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    hoshinami629

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    hoshinami629

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    トラオクヴァールに甘いロゼマさんに不機嫌になるフェルさんが書きたかったんだけど、この時点で既にブルーメフェルトが二回くらい更地になりそう。この後どういう展開にすれば良いか思い浮かばないのでここに上げておきます(展開思いついたら続き書きます)

    #本好きの下剋上
    bookLoversLowdown
    #フェルマイ
    fermai

    ブルーメフェルト更地になりそう ブルーメフェルトとコリンツダウムから連名で会食の招待を受けたのは、ローゼマインとフェルディナンドが星結びの儀式を終えた、翌日のことだった。ようやくローゼマインの夫となったフェルディナンドは、昨日の夜から濃紺のマントを身につけている。彼の望んだ刺繍入りのマントを手渡すことができて、ローゼマインは無類に嬉しい。が、領主会議の期間中は、そのような浮かれたことは言っていられない。何せ社交に次ぐ社交で、予定が会議と会食のミルフィーユ状態だからだ。
     今回の領主会議における大きな議題は、国境門の開門に関してである。外患誘致が建領の理由となっているエーレンフェストやアレキサンドリアは開門を求めない予定だが、ハウフレッツェやギレッセンマイヤー、クラッセンブルクはツェントに開門を求めた。ハウフレッツェとクラッセンブルクは外国との取引を再開したいからというよりも、寧ろ海水の減少を苦慮してのことであったらしい。これについてはアレキサンドリアも他人事ではないので、最近ではもっぱら国境門と境界門が海水にどのような影響を与えるのかを領内で研究中だ。
     さてギレッセンマイヤーとハウフレッツェといえば、それぞれ領主候補生をトラオクヴァールとジギスヴァルトに嫁がせた中領地である。トラオクヴァールの即位やジギスヴァルトの王位相続で影響力を伸ばした以上、彼らがアウブとなってからは順位をがくりと落としている。国境門を開くようツェントに要請したのも、交易によって少しでも順位を上げたいという目論見あってのことだろう。
     そのような領地である以上、当然アレキサンドリアへの風当たりはきつい。ツェント・トラオクヴァールを退位させ、ジギスヴァルトを世継ぎの座から追い落としたのはアレキサンドリアである、と思われているのだ。
    「トラオクヴァール様とジギスヴァルト様の親子連名でのご招待……。やはり、直接やり取りのないギレッセンマイヤーやハウフレッツェの窓口として、アレキサンドリアに何か要求しようとしているのでしょうか?」
     様々な筋からもたらされた情報を総合しながら、ローゼマインはそう呟く。今日の午前中は奇跡的に会議が入らなかったので、この時間を使って寮のホールでフェルディナンドや文官達と共に会食の作戦を練っているのだった。
    「その可能性は高いでしょうね。ハウフレッツェはこの十数年、海の縮小により随分と力を落としております。その上、ローゼマイン様がアレキサンドリアにおいて海産物の特産品の開発を推進しましたから、益々不利を感じていらっしゃるのでしょう」
     文官はそう言いながら、海塩や螺鈿細工といった例を挙げてゆく。フェルディナンドは一つ頷いてから口を開く。
    「他に話題にのぼるとすれば、ヒルデブラント様とレティーツィアの婚約についてであろう。これについては私達が今回の領主会議で星を結んだばかりで、養子縁組がこれからになること、ツェントとドレヴァンヒェルの意向を伺わないことには動けないことを盾に、俎上に載せないのが肝心だ」
    「成る程。ドレヴァンヒェルの名前を出すのは有効ですね」
     ローゼマインは頷きながら資料をめくる。
    「準備しておく話題で、他に心当たりはありますか?」
     側近達に尋ねると、クラリッサが手を挙げる。
    「ダンケルフェルガーからの伝手で入手した情報ですが、アウブ・ブルーメフェルトは旧ベルケシュトックの貴族達との融和に随分と苦心されているようです。旧ベルケシュトックの土地を豊かにするために何をすれば良いか、ローゼマイン様から神事に関する情報を得たいと言われる可能性がございます」
