「大丈夫?」というメッセージはツイッターのリプでもグループのチャットでもなく、俺個人宛に送られてきたものだった。頭の中で彼の声が再生されて堪らなくなる。
深く考える前に通話ボタンをタップしスマホを耳に押し当てた。コール音を聞いているうちに、向こうは何時だろうとか急に電話したら迷惑かなとか思いついて少しだけ後悔。でも、だって、声が聞きたい。
『もしもし?』
「あ……おはよう、シュウ」
『ん、おはよう。調子はどう?』
「んん……ちょっとだめかも……熱があるみたいで」
『ちゃんと暖かくしてる? 無理しないでしっかり休んでね』
「ん、おーけー……。シュウの声、落ち着くなぁ」
『そう? ふふ、ルカの声も今日はふにゃふにゃしてていい感じ』
「それいい感じなの?」
『いつもより可愛く聞こえる。体調悪い時って誰かに甘えたくなるでしょ、だからかも。そばにいたら頭を撫でてあげられるのになぁ』
「……今撫でてもらった気分だ」
『え? なんで?』
「ふへへ、ないしょ。電話出てくれてありがと、シュウ。もう寝るね」
『うん……? 電話くらいいつしてきてもいいから、遠慮しないで』
「はぁい。シュウ、もしかして本当はこれから寝るところだった?」
『あー……うん、そうだよ。夜更かしだって怒らないで』
「今日はシュウと電話できて嬉しいから気にしないでおくよ。それで、さ、今から寝たら夢の中でも会えるかもしれないから、シュウももうベッドに入って」
『……わか、った』
「それじゃあまた後で、おやすみシュウ」
『おやすみ……』
チュッと鳴らしたリップ音がいつもよりうんと甘く響いてすこしだけ照れちゃった。笑い声で誤魔化した俺の耳に、ギリギリ届いた小さなリップ音。シュウがキスのお返しをくれたんだって目を見開いた時には通話は切れていた。