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    ジュン

    正良が好き。思いつきを載せる。

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    ジュン

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    泡になって消える

    るーららーりらるらー

    海面に上がって顔を出し、夜の風に当たるのが気持ちいい。そうするといい気分になって歌を歌いたくなる。人魚の歌声は波を穏やかにするから、夜風に乗っていつか彼女にも届いたら嬉しい。
    俺が見つめる先にあるのは月ではなく、高台にあるニンゲンの城。その窓辺から淡く漏れる光が愛おしくて好きだ。星よりも美しいと感じてしまう。それは、優しい彼女が暮らす場所だから。
    彼女は、幼い俺を助けてくれた。漁の網に掛かって泣いていた俺を「大丈夫?」と声を掛けて、傷つかないように網を避けてくれたのだ。

    「あなた、もしかして人魚なの?」

    そう言った瞳がキラキラ美しくて、たぶん一目惚れだったと思う。彼女はニッコリ笑って「また会いましょうね」と手を振ってくれた。
    それ以来、俺は家族の目を盗んでこの沖へこっそり来ている。毎日来られるわけじゃないから、あの子と会えたことはまだない。でも、また話しがしたいという気持ちだけでもう何年もここで彼女を待っている。
    ヒトは怖い。不老不死を願い俺たちを食う風習があるときく。見目が美しいと髪や鱗を剥いで装飾品にされてしまう、なんて話しも噂できいたことがある。だから、ここへ来るのはヒトに見つかりにくい時間帯である夜だった。
    女の子がこんな時間に海へ来ることなんてない。
    心のどこかでは分かっていた。
    ヒトの習性はよくわからないけど、人魚もヒトも伴侶を持ち子を成し群れで育てるのなら、きっと闇の中ひとりココへはやって来ない。ヒトは海で呼吸をできないから波にさらわれては危険だ。
    だからこれは不毛な日課なのである。俺はあの子の名前も好きな食べ物も何も知らない。そんなやつが奴が女々しく此処で彼女が住んでいるであろう城を眺め思い更けて、何になるのだろう。たかたが一度会っただけの人魚をかの彼女はもう覚えていないかも知らないのに。それにあとから来た俺は彼女からすれば
    俺は今年で14才。来年晴れて大人の仲間入りをする。そうなったらもう此処には来られない。


    ねむ、ここまで
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