     ローゼマインはその言葉に困ったように首を傾げる。
    「……そう言われても、というのが正直なところですね。神事は万能ではありませんもの。それにしても、貴族院の本好きのお茶会でヒルデブラント様から聞いていたよりも、随分と内情が深刻なのですね」
    「とおっしゃいますと?」
     ハルトムートが不思議そうに問いかける。
    「ヒルデブラント様のお話では、領主一族皆で神殿改革を行い、奉納式や祈念式にも順番で出向かれたと聞いていましたから、ブルーメフェルトの状況も段々と改善するものと思っていました」
     ローゼマインは冬に本好きのお茶会で得た情報を開陳する。旧アーレンスバッハの頃からの貴族にとって、旧王族が神官のごとく土地へ魔力を注いでいるというのは未だに刺激の強い情報なのだろう、嘆息とも驚愕ともつかぬ言葉があちこちで交わされる。
    「わたくしとしては、それを継続すれば十分なのではと思うのですけれど……」
     ローゼマインがそう言えば、フェルディナンドが鼻を鳴らす。
    「旧ベルケシュトックに旧シャルファー、そして中央の一部が現在のブルーメフェルトに統合された。三つの領地から貴族が合流しているために、派閥の均衡を取るのが難しいのであろう。領主一族が全ての地域に均等に魔力を注げばそれで良しとはなるまい。中央の派閥がトラオクヴァール様の支持基盤である以上、そちらに魔力を優先するよう圧力が掛かっているのだろうが、実際に最も魔力枯渇が深刻な土地は旧ベルケシュトックに決まっている。支持基盤の派閥に与えられる餌、もしくは旧ベルケシュトックを宥められる方法をこちらから引き出せないかと先方は考えている筈だ」
    「そんなことをわたくしに求められても困りますよ」
     フェルディナンドはその言葉に、わざとらしく肩を竦める。
    「そうだな。よってこれについても、君は明言を徹底的に避けておきなさい。先代のアウブ・アーレンスバッハが旧ベルケシュトックを蔑ろにしたためにゲオルギーネに利用される隙を作った、というような話ならばして構わないが、それ以上踏み込んだことについては一切安請け合いしないことだ」
    「そんなに念を押さなくとも、最近はわたくしも曖昧に受け流す技能を身につけたのですよ」
     ローゼマインが不満げにフェルディナンドに訴えれば、歳上の夫はおかしげに口許を歪める。
    「失礼いたしました、アウブ。それでは旧ベルケシュトックの平民の惨状を切々と訴えられた後、次の冬だけは小聖杯を五つほど満たして欲しい、代わりに王宮図書館の貴重書を写しを貸し出すなどと言われても了承しないようお願いいたします」
    「う…………気をつけます…………」
     的確にローゼマインが絆されそうな球を投げてくるフェルディナンドには、ぐうの音も出ない。
     ――フェルディナンド様が他領のアウブじゃなくて良かったよ!
     内心でそんなことを思いながら資料を繰る。フェルディナンドは何を思ったが、そんな妻の姿に一つ溜息をついた。
    「理由は知らぬが、君は以前からトラオクヴァール様に甘いから心配だ」
     ローゼマインはその言葉に首を傾げる。甘い対応をした覚えはないのだが。
    「わたくしが甘いのではなく、フェルディナンドが厳しいのでは?」
     その言葉に、隣に控えていたハルトムートが僅かに笑う。
    「ローゼマイン様はトラオクヴァール様に点が甘くていらっしゃいますよ。貴族院での奉納式で癒しを差し上げていたのを覚えています」
    「……待て、初めて聞く類の情報だ。君は貴族院三年生の時にいったいどのように王族に関わった?」
     フェルディナンドが眉間に深い皺を寄せながらローゼマインに詰め寄ってくる。神殿で説教部屋に呼ばれた頃のことを思い出して、ローゼマインは慌てて距離を取った。
    「ハルトムートの言葉そのままですよ。その時のトラオクヴァール様からお薬の匂いがして、私が初めて会った頃のフェルディナンド様みたいな顔色をなさっていたので、癒しを差し上げたいと思っただけです」
    「……それだけで君から癒しをもらえるとは、グルトリスハイトを持たぬツェントとは実に良い身分だな」
     ――のおおお、何でそこで魔王の笑みを浮かべるの! フェルディナンド様マジ分かんない!
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