布団からはみ出た肩から首にかけてのラインが綺麗で、穏やかに眠っているのを良いことに遠慮なく彼のことを見つめた。二人きりの夜を過ごして朝を迎えても、この可愛らしい人を知っているのは自分だけじゃないということも分かっていて幸せに浸りきれなかった。せっかく彼が私だけに時間をくれているのだから、バカになってしまえばいいのに。
昨日つけたアトはすぐに消えてしまいそうなほど薄くて、もうすこしだけ彼を独り占めしたかったから、もう一度、同じところに唇を寄せた。
「んっ、……すは……?」
「ああ、おはよう浮奇。起こしちゃった? ごめんね」
「ううん、いいけど、……キスマーク、またつけてくれたの?」
「痛くなかった?」
「気持ちいいよ。嬉しい、もっとスハのものって教えて」
「……浮奇は、私のこと、好き?」
「大好きだよ。え、うそ、知らなかったの? 大好きだよ、スハのことが一番好き」
「一番、かな」
「……スハ」
起き上がった浮奇は裸のまま私のことを抱きしめた。後頭部を優しく撫でられ、彼の首筋に顔を埋める。私の部屋の香りと、浮奇自身の香りが混ざって、世界で一番好きな香りになる。
「スハは優しすぎるよ。もっと自分の好きにしていいんだよ。俺の愛が足りなかったら、そう言って? 俺の全部をあげるから」
「……今日、何時に帰る?」
「泊まっていいの?」
「いい、けど、でも」
「うん、なぁに」
「……浮奇は、優しいから」
「それ、スハが言うの? 俺は優しくないよ。自分に得がなければ動かないワガママな人間だもん」
「そんなことない、浮奇はすごく素敵な人だよ、いつも優しいし」
「スハだからだよ? スハが優しいから、俺もスハに優しくしたいって思う。スハのこと大好きだから、好きになってほしくて優しいフリをしてる。だから、優しいとかそんな言葉じゃなくて、スハに好きって言ってほしい。……こんな俺じゃ嫌いになる?」
「そんなわけない! 大好きだよ、浮奇のことが大好き、一番」
「えへへ、やった。嬉しい」
へにゃっと可愛く笑う浮奇の背中に手を回してぎゅっと抱き締めた。浮奇の心の中が見えればいいのにな、今だけは私でいっぱいに満たして、私のことだけを考えていて。いつでも浮奇のことでいっぱいの私の心も見せるから。