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    hoshinami629

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    hoshinami629

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    ロゼマさんがフェルさんのマントに本気で刺繍するために、色んな人と関わりながら作業を進める話が書きたいな〜みたいな感じの話。レティーツィア視点、ユストクス視点、ローゼマイン視点、フェルディナンド視点まで書けたら完成ですが完成する気がしないのでとりあえずここに上げておく。

    #本好きの下剋上
    bookLoversLowdown
    #フェルマイ
    fermai

    マントに刺繍しよう(仮) アレキサンドリアで暮らしていると、なかなか秋が深まらないと感じる。暑くもなく寒くもない、ある意味では過ごしやすい日がいつまでも続く。一応、冬には雪も降るらしいけど、積もったところは見たことがないと近所の人達から聞いた。冬支度もエーレンフェストより、ずっと簡単に済むらしい。何なら、天気さえ良ければ真冬でも市が立つと聞いた。そんな風に初めての土地の気候について話しながら、私と母さんは、繕い物の準備をしていた。
    「こちらだと冬の支度が楽で良いわね」
     母さんの言葉に頷きながらテーブルを拭き、布地を広げたところで、ガチャ、というあの音が聞こえた。続いて、隠しきれない弾んだ足音。
    「あ、マインだ」
     私が言えば、母さんも笑って頷く。ちょうど貰い物のピルネが残っていたので、それを皿に盛る。夏以来の習慣で作り置いていたお茶をカップに注いだあたりで、背後から、ただいま! の声が聞こえた。
    「お帰り、マイン」
     アレキサンドリアの領主になって、お仕事が大変なのではと思っていたけれど、マインが優秀だからなのか、側で仕えているお貴族様達が敏腕だからなのか、はたまたフェルディナンド様が甘やかすからなのか、マインは季節に二度ほどは顔を見せに来る。
     ピルネとお茶を出しながら話を聞けば、どうやら収穫祭に関係する仕事が一段落したので、こちらに足を運んだんだそうだ。
    「体調は平気? 夏は熱を出したって言っていたけど、秋は大丈夫だったの?」
     母さんがそう声をかければ、マインは平気だよ、と言ってピルネを摘む。
    「こっちの夏が暑くて、ちょっとバテちゃっただけ。涼しくなってからは平気だし、フェルディナンド様も側仕えのみんなも、凄く気にかけてくれるもの」
    「周りの人に恵まれているようで良かった。でも、本当に気をつけてね。夏だけじゃなくて、こちらの秋も冬も、初めてなんだから」
     言って母さんは、テーブルに置かれた裁縫道具と布地を見る。準備を整えてはいたけれど、せっかくマインが来たのだから、片付けて話がしたいよね。
     お裁縫はまた今度かなあ、と思って母さんとちらっと顔を見合わせていると、茶を一口傾けたマインは私達の手仕事を見て、小さく首を傾けた。
    「そっか、母さんもトゥーリも、お裁縫上手だよね……」
    「どうしたの、突然」
     私が裁縫道具をしまおうとすると、少し見せて、と妹はねだってくる。母さんを見れば、良いんじゃない、と言って自分も取り掛かるつもりだった父さんの晴れ着を広げた。
    「これ、仕事のじゃないからマインが着るようなものじゃないよ?」
     これから縫うのは仕事で依頼された服ではない。アレキサンドリアの気候に合わせた、カミルの服だ。最近ぐっと背が伸びるせいで、裾を出すだけでは追いつかなくなって来た。
    「カミルの服だもん、見てても面白いことなんて……」
     そう言っても、マインはいいのいいの、と更に強く言って、私と母さんの仕事ぶりを観察する。何だかやりにくいなあ、と思いながら裾の始末をしていると、ピルネをいくつかつまんだあたりで、マインがおずおずと話しかけてきた。
    「……ねえトゥーリ、母さん、お裁縫について、訊きたいことがあって……」
    「あれ、マインも縫い物するの? てっきり、そういうのは側仕えの人に任せているものだと思ってたけど」
    「殆どのものはそうなんだけど……」
     マインは何やら難しい顔をしている。悩んでいる……というほどではなさそうだけど、何処となく浮かない顔だ。
    「何かあったの? マイン」
     母さんが刺繍糸の撚りを取りながら問えば、マインはしばらく言いあぐねた後、あのね、とおずおず口を開いた。
    「……刺繍ってどうやったら上手くなるのかなあ」
