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    shinmai88

    鯉月・🌙メインCP無しを書/描く予定です

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    shinmai88

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    鯉月。現パロリーマン。とても短い話。
    全年齢。とある一コマ
    某WEBイベントの再掲です。

    #鯉月
    Koito/Tsukishima

    鯉月 柔らかな朝日の光が差し込み、月島の瞼が開く。柔らかな布団。広々としたベッド。自分の語彙ではとっさに出てこないが、とにかく高級そうな寝具にくるまれている身体。未だ微熱でぼうっとする頭。

     いつの間にか眠り込んでいたのか。ここが何処なのか、どうして此処に居るのか、どうも前後がはっきりしない。額に違和感を覚えて手を当てると、冷却シートのような感触があった。どうやら、この部屋の主にここまで運ばれて介抱されていたらしい。

     そのままぼんやりと見渡すと、覚えのないやけに広い白く整った部屋が視界に映る。何だか妙に既知の〝誰か〟を思い起こさせる部屋ではあるが、まだ微熱でぼんやりした頭では今一つ浮かんでこない。

     そう言えば、この部屋の主は何処に居るのだろうか。一先ず礼を言わなければ。そう思い至ったところで、ふと、ドアの隙間から食欲をそそるいい匂いが月島の鼻孔を擽った。そのままノブをそっと回そうとした途端、いきなり向こうからドアが勢いよく開いた。

    「月島! 起きたのか」
    「鯉登さん、でしたか」

     当の本人が目の前に現れて、見慣れない白く広い部屋の持ち主と繋がった。社外では、おそらくプライベートでは初めて見る上司の姿だった。この様子だと、何かしらやらかして上司の世話になったかと思われる。しかしまだ頭がぼんやりして前後が思い出せない。

    「すみません。すっかりご厄介になったようで……」

     取り急ぎ詫びを言う。昨晩何があったのか、どう言葉を続ければいいか。やや間を置いていると、鯉登の方から声が掛かった。

    「気分はどうだ? どこか痛むところは無いか? 何か口にするか?」

     そう言えば、昨日から何も食べてないなとぼんやりと思い出した。一瞬、逡巡したが、
    「……俺、いや私は何かやらかしたのでしょうか?」
     それには答えず、鯉登は手を伸ばし、月島の額にそっと掌を置いた。
    「!」

     暖かい、上司の、鯉登さんの手。褐色の、長く揃った指。汗ばんでいた月島の白い額にひたりと沿う。

    「熱は下がったようだな」

     そっと、掌が離れた。
     と思ったら「ちょっと剥がすぞ」と声がかかり、額に貼られたジェルのシートがゆっくりと剥がされる。どうやら発熱をしていたらしい。

    「……はい……有難うございます」

     額に触れた指先の優しさ、温かさが名残惜しい。……名残惜しいのか?

    「水は飲めるな?」

     グラスに注がれていた水。グラスも何だか高級そうだ。普段ペットボトルを直飲みする月島から見れば、相当丁寧な暮らしに見えた。鯉登の手からグラスを受け取ろうとすると、グラスは手から避けられ、月島の小さな口に当てられた。

     自分で飲めます。
     そう言おうとしたが、グラスの淵が唇に当たり上手く言葉にならない。

    「遠慮するな! まだ顔色が青いぞ。私が飲ませてやろう。ちょっと口を開けてみろ」
     
     軽くグラスが下唇に当てられる。言われるがままに唇が開かれる。
     いつの間にか鯉登の左の掌は月島の後頭部に触れ、支えられる形になっている。右手には水の入ったグラス。
     傾けられたグラスから水が注がれ、月島の口内を、喉を潤していった。

     鯉登さん手ずから、水を飲ませてもらった。
     さっきは額に手を当てられ熱を見てもらったり。
     そもそも、自室と思われる場所まで運んでもらい、看病されたのではないか? 世話になりっぱなしではないか?
     まだ状況が呑み込めない。目を開ける前の記憶が無い。仕事は? 休みか? 聞くべきことはあるはずだが、なんなのだこれは…!

    当の上司である鯉登は、普段の社内で見る顔よりも幾分和らいで見えた。


    20231020
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