彼から誘われることは少ないけど、誘ってくれるとものすごく嬉しくなるし、応えたくなる(それがトップでもボトムでも)。こんな風に思うのは、君だけだよ、本当。
それなのに。
「……ねぇ、それって誘ってるの?」
「んー?」
いいや、と否定する彼はさっきから一定の間隔で俺のお腹に唇を押し当ててくる。毛布をかけずにベッドでごろごろしながらスマホを見ていると、急にお腹を捲られて今に至る。
これが、腰骨とか下っ腹とか、もっと下の方……とか、に移るならわかるんだけど、ずっとお腹のあたりをキスされ続けるので、今ひとつスイッチが入らない。っていうか、誘われてるのかわかんない。
お風呂上がりの彼から、ボディソープの良い匂いがするのはいいんだけど、乾ききっていない毛先が時々当たって冷たい。また根本だけドライヤーを当てて満足したんだろうな。
それに比べて、お腹に当たる胸も義手も、まだあつい。Tシャツも何も着てないから、お腹に当たる肌が多い。
「……身体、冷えるよ」
「今日は暖かいから平気だ」
「そのまま寝るの?」
「多分?」
「ふぅん」
ぱたりとスマホを持ち上げていた腕を毛布の上に落として、斜め上を眺める。その間もふぅふぅちゃんの唇は、くっついては離れて、くっついては離れてく。ちらりと顔を盗み見ると、ちょっと楽しそうだった。
「……本当に誘ってない?」
「誘ってない」
「うーん……」
当たり前のようにお腹を剥き出しにされてこうされたので、抵抗するタイミングを失ったんだけど、正直あんまりそこに彼の意識が向くのは嬉しくない。
「あのさぁ……わぁ!?」
どうしようか考えていると、なんの予告もなく顔全体をぶにっとお腹に押しつけられて、流石に彼の肩を掴んで引き剥がした。
「なに!? 喧嘩売ってる!?」
「いや、顔を埋めたら気持ちよさそうだなと思って……」
「……」
言いたいことは色々あったけど、軽く謝っている彼の脇に脚を滑り込ませて、横に押し倒す。
「おっと、」
抵抗しない身体に跨がって、まだしっとりしている胸の上に乗り上げた。
「なぁーんか楽しそうだったし、俺もやろっかな」
「あー……まずいことになったな?」
「どうかな? 君次第じゃないの」
俺がしてたみたいに、イイコでじっとしててよね。
いいよね、ふぅふぅちゃん?