     マインの視線は、母さんの手元に向けられている。私もそちらを見れば、どうやら母さんは、父さんの晴れ着を修繕しているみたいだ。随分前に仕立てたこともあって、刺繍がほつれてきていると以前言っていた。私が職場の余り物の良い糸を持ち帰った時から、これに使うと決めていたみたいだ。
     ――母さん、こういうやりくり上手だもんね。
     マインの方に視線を遣れば、母さんが月桂樹の刺繍を丁寧に整えているのを見ながら、やはりまた難しそうな顔をしている。
    「マインも刺繍を刺すようになったの? 嬉しいわね、娘とお裁縫の話が出来るなんて」
     母さんはそう言いながら何針か縫う。マインは、うん、と言いながらも険しい表情を崩さない。
    「貴族だとね、服を仕立てたりとか、お直ししたりとか、そういうのは側仕えや専属に任せるんだけど、でも、刺繍だけは別なの。妻は夫のマントに刺繍をするんだよ。私、フェルディナンド様のマントに刺繍をしますねって約束したの。でも良く考えたら私、そんな大きい布地に刺繍したことがないんだよね……」
     私はダームエル様が纏っていた黄土色のマントを思い出す。身長に近い丈の、長くたっぷりとした一枚布だ。身に着ける人の背丈に合わせる訳だから、あの上背のあるフェルディナンド様に合わせた大きさの布地になる訳だよね。
     ――うん、あれに刺繍をするのは大変だろうなあ。
     お貴族様なら目下の者に任せるのかと思いきや、万事がそうでもないらしい。
    「確かに、マントに刺繍は大変そう。マインはどんな大きさのものなら刺繍したことがあるの?」
     妹はその言葉に、身につけていたポシェットからハンカチを取り出して見せる。ふわっと広げると、そこには草花の図案が、薄緑と銀色の糸で細やかに刺繍されていた。
    「あら、綺麗。見てトゥーリ」
     母さんがマインのハンカチを指差して嬉しそうな声を上げる。私も針を止めてそちらを見る。二色の糸を丁寧に使い分けていて、とても綺麗だ。運針のがたつきも少ないし、布も引き攣れていない。やや大判のハンカチ全面に刺繍しているのだから、刺し終えるまでそれなりに時間が掛かった筈だ。
    「……マイン、そんな悩むことないんじゃない? 凄く上手だよ?」
     ハンカチを見せるマインにそう声を掛けてみたが、難しい表情は変わらない。
    「うーん……。正直周りが上手過ぎて、こんなのじゃ全然ダメな気がしちゃうんだよね……」
     えっ、これで全然ダメって。私と母さんは思わず顔を見合わせる。マインは肩を竦めて、貴族の女性の刺繍の嗜みについて解説してくれた。曰く、正確に魔法が発動するような魔法陣を縫えるのが貴族に求められる刺繍の上手さとのこと。
     ――魔法陣が何なのかよく分からないけど、確かに正確に縫えないと駄目そうな感じはする……。
    「魔法陣って、ちょっと形がいびつなだけで魔法が発動しなかったりするから……。凄く正確さが求められるの。このハンカチは練習に縫ったんだけど、こことか、こっちとか、線がよろけてるってリーゼレータに言われてがっかりしちゃったんだ」
     リーゼレータ様というのはマインの側仕えで、身の回りのお世話をしてくれる人だ。一度、エーレンフェストのお屋敷に避難した際にお会いしたことがある。優しげな人だったけど、マインの刺繍に対する評価は厳しいみたいだ。
    「確かに、マインが指差したところはちょっと運針が辿々しいけど……。全体として見ればとっても綺麗に出来てるわよ」
     母さんはそう言って慰める。マインはありがとう、と言って溜息をついた。
    「リーゼレータに言われたんだけどね、私、早く完成させようって気が急いちゃうせいで、雑になっちゃうみたいなの。刺繍ってなかなか完成しないから、イライラしちゃって先を急いじゃうっていうか、そういう気持ちになることは確かにあって……」
     ――うわあ、何か凄くマインらしい悩み。
     私はそんな感想を抱きながら、マインのハンカチを畳み直す。母さんもマインの言葉に苦笑している。
    「先へ先へと考えるのはマインの良いところでもあるけど、確かに刺繍をしながら先のことを考えちゃうと、焦って運針が雑になりかねないわね」
    「やっぱりそうなのかあ。ね、どうやったら焦らずに済むの?」
     マインはハンカチをしまいながらこちらに問いかけて来る。もう一度、母さんと私は顔を見合わせた。
     ――マインじゃないから、刺繍していて気が急く経験がないけどなあ。
     と思いながらも、私は少し考えを巡らせてみる。私がお裁縫をするのは、職場のギルベルタ商会か、実家。職場ではいつも別のお針子達とおしゃべりをしながら針を動かすし、家なら母さんと一緒に手を動かす。休みの日だと、ルッツや父さん、カミルと話しながら作業することも多い。
     ――マインって、もしかして一人でもくもくと縫ってるんじゃないかな。
