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    hoshinami629

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    hoshinami629

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    引越し前に書いていたんだけど、ここからどういう展開にするつもりだったのか全く思い出せないので没。メモによれば半分こする展開だったらしいが……?

    #本好きの下剋上
    bookLoversLowdown
    #フェルマイ
    fermai

    「ローゼマインです。フェルディナンド、先日の研究報告を読み終えました。お伺いしたいことがあるので、今からそちらへ向かっても宜しいですか?」
     ある夏の休日、昼下がりに飛んで来たオルドナンツからは、楽しげな妻の声が聞こえて来る。研究所の自室にいたフェルディナンドは、軽やかなその声を三度聞きながら調合鍋の中身を空ける。二つの薬液を一回り大きななべの中で混ぜ合わせると、幾つかの素材をその中に漬け込んだ。
     ――短縮の魔法陣を使ったとしても、漬け込みには時間がかかるな。
     魔法陣を描きながらそんなことを考えて、調合を中断してローゼマインの相手をするための段取りを頭の中で整える。調合机の片付けをユストクスに任せると、自分は机の端に転がったオルドナンツを叩いて、妻への返答を吹き込んだ。
    「フェルディナンドです。調合も一段落しましたので、今なら空いております。どうぞお越し下さい」
     星を結んで以降、私的な場では言葉を崩してはいるが、オルドナンツは誰が聞いているか分からない。最低限丁寧な言葉遣いにするべきだろうと考えながら返答を吹き込む。鳥が羽ばたいて出て行くのを見送ると、ゼルギウスに休憩を伝えてお茶の準備をさせることにした。
    「フェルディナンド、この研究報告がとても面白かったです!」
     しばらくして姿を現した妻は、入って来るなり手許にある冊子をきらきらした目で差し出して来る。フェルディナンドの研究所で今年から発行することになった研究報告だった。手振りで着席を促しながら続きを問えば、ローゼマインは一頻り感想を語り出す。
    「どれも非常に示唆に富んでいましたが、こちらの魔木の報告が特に気になりました。燃えない紙や糸が作れますよ! 火事に巻き込まれて書籍が焼亡するのは、資料散逸の大きな原因ですから、これを防げる紙が作れたら凄いことです。この魔木で出来た紙で書類を表装したり、壁紙に使ったりすると、相当耐火性能が高まるのではないかしら」
    「魔木を素材にする紙はともかく、糸とはどういうことだ?」
     フェルディナンドが勢いに呆れながらそう呟くと、ローゼマインはにこりと笑う。
    「こちらの別の研究報告に書いてあるではありませんか。幾つかの虫の食性を調べた研究ですね。この魔木の葉は蚕の飼料になるのでしょう? 絹は蚕の繭から出来るのですから、特定の魔木の葉のみ食べさせた蚕の繭は、当然その魔木の性質を――どうしたのですか?」
    「絹糸は蚕の繭から出来るのか?」
    「ご存じなかったのですか!?」
     ローゼマインは驚いたようにこちらを見つめて、ぱちぱちとまばたきをする。リーゼレータが苦笑しながら彼女に茶を給仕する。
    「ローゼマイン様、余り一般的な知識ではないかと存じます。この場の他の者も皆気になるようですから、詳しく教えていただけませんか?」
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