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    ArtemisSN0210

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    ArtemisSN0210

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    西南で教師パロです。
    モブ女子生徒(割と喋る)が登場します
    南先生は化学教師希望

    #西隼人
    hayatoNishi
    #南瞬
    namTrang
    #西南
    southwest

    ドライアイスセンセーション【西南】「ねえ、南先生~」

    「何だい?」

    「何で隼人……センセってさ、南先生のこと下の名前で呼んでんの?」

    「ああ……幼なじみなんだよ、西先生とはね」

    「ふうん、そういうことだったんだ。……あっ、もう一つ聞いていい?」

    「おや、今度は何かな?」

    「南先生のこともさ、下の名前で呼んでいい?」

    女子生徒がそう聞いた瞬間、瞬の目付きが変わった。その迫力に、女子生徒は思わず小さく悲鳴を上げる。

    「……ごめんね。ボク、下の名前で呼ばれるのがあまり好きじゃないんだ。だから、呼び方はそのままにしてくれると嬉しいな」

    笑顔を浮かべてはいるものの、浅緑色の瞳はまったく笑っていなかった。

    「わ……分かった。ごめんね、変なこと聞いて」

    女子生徒の声は震えている。

    「分かってくれればいいんだよ。まあ、そういうわけだから……もしもキミのお友達が似たようなことを言い出したら、止めてくれると助かるよ」

    「……う、うん」

    「ありがとう。キミは物わかりが良いね」

    そう言って微笑んだ瞬の目には、もう鋭い光は宿っていなかった。

    ■□□
    昼休み。
    隼人は化学準備室に向かっていた。

    幼なじみであり同僚である瞬にこうして呼び出されるのは、さほど珍しいことではない。デスクに付箋が貼り付けられていたり、引き出しを開けたらメモが入っていたりと、瞬はいつもまるで隼人の行動を読んでいるかのような位置に伝言を残していく。人生の半分以上を共に過ごしているので、この程度のことはお見通しなのだろう。
    瞬は基本的に、職場である学校で隼人と仕事以外での話はしない。そんな瞬が自分を呼び出す時は、決まって「何か」があった時だ。

    さて、今日は一体何があったのだろうか。そんなことを考えながら歩いているうちに、気付けば隼人の足は目的の場所に辿り着いていた。
    ノックを3回。「瞬、オレだ」と声をかけると、「入って良いよ」と聞き慣れた声が返ってきた。扉を開ける。俯かせていた顔を上げた瞬の瞳は、暗く澱んでいた。

    隼人が後ろ手に閉じた扉が閉まりきらないうちに、唇に柔らかなものが触れる。瞬の唇が離れてから数秒経って、隼人は口を開いた。

    「今日はどうしたんだ、瞬?」

    瞬の手が伸び、隼人の服の裾をきゅっと掴む。何かを訴えたい時の、瞬の昔からの癖だ。

    「……名前を」

    伏せていた目を上げ、瞬は言葉を続ける。

    「ボクの名前……呼んでよ、隼人」

    その声は、ひどく震えていた。

    「瞬」

    優しく名前を呼ぶと、隼人はそっと瞬の頭を撫でる。

    「……もう一回」

    「瞬。……もっと呼んだ方が良いか?」

    隼人が尋ねると、瞬は隼人に抱き着いた。

    「……もう一回だけ」

    「分かった。……瞬」

    何度か深く呼吸をした瞬は、しばらくして隼人の背に回していた腕をそっと解く。

    「……ありがとう。おかげで落ち着いたよ」

    「そうか。それなら良かった」

    「……ねえ、隼人」

    隼人の唇が紡ごうとした言葉を、瞬のそれが素早く奪った。

    「……この場所で、ボク以外に『隼人』なんて呼ばせないでよ。知らない奴の声でキミの名前が呼ばれるのを聞く度……苛々して気が狂いそうになる」

    隼人に向けられた瞳には、暗い光が宿っている。

    「それは……すまない、オレもなるべく注意するようにはしているんだが……」

    「嫌なんだよ……隼人が、ボク以外のものになったみたいで」

    「大丈夫だ。オレは、誰のものにもならないから」

    「……だったら、ボク以外の人間に愛想振りまいたりなんてしないでよ」

    「っ、それは……」

    言葉に詰まる隼人を見て、瞬は寂しげに笑った。

    「……分かってる。キミにはそういうつもりはないんでしょ?キミはただ、多くの人と仲良くしたいだけ。それは多分、責められるようなことじゃない」

    「瞬……」

    「……ごめん。重いよね、こういうの」

    「重くなんてない。むしろ、お前に嫌な思いをさせるようなことをしてしまったんだから、オレの方が謝らなくてはいけないくらいだ。……すまないな、不安にさせてしまって」

    「隼人……」

    「これからは、なるべくお前を不安にさせないようにする。生徒にも、ちゃんと『西先生』って呼ばせるようにするから」

    「……うん。ありがとう」

    瞬はそう言って微笑む。その笑顔は、隼人のよく知るものに戻っていた。

    ■□□
    扉を閉めた瞬間、隼人は口元を緩めた。

    瞬が不安を露わにした時、自分は笑っていなかっただろうか。洞察力のある瞬は、自分の本心を見抜いていなかっただろうか。早鐘を打つ心臓とは裏腹に、隼人の吊りあがった口角は中々降りてくる気配がない。

    基本的に人当たりの良い瞬だが、それは上辺だけであり、他人に興味を示すことはほとんどない。幼なじみである隼人は、そのことをよく知っている。
    だからこそ、そんな瞬が自分に対して異常なまでの執着を見せる度に、隼人はこの上ない愉悦を感じるのだ。瞬が興味を示すのは、自分だけ。瞬が「自分から」触れるのも、瞬に触れることを許されているのも、この世界でただ一人、自分だけなのだから。

    とはいえ、今回はさすがに少しやりすぎたかもしれない。まさか、瞬があそこまで嫉妬を露わにするとは思わなかった。気が狂ってしまいそうなほどの嫉妬に駆られる瞬の姿は愛おしく思えたが、隼人とて必要以上に瞬を不安にさせるのは本意ではない。これ以上瞬を苦しめてしまわないように、周りの人間との付き合い方も考えなければ。

    安心してくれ、瞬。
    オレだって、お前以外の人間なんて最初(はな)から眼中にないからな。

    隼人がゆっくりと息を吐き出した瞬間、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
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