     だって、今は領主様でしょ? その前だって領主の養女だ。リーゼレータ様みたいにお側に控えている人は、マインが見ていないところで刺繍をするのであって、マインと一緒に作業する訳じゃない気がする。
    「マインが刺繍する時って、いつも一人なの?」
     そう質問すると、マインは意外そうな顔をして首を傾ける。
    「エーレンフェストにいた頃は、シャルロッテと一緒に練習したこともあったけど……。でもそうだね、一人ってことになるのかな。側仕えは周りにいるけど、手を動かすのは私一人だよ」
     ――やっぱりそっか。
     一人で黙って針仕事をするのは、結構疲れやすいものだ。近くにいる人としゃべりながら作業した方が、適度に気を散らせる。逆に、そうでもしないと飽きてしまったり、集中し過ぎて目や頭が疲れたりしてしまう。うんと気を遣って縫う部分は別だけど、大抵の場合はおしゃべりをしながら手を動かす方が、作業が長続きするように思う。
    「私は仕事でも家でも、誰かとおしゃべりしながら縫い物をするんだよね。マインも、誰かとおしゃべりしながら縫い物をすると良いんじゃない? 適度に気が散るから、先へ先へと考えずに縫えると思うし」
     マインは不思議そうな表情でこちらを見る。考えたこともなかった、とその目が語っていた。
    「トゥーリの言う通りかもしれないわね。貴族のお家だって、母親や姉妹と一緒に縫い物をするんじゃない? 私とトゥーリも、お裁縫をする時は今みたいに一緒に手を動かすもの。一人でやると、つまらないし飽きやすいのよ、お裁縫って」
    「成る程、一理あるかも……」
     マインは言いながら考えを巡らせている。誰となら一緒にお裁縫が出来るか考えているみたいだった。
    「ねえ、それっておしゃべり相手もお裁縫をしていた方が良いのかな?」
     どうだろう。職場では全員お針子だから縫い物をしている。家だと、母さんは料理をして私は裁縫ってこともある。でも確かに、そういう時は二人とも気長な作業をしている場合が多いかもしれないなあ。
    「お裁縫じゃなくても良いかもしれないけど、片方がお裁縫してて、もう片方はせかせか立ち働いていたりすると、あんまり上手くはいかないかもね。何となく話しかけにくくなっちゃうじゃない?」
    「あ、それは確かに……」
    「母さんが大きな肉を煮込んでて、私がお裁縫、ってことならあるからさ。一緒にいる人も、じっくりやらなきゃいけないことがあれば良いんじゃない?」
    「裁縫じゃなくても良いけど、似たような作業をする人といた方が良いってことだよね。ふむふむ……」
    「領主様だとそういうことに苦労するんだねえ」
     思わずそう言えば、マインは仕方がない、とでもいうような笑いを見せる。そこに無理をしていそうな気負いがなくて、私は安心した。
    「……うん、裁縫仲間を見つけてみるよ。ありがと、母さん、トゥーリ」



    「あの、リーゼレータ」
     ローゼマイン様は湯上がりの果実水を召し上がりながら、わたくしをお呼びになりました。夕食や入浴を終え、いつもなら就寝までの楽しみに、本を手に取る頃合いでしたが、今日は長椅子の脇のテーブルに本は置かれていません。
    「どうなさいましたか、ローゼマイン様」
     少々不思議に思いながら問えば、ローゼマイン様は、刺繍のことなのです、とおずおずとしたご様子で切り出されました。
    「この前、リーゼレータが言っていたでしょう? 私は焦って先へ先へと考えるせいで、縫い目が乱れるのかもしれない、と……」
    「気になさっていたのですね、申し訳ございません」
     難しい面持ちでおっしゃったので、慌てて謝りますと、違うのです! とローゼマイン様は首を何度も横に振っておられます。
     ――美しくご成長なさっても、そんな素振りはお変わりなく、愛らしいままですね。
     わたくしは、長椅子の隣に座っているシュミルのぬいぐるみにちらりと目を向けます。今やアレキサンドリアの紋章にもなったシュミルですが、ローゼマイン様ご自身もまた、シュミルの様に愛らしく見えることがあるのです。わたくしの気のせいではないでしょう。というのも、旧アーレンスバッハの貴族で最近側仕えとして働く数名が、似たような言葉を交わしているのを見かけたからです。
     そんなことを考えておりますと、ローゼマイン様は頬を染めながら、そうではなくて、と言葉を続けます。
     ――シュミルではなく、刺繍のお話でしたね。
    「わたくし、どうすれば刺繍を刺す際に焦らないか、周りに訊いてみたのです。そうしたら、刺繍をする人同士で集まっておしゃべりをしながら刺せば、適度に気が散るから焦らないのではないか、と言われて……」
     きっと、執務の休憩時間に女性の文官へ尋ねてみたのでしょう。アウブからその様な初々しい質問を頂いたら、文官も思わず微笑んでしまったでしょうね。
