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    Hyiot_kbuch

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    門南
    もちが可愛すぎて書くしかなかった。
    (元ネタ:ミナミエイコウさんのもちひろしま)

    #門南
    menan

    ▼もち が とつぜん あらわれた ある朝、門倉が目を覚ますと枕元に謎の物体が転がっていた。一見目を閉じた手のひらサイズの生首のようだが、妙に可愛げのあるようなないような謎の物体は己と似たような様相をしている。
     一体これはなんなんだと不気味に思いつつ指でつつけば丸くもっちりとしたソレはどうやら生き物であったようでぴくりと震えて目を開いた。
    「……ゆ?」
     小さく鳴き声を漏らしたつぶらな瞳と目が合い、互いの間に一瞬緊張が走る。先に動いたのは謎の生き物の方だった。ぎゅっと身を縮ませたソレに、もしや襲ってくるのかと思い咄嗟に捕まえようと手を広げる。予想した通り門倉へと向かいそいつは跳ねた。そして手にあたる軽く柔らかい感触。
    「ゆ〜♡」
     全身をぽよんぽよんと跳ねさせながら手にすり寄ってきたソレに門倉の毒気は完全に抜かれてしまったのだった。

     とりあえず朝食を腹に入れつつ観察する。門倉が食事する間もぽよぽよとテーブルの上を跳ねるコイツが何なのかは全く分からないが、とくに何もしてこないことから敵意がないことだけは分かる。自身でいろいろ調べようにも生き物については専門外。ましてや未知のものであればどこから調べていいかもわからない。
     そう考えているうちにふと気付いた、もしかしたらありとあらゆる権力に通じる賭郎であれば、専門の研究機関にツテがある可能性もあり正体が掴めるやもしれない、と。そう思った門倉はこの謎の生き物を本部へと連れていくことに決める。
    「あー、まぁポケット中でええか」
     小動物など飼ったことも触れたこともろくにない門倉の家にケージのようなものがある訳もなく、タッパーに入れるのは密閉されるから良くないよなと考えたところでめんどくさくなった。食事の間もテーブルから逃げる様子もなく、手を差し出したところ手のひらに乗ってきたためどうせ逃げはしないだろうと考えからポケットで十分だろうと判断する。上背も肩幅もある門倉のスーツはそれなりにサイズがあるためポケットも余裕があるのだ。手のひらに乗ったソレをポケットに入れようとすると今までになく抵抗するようにびちびちと跳ねた。どうやらポケットは嫌らしい。
     手に乗せたまま移動してもよいのだが片手が塞がるのがなんとなく嫌で、どうしたものかと考えているとソイツは勝手に手のひらから腕を跳ね門倉の体を登っていった。落ちることも無く器用に肩までたどり着くとそこに落ち着いたのか満足気に声を上げる。
    「ゆっ!」
     行けと言わんばかりの声に調子が狂うと頭を掻きながら門倉は歩き出した。自分から乗っといて逃げることは多分ないだろうし、本部までは車で行くのもありそれほど人目が気にならないのが幸いだ。

