食べてね。概ねこんなことを電話越しに喋っていた。
    明日。それはつまり、今日の誤魔化しは無駄で反動が出る日である明日が司にとっての“大事な日”にすり替わってしまったということだった。クラウンは司を抱きしめ返すしかなかった。腕の中で震えながら泣く小さな子どもが、あまりにも哀れで仕方なかった。
    翌日、司は朝から体調を崩し、両親たちが帰ってくる前になけなしの体力でクローゼットの中に隠れた。小さな司は上から何枚もコートを被ることでうまいこと見えなくなってしまい、帰ってきた両親たちも簡単には見つけることができなかった。
    一時間ほど捜索した彼らがようやく司を見つけた時、司は意識を失っていた。発熱、頭痛、嘔吐、倦怠感、眩暈、痰の絡んだ咳。風邪が完全に悪化しきったようだった。当然咲希の帰りを全員で祝うことはできなかった。司は搬送先の病院で数日間の入院が決まり、快復した司が酸素マスク越しに放った一言目は「咲希のパーティーをめちゃくちゃにして、ごめんなさい」だった。
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    まめだぬき

    DONE※派生、トルペの不調、キャラ崩壊注意

    団トルです。不穏にしたかったのですが、団トルトラップに引っかかり見事にいちゃいちゃしだしました。
    派生、トルペの耳が片方聞こえない描写がございます。苦手な方はご注意ください。

    長いことお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。マシュマロでも依頼をいただいていたので、申し訳ございませんがこちらのお話で回答とさせてください。
    団トル子供の頃、高熱で倒れたことがあった。心の底からピアノを楽しめていて、まだ世の中の残酷さを知らない無垢な生き物だった。夜中にもかかわらず両親が必死に駆けずり回り、大金を叩いて医者を呼んでくれたおかげで、トルペは一命を取り留めた。
    しかし、代償は大きかった。ピアノを弾くために必要な聴力を、半分失った。左耳が聞こえなくなったトルペは、呆然とこちらを見つめる両親のありありと絶望を読み取れる顔を見て、泣けなかった。悲しい気持ちもあったし、この先片側では何も聞き取れない一生を、神様を、恨んだ。だが、自分以上に悲しそうな顔をする両親を前にすると、自分にはそんな風に泣く資格は無いと思った。お金を払って医者を呼んでくれたのは彼らであって、自分ではない。それからトルペは泣くのをやめた。
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