    「わたくしは神殿で育ったこともあり、例えばお母様と一緒に刺繍をするような機会がなかったのですが、リーゼレータはどうですか? アンゲリカやお母様と、刺繍をしながらおしゃべりをすることはありましたか?」
     そのお言葉に、成る程と思いました。確かにわたくしは幼い頃から、お母様やお姉様と、ああでもないこうでもない、と言いながら裁縫の時間を共にしていました。始めたばかりの頃はお姉様から教えて頂いたこともありましたし、二人でお母様のお手伝いをしたこともありました。その間に交わされる何ということもないおしゃべりが、小さい頃はとても楽しみだったと記憶しています。
     ――ローゼマイン様は、そうした思い出をお持ちでないのですね。
     母親や姉妹との他愛のないおしゃべりの記憶は、確かにわたくしを裁縫好きにするのに一役買ってくれています。多くの貴族の女性も、同じではないでしょうか。そうした経験をお持ちでないローゼマイン様にとって、刺繍やお裁縫は地理や歴史、あるいは調合のように、黙々と学んで身につけねばならない技術の内の一つなのでしょう。
    「……そうですね。小さい頃は、母や姉とおしゃべりをしながら針の動かし方を覚えたものでした。おしゃべりの楽しさに釣られて、お裁縫を頑張るようになった気もいたします」
     ローゼマイン様は、そうですか、と言って小さく微笑むと、果実水の杯を傾けます。
    「……アウブなんて立場になってしまうと、やはり誰かとおしゃべりしながらお裁縫をするのは、難しいでしょうか?」
     問われて、私は思考を巡らせました。ローゼマイン様の背景を知っているだけに、わたくしで良ければ、と思わず言いたくなります。が、側仕えのわたくしがお裁縫をご一緒するのは、主の私室で座って作業をするということで、やはり失礼に当たります。他の側仕えにも示しがつきません。
     ――では、どなたなら良いかしら。
     せめて上級貴族ならば、と無意識にブリュンヒルデを思い出しながら考えましたが、現在ローゼマイン様と打ち解けている上級貴族の側仕えはおりません。文官ならばクラリッサがいますが、こうした用向きで文官を煩わせるのは躊躇われます。エーレンフェストにいた頃でしたら、真っ先にシャルロッテ様とご一緒したらとご提案するのですが、ここはアレキサンドリアです。
    「……レティーツィア様をお誘いになるのはいかがですか?」
     いずれアウブの養女となるご予定のレティーツィア様ならば問題ありません。年齢から言っても、ちょうどお裁縫の練習をしていらっしゃるのではないでしょうか。お誘いの内容としても程良く感じます。
    「成る程、レティーツィアとは神殿で一緒に食事を摂ることもありますから、その時に訊いてみましょうか」
     レティーツィア様は現在、ランツェナーヴェの者の手によって親を失くした貴族の孤児達と共に、神殿に入っておられます。名目上は孤児としてという扱いですが、アウブの養女になることが決まっていますから、実際はエーレンフェストでのメルヒオール様同様、ローゼマイン様やフェルディナンド様の手を借りつつ神殿の取り纏めをしておられます。
     ローゼマイン様の頷く様子にほっとしていますと、飲み終えた杯をテーブルに置きながら、ほんの少し複雑そうな表情をしているのが見えました。
    「――いかがなさいましたか?」
     思わずそうお声かけしますと、ローゼマイン様は小さく首を振って、次に縫うのは何にしましょう、と微笑みました。
     ――何だか、まだお悩みがありそうです。
     けれど、どうやら今わたくしにお話し頂けるものではないようです。そう悟ったので、わたくしは次に練習する刺繍のことや、マントに取り掛かる場合に必要な段取りについてお話しします。
    「そろそろ、魔法陣を刺繍する練習をしてみても良いかしら?」
    「そうですね、基本的な図案は縫えるようになりましたし、魔法陣に移りましょう」
     幾つかの基本的な魔法陣を候補に挙げます。ローゼマイン様は、その中からシュツェーリアの魔法陣をお選びになりました。災いから身を守る意味があることから、お守りとして最も一般的な魔法陣です。
    「またハンカチに縫う練習で大丈夫かしら?」
    「いずれはマントに刺繍なさるのですから、少し厚手のものに刺す練習をなさっても良いかもしれませんね」
     そう言ったところで、杯を下げに来たグレーティアと目が合いました。
    「……いくつか布地をお持ちしましょうか?」
     グレーティアはアレキサンドリアに移って以来、衣装部屋の管理をしています。ちょうど良いところに、と思ったわたくしの視線を察したのか、布地選びを提案してくれました。主の様子を見て、必要なことをすんなりと用意出来るグレーティアに頭が下がります。