     本部へとつけばすれ違うものたちがざわめく。中には堪らず門倉を二度見してくるものもいた。原因はどう考えても肩の生き物だ。得体がしれないというのもあるが、成人男性がこのようなものを肩に乗せているという絵面がまず注目を集める。しかも相手は門倉である。ただでさえ背の高さと特徴的な眼帯で目立つのに肩の生き物が余計に目を引く。しかし、おいそれと話しかけることの出来るものはそう居ないこともあり視線を集めるだけ集めて、誰にも話しかけられることのないまま立会人の執務室とも呼べる部屋にまでたどり着く。
     中に入れば何かを見るかのように一箇所に数人の立会人が集まっていた。一体何事かと近づいていけば輪の中心には南方がいる。いや、正確にはその机に鎮座した南方にどことなく似た己の肩に乗っているものと同じようなモノがいた。
    「ゆ!」
    「ぽ!」
     門倉の肩に乗っているモノがもう一方に気づいたのか声を上げた。南方の手にいるモノが応えるように跳ねる。どうやら同種(?)に会えて嬉しいようだ。その様子に周囲が漸く門倉と門倉が連れてきたモノに視線を向けた。
    「お前のところにもいたのか」
     最初に話しかけてきたのは中心にいた南方だ。周りに質問攻めされていたのかどことなくげっそりしている。タイミングが違えば己がそうなっていただろうことを考えれば必要な犠牲かと同情はしない。
    「門倉立会人も朝起きたら枕元に?」
     続けて聞いてくるのは銅寺だ。好奇心のままに南方へ質問攻めしていた者の一人だろう。門倉もといった聞き方をしてくるということは南方の方も同じような状況だったらしい。情報が欲しいのもあってここは素直に質問に答えることにする。
    「ああ、起きたら枕元にいた」
    「なるほど。どこかから入ってきたとかそういうのに心当たりは?」
    「ない」
     なんて答えている間になかなか肩から降ろさない門倉に焦れたのか肩からソイツが南方の机へ向かい飛び降りた。立っている門倉と机の間にはそれなりの高さがありソイツのサイズを考えると自殺行為としか思えない行動につい焦る。しかしソイツは門倉が手を出すよりも早くびたんと音がして着地していた。
    「ゆっゆ」
    「ぽ〜」
     どうやらダメージはなかったようで元気に跳ねたかと思えばもう一方に頬と思しき場所を擦り付けている。何かしらのコミュニケーションをとっているようだ。
     その様子を見ていた婿の方の能輪が目を輝かせながら聞いてくる。
    「どの程度の高さまでなら落としても大丈夫なんでしょうね?」
    「ダーリン、流石にそれは可哀想じゃない?こんなに可愛らしいのに」
     試してみたいと顔に書いてある能輪を窘めるのは嫁の方の能輪だ。多くの女性がそうであるように彼女も可愛いものには目がないようで、もちもちと戯れる二体眺めてはニコニコと目を細めている。

     暫く他愛もない質問に答えつつ情報を集めるも有益な情報は何も無く、徐々に関係の無い話へシフトしていく。これ以上付き合う義理もなくそろそろ立ち去るかと考えた頃に南方と同じく警察に所属している真鍋がふらりとやってきて会話へと参加してきた。
    「これはなんと呼べばいいんだ?」
     彼の疑問は最もである。確かに今までソレとかコイツとかしか呼んでなかったが二体もいるとなると何かしら呼び名があった方がいいだろう。真鍋とはあまり話したことはなかったが、警察に所属しクセ者揃いの密葬課を取り仕切っていただけあって、案外まともなこと言う奴なんだなと認識する。
    「私としては卵のような形をしているのでそれに因んだ名前がいいと思うのだが。レグホーンとかアローカナとか」
     前言撤回。やはり密葬課にいただけあってこいつも変わり者だった。挙げられた名前はパッと見かっこいいが採卵鶏の品種名だ。それにすかさず反対意見が入る。
    「もっと可愛い名前のほうがいいわ」
     その意見を皮切りに他の立会人達も各々好き勝手に名前を主張して騒ぎ出した。あまりの収拾がのつかなさに南方と門倉は目を見合わせる。一応飼い主(?)は自分達だ。勝手に分かりづらいものを付けられるよりかは自分たちで決めてしまった方がいいんじゃないかと小声で話し合う。
     そんな一方で周りはどんどんヒートアップしていく。その騒ぎに二人は、もう付き合ってられないとばかりに二体をつれその場を逃げ出した。
    「モチモチとしとるからもちでええんじゃないか……」
     逃げ出す最中にこう漏らしたのは南方だ。
    「おん、もうそれでええわ」
     こう見えて案外可愛い呼び名を提案するもんだなと内心思いつつも門倉が頷くとコイツらの呼び方はあっさりともちで決定する。
     なんとか逃げ切ったところで個体ごとにわかる名前もあった方がいいとの話になり、分かりやすく南方に似た方は南方もちを略してぽもち、門倉に似た方は門倉もちを略して門もちと呼ぶこととなった。

