手袋を外して 今日も無事に立会いを終えた俺は現場の後始末を終えるとひとつ小さく息を吐く。暴を使う場面こそなかったものの、互いに武力を誇示したまま行われた賭けはなかなかに手に汗を握るものだった。
「南方立会人」
これから帰ろうかといったところで呼び止められた声に俺は振り向いた。会員同士の賭けだったということもあり、立会人はもう一人いた。よりにもよってとしかいいようもない相手だ。
「なんでしょう、門倉立会人」
門倉が立会人と呼んできたのでそれに合わせて返す。すると僅かに面白がった様にその隻眼が細められた。
「もう帰られるのですか」
「ええ。……って、いつまでその話し方すんじゃ」
変わらず続けて問いかけて来る門倉に、周りに部外者がいないことを確認して口調を崩した。本部にいても門倉にこのような口調で話しかけられることは滅多にないため少し居心地が悪い。そんな俺の様子に耐えきれなくなったのか門倉は喉を鳴らして笑った。
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