     グレーティアが戻るのを待ちながら、わたくしはローゼマイン様が貴族院でお召しになる衣服の相談をします。昨年の冬に身長が一気に伸びたせいで、お召し物を全て新調しなくてはなりませんでした。貴族院では黒い服が基本となりますから、領地で過ごす際のものとはまた別に仕立てなくてはなりません。
    「黒の服に濃紺のマントですと、何だか大人っぽい気がしますね」
     背丈が伸びて落ち着いた色味が似合うようになったのが嬉しいのでしょう、ローゼマイン様は楽しげにそうおっしゃいます。
    「ローゼマイン様のお髪の色と同じですから、黒を基本にしつつも、差し色を華やかなものにするのはいかがでしょう? エーレンフェストにいた頃はマントが山吹色でしたから、明るさのバランスが取れていましたが、黒と濃紺ですと控えめすぎるように思います」
    「そうですね、少し工夫した方が良いかもしれません。どんな色だと綺麗かしら?」
     青みのある色の方が調和が取れていて良いというのがローゼマイン様のご意見ですが、エーレンフェストとの繋がりを示す為にも、黄みがあった方が良いようにも思えます。こうしたことを決めようとすると、どうしてもブリュンヒルデがいてくれたらと考えてしまいます。流行と政治、どちらにも目配りができるような上級貴族の側仕えを確保するのが、ローゼマイン様のアレキサンドリアにおける課題の一つです。
     ――特に、ローゼマイン様は女性同士の社交を不得手にしていらっしゃいますし。
     今は未成年ですから、貴族院に通われる間だけ上手に凌ぎ、領主会議ではフェルディナンド様に頼れば良いですが、成人すれば領主会議でも、また領内でも、どうしても社交に取り組まなくてはなりません。ローゼマイン様の成人まで、あと一年半ほどしかありませんから、苦手な社交の補佐ができるような上級貴族の側仕えは、すぐにでも欲しい存在です。
     そんなことを考えておりますと、ローゼマイン様はわたくしの様子から何かを読み取ったのか、リーゼレータを煩わせてしまっていますね、と苦笑しました。
    「……上級貴族の側仕えが必要なのは分かっておりますわ。今年の貴族院で、アレキサンドリアの同年代の方々とも交流が持てますもの。頼りになりそうな側仕えコースの履修者がいないか、探してみます。――で、この衣装ですが、レティーツィアも今年から貴族院に入学するでしょう? お裁縫をする際に、それとなくレティーツィアの衣装の雰囲気を尋ねてみます。ついでに、可能ならフェアゼーレにも差し色について考えを訊いてみるわ。彼女はシュトラールの娘ですから、上級貴族でしょう? 大領地の上級貴族の娘で、領主候補生の側仕えなのですから、きっと色々な観点からの意見を持っていると思います」
     ローゼマイン様はおっとりと笑ってそうおっしゃいました。この柔軟なお考えがいかにもローゼマイン様らしくて、わたくしは思わずくすりと笑ってしまいます。
    「……ローゼマイン様は、目的のはっきりした社交の方がご負担が少ないのかもしれませんね」
     ローゼマイン様が、きょとんとした様子で首を傾げていらっしゃるのが見えます。わたくしはもう少し詳しくお伝えするにはどうしたら良いか、言葉を探しました。
    「何となく集まって世間話をしながら情報交換をしたり、会話を自分の知りたい事柄へと誘導するよりも、はっきりとした交渉ごとのように、話すべき事柄や達成すべき目標があった方が、ローゼマイン様はお話しがしやすいのではと思ったのです」
     ローゼマイン様はわたくしの言葉に、今度は感心したように頷いていらっしゃいます。
    「今まで考えたことがありませんでしたが、確かにリーゼレータの言う通りかもしれません。わたくしは交渉ごとならば得意な自覚があるのですが、これも一種の、目的のはっきりした社交ですものね」
     何せローゼマイン様は、アウブ・ダンケルフェルガーと実にたくみに交渉して、アーレンスバッハへ侵攻した実績がございます。目的と内容が明確なやりとりでは、まるで剃刀のような切れ味を見せるのです。
     ――だからこそ、雑談に終始するお茶会は苦手なのかもしれません。
     お茶会をはじめとした社交の場は、目的を達成したり、一つのことを解決したりする場ではありません。当たり障りのない会話を通して、相手から欲しい情報を得たり、あるいはこちらが伝えたいことを発信したりする場です。そのあやふやな雰囲気が、ローゼマイン様は苦手なのでしょう。
     ――やはり、お茶会の雑談の中に情報の発信と収集を織り込める、上級側仕えが必要そうです。
     お話しながらそんなことを考えておりますと、グレーティアが四、五種類ほどの布地を出してくれました。練習用ですから、針目がくっきりと出るようなものが欲しいと思っていましたが、グレーティアはその辺りもきちんと考えて選んできてくれたようでした。