    「これがぽもちと門もちねぇ……」
     朝からの騒ぎが伝わったせいか二人はお屋形様の執務室へと呼び出されていた。応接スペースで面談のように向かい合い座らされなんとも言えない空気が流れている。間にあるテーブルの上にいる二体はこの空気を読む訳もなく相変わらずもちもちとくっついていた。時折ぽよぽよと跳ねるもち達をまじまじと見ているのは斑目貘、淡々と観察しているのは切間創一だ。
     兎に角コレが何なのか説明するように言われ、門倉と南方はそれぞれ朝からの出来事を軽く話しコイツが何なのか調べて欲しくて連れてきた旨を告げる。それを聞いたお屋形様達が相談を始めた。
    「どうする、ハル」
    「解剖したら分かるんじゃない?」
    「流石にそれは生きてるっぽいし厳しくない?」
    「ならMRIでも撮ればいい」
    「確かに」
     話を聞く限り賭郎として調べるのに協力してくれるようで、既にMRIの手配を始めている。他にもDNAなどは取れるのだろうかと黒い方のお屋形様が指でもちをつつく。
    「にしてもなんでこの二人なんだろうねぇ」
    「たしかに。もちの見た目が似てるってことは何かしら二人にも原因はあると思うけど」
     そうは言われても門倉に心当たりは全くない。あるならとっくに調べている。隣に座る南方も同じようで首を傾げていた。
    「まぁこっちで調べれそうなことは手配しとくからその二匹の世話はよろしく。あと生態とか調べといて」
     心当たりがなさそうな二人を見た斑目がこれ以上聞きたいことはないのかもういいよと退出の許可を出す。原因が自分たちにあるとの言葉にいまいち釈然としないまま二人は部屋を出ると言われた通りまずは生態を調べてみることにした。

     生態を調べると言っても出来ることはさほどなく、とりあえずはもち共の観察をすることにする。二体をテーブルの上に置くとぽよぽよと跳ねて何やら交流していることは分かる。時折話すような声が聞こえるも意味があるのかどうかは全く分からない。
     あとは習性としてそういう質なのかくっつく様子もよくみられる。ただ今回はよくよく見ると門もちがぽもちの頬を食んでいるようでぽもちが逃げきれず震えていた。
    「あ、なにしとんじゃ」
    「ゆっ!」
     南方がすかさずぽもちを門もちから引き離す。それに対して文句を言うように門もちが声を上げた。不服だと全身で表すかのようにびたんびたんと跳ねている。
    「こいつら共食いすんのか?」
    「いや食われてはおらんようじゃ」
     南方に見せられたぽもちの頬はなんともない。食む力が弱かったのか皮が厚いのか血が流れてないのか赤くすらなっていない。やはり謎の生き物だと思いながらもぽもちをつつけば門もちがいっそう不満げにびたびたと主張する。
    「すまん、ほら返すけぇ」
    「何勝手に……!」
     南方の手からぽもちを奪い門もちの隣に置いてやると門もちは満足気に跳ねて早速ぽもちに擦りついている。そんな様子を見ながら南方が思わず言葉を漏らす。
    「門倉そっくりじゃのう」
     南方曰くこの自己主張の激しさが門倉と似ているらしい。そんなことはないと言い返したくも、我が強くないとやって行けない立会人業を考えればあながち間違いとも言えず論点をすげ替えることにする。
    「そっちもよう似とるわ、ワシに勝てんとことか」
    「?なんやって?」
    「事実じゃろ」
    「確かに今はまだ勝てんけども……」
     悔しげに言う南方につい門倉は笑ってしまう。今は勝てずともいつかは勝つ気でいる南方のそういう所を門倉は割と気に入っているのだ。
    「もちが互いに似とるっちゅうことは、門倉はもしかしてわしのこと好きやったりするん?」
     ぽもちにべったりとくっついて離れない門もちを見て、今度は南方が反撃とばかりに問いかけてくる。予想外の問いかけに門倉の頭は一瞬思考を放棄した。なにか言い返さなくてはと門倉ももちに視線を移し、門もちにくっつかれてどこか満足気に見えるぽもちを見て言い返す。
    「は?ワシが?……そっちこそもちはくっつかれて満更でも無さそうじゃしワシのこと好きなんじゃろ?」
    「んなわけないやろ、そりゃ門倉に男として惚れとるもこもあるけど大体男同士やし」
    「そうじゃよな、ワシも南方のこと結構好きじゃけど男同士やし」
     南方の言葉に即座に言い返すもどうも混乱しているのか本音が出てしまったことに気づいていない。それでも惚れてる……?好き……?と互いの言葉を反芻するうちに漸く自らが失言を漏らしたことに気付いた。嘘だよなと南方の方を見れば相手もどうやら同じだったようで縋るような目と合う。
    「「……まじかー」」
     もちのせいで自分の気持ちを自覚すると同時に暴露する羽目になった二人はその場にただただしゃがみこむ事しか出来なかった。
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