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    はじめ

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    はじめ

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    面あた
    「どうせキスする勇気もないくせに」「僕がそんな腰抜けに見えるか?」
    一触即発の雰囲気でいちゃついて欲しい

    #面あた
    face

    一触即発のキス「――どうして貴様がここにいるんだ?」
     開口一番、物騒な台詞。ようやく帰ってきたかと思えばそれかね。突き刺さる冷ややかな瞳を笑顔で受け流した。
    「だあってぇ、お呼ばれしたんだもん」
    「僕が呼んだのはお前じゃなくてラムさんだ!」
    「え~? でも招待状ここにあるよぉ?」
     面堂の目の前で封筒をちらつかせると、面白いようにその目に怒りが宿った。手にしていた漫画を閉じて、小脇に抱える。臨戦態勢。
    「ええい、大方お前が奪い取ったんだろう!」
    「いやいや、俺の机に置いてあったし。面堂くんったら大胆ね!」
    「違う違ぁう! 甘えた声を出すんじゃない、気色悪い!」
     降りかかってくる刀をひょいとよけ、笑えるほどふかふかのソファで寝返りを繰り返す。面堂の攻撃をかわしながら、テーブルに置かれたクッキーを器用に頬張ると、ドアのあたりで面堂の部下たちが拍手を寄越した。あたるに言わせればあほの集まりだが、こうして手放しに褒められると悪い気はしない。声援に応えながら、ひょいひょいと攻撃をかわす。
    「あっ、そこのクッキー美味しかったよ」
    「…え、あ、そうか?」
    「うん。でも、甘いもの食べたら、しょっぱいものも食べたくなっちゃうかも」
    「ああ、では準備しておかないとなぁ…って、違う違ぁう!」
     お前と居たらペースを乱される、と面堂が呼吸を荒げるので、勝手にペースを乱しとるんじゃないかと思ったが、声にはしなかった。
     そのへんにあったショートケーキを鷲掴み、ひとまず一口含む。唇の端についた生クリームを親指で拭い、そのまま壁に背をつけ、堂々と面堂を迎えた。
     一触即発、のような緊張感のなか、ショートケーキの苺を食むと、面堂の目がまた光った。
    「斬られる覚悟は出来ているということか?」
    「別にぃ。それが客人に対する態度? 面堂家の教育方針はずいぶんと横柄のようだな」
    「本当に口の減らんやつだな。それなら言わせてもらうが、客なら客らしくもっとしおらしく出来んのか?」
    「え? お客さんって、神様じゃないのか?」
    「それは商人の話だろ! 馬鹿者!」
     怒鳴られて、笑うと、面堂がまた怒る。打てば響く会話を、少なからず心地よいとは思いつつ、残りのショートケーキを平らげる。
    「…飲み放題、食べ放題、と聞いてわざわざやって来たのに」
    「なに?」
    「おいしいものが、たくさんあるって聞いて来たのに」
     頬に生クリームをつけたまま瞼を閉じると、ようやく面堂が刀を閉まった。かちゃ、と高い音があたるの鼓膜を震わせる。至近距離に感じる息遣いに、眩暈がしそうだった。
     こういった場面に出くわしたときに、確かに面堂は悔しいほどにスマートだった。本人に自覚があるのかは定かだが。丁寧な所作で、姿勢を正す。それから壁に手をついて、下がっていいぞ、とちいさな声で言う。遠くの方で、去っていく数人の足音を聞いた。
    「………俺?」
     知っていて、目を瞑ったまま尋ねた。
    「………お前じゃない」
     面堂がそれはそれはいまめしそうな声を出したので、思わず笑った。
    「じゃあ、誰?」
    「………品がないぞ」
    「俺に品を求めるか?」
    「………はあ、たしかに」
     こればかりは諸星の言う通りだ。しんそこ呆れたため息とともに、頬についたクリームを親指の腹で拭われる。ぺろりと、舐め取る舌が、なんと赤いこと。
    「俺のクリーム…んっ…」
     抗議の声を上げると、胸ぐらを掴まれた。
    「…本当にそれだけで良いのか?」
    「なにが?」
    「飲み食いし放題と聞いて、我が面堂家にやってきたんだろう?」
     噛みつかんばかりの勢いで、額を押しつけられた。睫毛が触れるほどの距離で見つめると、面堂が一瞬怯んだ。
    「…どうせ、キスする勇気もないくせに」
    「…僕がそんな腰抜けに見えるか?」
     声に剣呑さが帯びたかと思えば、長い腕が伸びてきて、体をまさぐられた。一瞬の間に抱き留められて、首筋に熱い息がかかる。
     今日はずいぶんと大胆のようだ。売り言葉に買い言葉。挑発すればするだけ、それに乗ってくる。まるで武者震いだ。口角を上げれば、それがまた面堂の怒りを買う。
    「…僕が、そんな腰抜けに見えるか?」
     押し倒されて、手のひらを地面に縫い付けられた。こんな乱暴なことを、けっして女性にはしないだろうなと思うと、妙に興奮した。
     面堂の腹を蹴り返し、形勢逆転、馬乗りになる。
     互いに熱を帯びたそこを擦りつけ、さらにぐっと押し付けると、面堂の喉仏が上下に動いた。
     触れたところが発熱したみたいに熱い。穿かれる想像をして腹の奥がきゅっと疼く。
    「――お前に、食われてやっても良いぞ?」
     面堂が目を瞬かせて驚き、その瞳の揺らめきを見つつ、どちらからともなくキスをした。
     ほうら、俺の方が、ずいぶんと覚悟が出来ている。
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     期末テストを終えたあとの終業式までを待つ期間というのは、すぐそこまでやってきている冬休みに気を取られ、心がそわそわして落ち着かなかった。
    「――なに見てるんだ?」
     教室の窓から校庭を見下ろしていると、後ろから声を掛けられた。振り向かなくても声で誰か分かった。べつに、と一言短く言ってあしらうも、あたるにのしかかるコースケは意に介さない。
    「…あ、面堂のやつじゃねえか」
     校庭の中央には見える面堂の姿を目敏く捉え、やたらと姿勢の良いぴんと伸びた清潔な背中を顎でしゃくる。誰と話してるんだ、などと独り言を呟きつつ、あたるの肩にのしかかるようにして窓の桟に手を掛けている。そのまま窓の外の方へと身を乗り出すので危なっかしいたらありゃしなかったが、落ちたら落ちたときだ。
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