     わたくしはグレーティアと共にテーブルへ布地を広げつつ、指先で質感や織りの粗密を確かめます。
    「どれが良いのかしら?」
     ローゼマイン様はわたくし達の様子に、ご自分で選ぶよりも任せた方が良いとお感じになったようです。
     わたくしはグレーティアと目を合わせます。グレーティアは遠慮がちに、二種類の布地に絞りました。
    「こちらの灰色の布は、ハリがありますので縫いやすいかと存じます。魔法陣の縫い目を乱さずに仕上げようとお考えでしたら、こちらが宜しいかと。ただ、マントとは随分質感が離れますので……。こちらの緑の布は、マントに似た少々毛足の長い生地です。刺すのはやや難しいかもしれませんが、いずれマントに刺繍することを見据えて練習台にするには、ちょうど良いかと」
     わたくしも同意見の旨を述べ、ローゼマイン様に判断をあおぎます。主は困ったようにこちらを見返して来ました。
    「……わたくしが、最初から完璧な魔法陣を刺繍できるとは思えませんよね?」
     ――そうですね、魔法陣を初めて刺繍する時、誰しも皆、要求される細やかさに嫌気が差すものです。
     それをやんわりとお伝えしますと、ローゼマイン様は難しいお顔をなさいます。
    「でしたら、最初に灰色の布地に刺しましょう。そちらにリーゼレータからの合格が頂けたら、その後緑の布地に移りましょう」
     わたくしたちが一礼すると、ローゼマイン様は溜息をつかれました。
    「分かってはいましたけれど……先は長いですね」



    「レティーツィア様、アウブからご連絡がありました」
    「あら、何かしら」
     レティーツィア様はちらと笑って、わたくしが城から携えて来た書面に目を通されました。
    「ローゼマイン様からのお手紙ですね。――近々神殿にお渡りになるので、その際に昼食をご一緒しませんか、という内容です。何かご相談がおありのようですね」
     レティーツィア様は現在、アウブから神殿の取り仕切りを任されています。春の領主会議でツェントが中央の神殿長になることが発表されて以降、神殿を巡る常識は大きく変わりました。全領地のアウブはツェントに倣って自ら領内の神殿長となることが強く推奨されたようです。アレキサンドリアでは、アウブであるローゼマイン様が神殿長の、婚約者のフェルディナンド様が神官長の任に就いて、代わる代わる神殿にお出向きになり、旧来のやりかたをあれこれと刷新していらっしゃいます。レティーツィア様は孤児院長の席を預かり、ランツェナーヴェ戦やその後の粛清で親を失った子供達の養育について、未来の養父母の意見を仰ぎながら、懸命に孤児院の運営を行なっています。
    「明後日でしたら、レティーツィア様もお時間に余裕があるのではございませんか?」
     神殿の側仕えが木札を見ながら、そう声をかけてくれます。わたくしがオルドナンツを取り出すと、レティーツィア様はそちらに声を吹き込まれます。
    「ローゼマイン様、レティーツィアです。お誘いありがとう存じます。明後日のお昼でいかがでしょうか?」
     孤児院の運営という仕事を任されて以来、レティーツィア様は日に日に成長していらっしゃるように感じます。春に神殿の仕事をおおせつかった直後、不安で萎縮していらしたのが嘘のようです。生来のお優しい気質もあってか孤児達に随分とお心を砕き、彼らの生活の改善を工夫しながら、人の上に立って責任を持つとはどのようなことなのか、日々実地で学んでいらっしゃいます。
     ローゼマイン様はそれだけでなく、ご自分の印刷事業の一部をレティーツィア様にお任せになりました。孤児院の子供達を経済的に自立させることを目して、この事業を始めたと聞きましたから、エーレンフェストでは印刷業と神殿の孤児院とは切っても切れない関係にあるのだそうです。
     ――孤児院長になるのでしたら、是非わたくしの印刷事業にも加わって頂きたいのです。人を動かして事業を行う勉強にもなりますし、アレキサンドリアの流通や地理、経済について広く知ることも出来ますもの。
     アウブの、明るく朗らかなお声がよみがえります。生い立ちの難しさゆえか内向きになってしまいがちなレティーツィア様を、ローゼマイン様は持ち前の快活さでいつも優しく導いて下さいます。レティーツィア様も、やっと安心して頼れる同性の方を得て嬉しいのでしょう、今回のお食事のようなお誘いがある度に、嬉しそうな素振りをなさっています。
    「明後日にローゼマイン様がいらっしゃるのでしたら、工房の進捗もまとめておきましょうか」
     レティーツィア様はそう言って、灰色神官二名に仕事をお命じになっています。ほんの少し弾んだお声を聞くと、わたくしの方も嬉しくなってまいります。


    「急にお昼をご一緒できないかと無理を言って、申し訳ございません」
