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    ski_xXx0

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    放置ニノカゲ供養

    カゲの体調の変化がわかるタイプの二宮さん、いいよね~!(から始まった話) 住む世界がちがうヤツ。影浦雅人にとって二宮匡貴という男の第一印象はおおよそそんな感じだった。
     ボーダーという共通点がなければ、ボーダーでも互いにここまでの実力がなければ、影浦は二宮の名前すら覚えることができたか危うい。影浦が二宮の存在を認識しているのは二宮がボーダー屈指の実力者であることに他ならない。関わりのない弱い人間を覚えていられるほど、影浦は他人に興味もなければ関心もなかった。
     仏頂面だが整った顔をしていて、頭も容量もいい。影浦が頭を抱えた悩みなんて最初から持ち合わせていなかったか、なんでもないように解決してきたのだと思わせる余裕がある。影浦の目にはそのように映った。
     影浦の経験上、ああいうタイプの人間は自分のようなタイプの人間を嫌う傾向が多い。そう思っていたが二宮から刺さってくる感情は痛くない。かと言って好意が刺さるわけでもないからそもそも関心が薄いのかもしれない。
     しかしそれは影浦にとってありがたいことだった。不快な感情を刺してこない相手はそれだけでいい。見た目だけで判断して怖そうだの近寄りたくないだのいちいち刺してくる人間もわざと突っかかってくるような物好きな人間もいる中で、自分に必要以上の感情を抱かない人間の存在は貴重だった。
     だから、ただ住む世界がちがうヤツ。影浦にとって二宮はそれ以上でも以下でもなかった。

    「影浦」
     学校から直接本部に足を運んだ影浦が自販機で何か買ってから隊室に向かおうとしていたときだった。低い声が影浦を呼んだ。つんと呼び止めるように刺さった感情は鬱陶しくもない。振り返ればスーツ姿の男が立っていた。
    「なんだよ」
    「東さんから書類を預かった」
     要件は持っていた書類らしい。ぱっと見たところ次の会議の資料だ。こいつを使いパシリにできる東のおっさんも大概だ。影浦はそう思ったが、元チームメイトなんておそらくそんなものなのだろう。
    「どうも」
    「……」
     書類は受け取った。用件は済んだはずだが二宮は動かなかった。ただじっと影浦を見ている。サインでも必要だったのだろうか。機密性の高い書類には見えなかったが理解できていないだけなのかもしれない。頭を使うのは二宮の方が得意だ。
    「まだなんかあんの?」
    「いや、特には」
     尋ねてみるが何もないらしい。だったら何故じっと立ったままなのか。そう問いたい気持ちもあったが別に不快なものは刺さってこない。問い詰めて聞き出す必要もないだろう。そう判断した影浦はふうんと一言呟いた。
    「……んじゃ、行くわ」
    「ああ」
     去ることを告げれば二宮は引き止めず見送った。なんでもないと言い張るにはやたら見られた気がするが、そこに乗った感情はよくわからない。よくわからないものは考えても無駄だ。

     そういえばこの後の防衛任務は二宮隊と一緒だったか。だが任務のことで何かあるなら流石に言ってくるだろう。あの男は真面目だ。あっさりした態度に別に重要なことではなかったのだろうと影浦は思考を切り替えた。
     頭の出来が違う人間が何を考えているかなんて影浦には想像できない。影浦にわかるのは少なくとも二宮が自分に対して嫌悪感も敵意も向けてこない事実だけ。だからこちらも突っかかろうと思わない。ただそれだけだった。

    ◇◆◇

    「カゲ! そっちゲート開いたぞ!」
    「ンなことわかってんだよ。何体だ」
    「一、二……五体!」
     任務終了間近、チクリと影浦の肌を何かが刺した。今日は特に面倒事もなく暴れる必要もなく終われると思ったがそうはいかないらしい。
     任務は嫌いなわけではない。ただ対人戦の方がよっぽど楽しめると影浦は思っている。何度も戦ったトリオン兵の動きはわかりやすく読みやすい。いくらプログラムされた機械で殺気を刺してくるわけではないといえど、そこに影浦が求めるスリルはない。何事もない方がいいことはわかっているが暴れたりない気持ちが残ってしまう。
    「ユズル、適当に撃ってくれ」
    「わかった」
     優秀な自隊の狙撃手にサポートを頼めば期待以上の働きをしてくれるのはいつものことだ。絵馬は誤って影浦を狙撃するようなミスはしないし、影浦も絵馬に撃たれるようなヘマはしない。
    「ゾエさんもそっち行こっか?」
    「おめーが着く頃には終わるっての。一応周り警戒だけしとけ」
    「北添了解~」
     北添は戦力として優秀だが如何せん足が遅い。新型でもない何度も見たことのあるトリオン兵を数体相手にする時間はそう掛からないだろう。
     実際そんな内部通信を行っている間にも影浦はトリオン兵に飛び掛かりスコーピオンを投げていた。綺麗な弧を描いたそれはトリオン兵を貫き沈ませる。絵馬の援護射撃が入るのはそれから間もなくのことだった。流れるような連携でトリオン兵はあっという間に片付いていく。
    「よっしゃ! レーダー反応消えたぞー戻ってこい!」
     仁礼のその言葉でふうと息を吐いた。もう交代の時間らしい。
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