第26回 薬 ラーヒュン1dr1wr この体が治ることはないでしょう。
汗だくになってベッドに眠るヒュンケルを前に、そう告げてきたのは医者でも占い師でもなく、やっとの想いで自宅に呼び寄せた癒やしの精霊たちだった。
ラーハルトは怒りや苛立ちを通り越して、疑いを抱いた。
「貴様らは本当に回復を司る者なのか? 貴様らはホイミやベホマそのものではないのか?」
そうです。ですからその人、ベホマ効かないでしょ?
精霊は緑の光を放って暗い部屋をくるくると飛び回った。
もう用はないと、ラーハルトは床にチョークで描いた魔方陣を足で擦って崩した。緑の光は消えた。
駆けずり回って方法を探し当て、息せき切って愛しい恋人との住まいに戻り、期待を胸に儀式の準備をして、結果がこれだ。深い夜の闇に沈んだ室内に、はあはあと苦しげなヒュンケルの吐息だけが続いていた。
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