    「いいえ、ローゼマイン様。わたくしこそ、お手紙を頂いてからずっと楽しみにしていたのです」
     姉妹のように楽しげに語らいながら、お二人はテーブルにつきます。お祈りをしてから給仕される料理は、どれもアウブの考案されたレシピを元にしています。最近携わった業務の話をしながら、お二人は楽しそうに食事を召し上がっていらっしゃいます。
    「孤児院の方はどうですか?」
    「順調です。フランがしっかり取り仕切ってくれていて、とても助かります」
     後ろで給仕を行なっていたフランが一礼します。それに気付いたアウブも、フランににこりと微笑まれました。
     アウブがエーレンフェストの神殿で幼少期を過ごした際、フランが側仕えとして従っていたと聞いています。気配りといい書類仕事といい、本当に有能な人物で、灰色神官にこのような者がいるのかと最初は驚きを隠せませんでした。
     ――アウブとフェルディナンド様がお話ししていたのを聞く限りでは、元々はフェルディナンド様にお仕えしていたようですけれど。
     フェルディナンド様は先代のアウブ・エーレンフェストの第一夫人に疎まれ、余りに酷い迫害から逃れるために神殿へ避難なさったと、ゼルギウスから聞いたことがあります。フェルディナンド様とローゼマイン様はその時に知り合ったのだと言いますから不思議なご縁もあるものだと思います。
     ――きっと、神々がお二人を引き合わせて下さったのですね。
     わたくしはそんなことを考えながら、レティーツィア様の前へパンを給仕します。酵母というものを使ったふわふわとしたパンで、レティーツィア様の最近のお気に入りです。
    「あの、ローゼマイン様。昼食をご一緒するだけでもわたくしとしてはとても嬉しいのですが……ローゼマイン様は、何かご相談がおありなのでしょう? わたくしにお手伝いできることですか?」
     レティーツィア様はパンを千切ると、そっと本題を切り出します。アウブはほんの少しだけ恥ずかしそうな表情を見せますと、レティーツィアにはお見通しですね、と微笑みます。アウブは意外な提案をなさいました。
    「私的なお誘いなので、構えずに聞いてくださいね。――実は、わたくしと一緒に刺繍をして下さる人を探しているのです。正直申しますと、わたくしは刺繍が余り得意ではなくて、合間の時間を見つけて一生懸命に練習中で……。側仕えの話では、一緒におしゃべりをしながら刺繍が出来ると、楽しく上達するのですって。ご家族とおしゃべりして、教え合いながら刺繍を練習したという話も聞きました。わたくしもそんな風に、どなたかと楽しく刺繍が出来たら……と思ったのです。レティーツィアも、年齢的にちょうど刺繍の練習をなさっているのではと思って、お誘いをしに参りました」
     アウブからレティーツィア様へのご提案を伺って、わたくしは思わず、是非! と言いかけました。
     実は、レティーツィア様も似たお悩みを抱えていらしたのです。以前であればロスヴィータが手取り足取り刺繍を教え、また縫う間の話し相手にもなってくれていました。幼い頃からロスヴィータに刺繍を教わっていたせいでしょう、レティーツィア様は裁縫道具をご覧になる度に、ロスヴィータを思い出して暗いお顔になります。思い出深いだけにお辛そうで、わたくしはどうにかして、レティーツィア様のお気持ちが塞がらない形で、刺繍の練習が出来ないかと考えていたのです。
     平素ならば刺繍という言葉に憂鬱そうな表情を浮かべるレティーツィア様も、ローゼマイン様からのご提案だったからでしょう、明るい表情で快諾なさいました。
    「次の土の日はいかがでしょう? わたくしはお休みですが、アウブはお忙しいでしょうか?」
    「大丈夫ですよ。では善は急げと言いますし、次の土の日に致しましょう」
    「場所はいかがいたしましょう? 貴族院への入学前にわたくしが城へ行くのは、建前上宜しくないのですよね? 神殿で部屋を用意することはできますが……」
    「いえ、わたくしが私的な用事で、休みの日に神殿へ足を運ぶのも、公私混同と言われる隙を作りそうです。何か程良い場所があれば良いのですが……」
    「アウブ、レティーツィア様」
     わたくしはアウブのお言葉に、思わず歩み出ました。旧アーレンスバッハのアウブに何代も仕えた我が家です。城の敷地のことでしたら、わたくしがお役に立てる筈です。
    「差し出口をお許しください。離宮と城の間に、大きな東屋がございます。レティーツィア様のお祖母様がお元気な頃は、気候の宜しい時にそちらで刺繍をなさっていたと母から聞いております。外光が入って明るいですから、刺繍もしやすいですし、今時分ならば風に吹かれてもお身体には障らないかと存じます」
     まあ、とローゼマイン様は嬉しげに目を細めていらっしゃいます。お役に立てたことが嬉しく、こちらも釣られて笑みが浮かんでしまいます。
    「フェアゼーレ、ありがとう存じます。大変良い場所を教えて頂きました。――レティーツィア、天候さえ良ければ、そちらでいかがでしょう? もし雨が降ったり、ひどく冷え込むことがありましたら、わたくしの図書館へおいでください。城と繋がってはいますが、そちらであれば大義名分が要りませんので」
     ここからは少し遠いですけれど、とアウブは悪戯っぽくおっしゃいます。わたくしの言葉を尊重しつつも、すぐに図書館という押さえの提案を出して下さるのです。こちらへいらっしゃる前から、きちんと段取りを考えてくださっていたに違いありません。
    「お誘いありがとう存じます、ローゼマイン様。……あの、とても楽しみです。土の日に楽しく刺繍とお話しができるよう、お仕事を頑張りますね」
     レティーツィア様も楽しげに笑っていらっしゃいます。お裁縫の話題なのにこんなにも朗らかなレティーツィア様のお姿は、久しぶりに拝見しました。
    「土の日までに、どんな刺繍を刺すか、図案を決めなくてはなりませんね」
     そっとレティーツィア様に申し上げれば、笑顔で頷いていらっしゃいます。こちらまで明るい気持ちになります。
     本日の執務は少しゆとりがございます。フランからも、アウブがいらっしゃるのでしたら、と仕事の量を融通してもらうことができました。ゆっくりと食後のお茶と、お菓子が供されます。
    「あの、ローゼマイン様。先日ユストクスから聞いたのですが、ローゼマイン様は、フェルディナンド様のマントに刺繍をなさるとお約束なさったのでしょう?」
     ローゼマイン様はその言葉に、少々驚いたような表情をなさっています。
    「ユストクスがレティーツィアにそんなことを言っていたのですか?」
    「ええ。先週、フェルディナンド様がこちらへいらした際に、マントについてお伺いしたのです。今もエーレンフェストのマントを纏っていらっしゃいますが、もう婚約も終えたのですし、ディートリンデ様の時とはご事情も違いますから、濃紺のマントを身に着けても宜しいのではないですか、と。フェルディナンド様は、まだエーレンフェストとの繋がりを見せる者が必要だとおっしゃったのですが、その時ユストクスが……」
     ――フェルディナンド様は、アウブの刺繍を施したマントを頂けるのを、待っていらっしゃるのですよ。
     わたくしも、その時のことはよく覚えております。ユストクス様の弾むような笑みも、フェルディナンド様が恥ずかしそうに渋面をお作りになるご様子も、以前ならば決して見ることのできない表情でした。
     アウブはレティーツィア様の説明に、ちょっと困ったご様子で微笑まれました。
    「こんな風に、噂は広がっていくものなのですね。まさかレティーツィアに伝わっているだなんて、思ってもみませんでした」
     ――もしかして、内緒のお約束だったのでしょうか。
     婚約者同士の秘密の約束が、マントに刺繍をすることだなんて。何て素敵なのでしょう。ディートリンデ様の婚約者というお立場だった頃のフェルディナンド様は、次期アウブのディートリンデ様を立てることこそあれ、あの方と私的な会話はなるべく避けようとなさっておいででした。その理由は、わたくしにも容易に理解できます。わがまま放題で無礼なディートリンデ様のお近くにいるのは、レティーツィア様の側仕えという間接的な立場であっても、ひどく気疲れいたしました。婚約者という立場ではなおさらでしょう。
     ――お幸せそうな今のお二人を見れば、旧アーレンスバッハへの婿入りは、フェルディナンド様にとって本当にお辛いことだったのだと分かります。
     アウブはメスティオノーラの英知によって、カーオサイファの席巻するこの地を浄めてくださっただけでなく、アウブご自身の光のようなものを、この地の人々に吹き込んでくださいました。様々なことが一気に好転したのは、全てローゼマイン様のお力によるものです。
     レティーツィア様も、アウブと未来のアウブ配の約束に心をときめかせたのでしょう、頬に片手を当てながらうっとりと微笑んでいらっしゃいます。
    「わたくし、ユストクスからこの話を聞いて以来、ずっと誰かにこのことを話したくてたまらなかったのです。フェルディナンド様は難しいお顔をなさっておいででしたけれど、話すなとはおっしゃいませんでした。――あの、ローゼマイン様。とても素敵なお噂ですから、広がっても問題ないかと存じます。わたくし、城にいる側仕えたちにもこのお話をして宜しいですか?」
    「そ、それは……」
     アウブが珍しく狼狽した素振りを見せましたが、やがてちらと苦笑して見せると、わたくしが刺繍が下手なのは内緒にしてくださいね、と可愛らしいことをおっしゃいました。
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