Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    rica_km

    @rica_km

    👹滅:💎🔥/🔥🧹中心リバ含雑食、時々作文。ねんどーる&オビツろいど歴2周年(ねん🔥兄弟持ち、💎×2)。かなり20↑成人済

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 16

    rica_km

    ☆quiet follow

    DK宇煉シリーズ:応援団長宇髄くんと剣道部員煉獄くん、第3話

    プロローグ・第1話・第2話はこちらから↓
    https://poipiku.com/5529112/8857201.html

    応援団長宇髄くんと剣道部員煉獄くん◆03◆03:校内合宿

     高校から徒歩五分ほどの場所には昔ながらの銭湯がある。
     夏休みのある日、宇髄はそこにいた。広々とした湯船に浸かりながら脱衣場の方にある時計を見遣る。そろそろだよなと思った頃、男湯の脱衣場に小学生と思しき男子たちがはしゃぎながら雪崩れ込み、次いで中学生男子たちがゾロゾロとやってくる。
     来るぞ来るぞと心待ちにしていた宇髄は、男湯の暖簾をくぐって現れた煉獄に湯船から大きく手を振った。


     八月の盆を過ぎた頃、剣道部は今月後半の秋季大会に向けて二泊三日の校内合宿を行うのが恒例だ。三年生はインターハイ後のこの夏に引退し、この合宿から現二年生が中心のイベントになる。
     応援団結成直後の一年の夏、志願すれば剣道部のサポートとして自分も合宿に参加できると宇髄は思い込んでいた。しかし現実は甘くない。
     まず応援団を同好会として承認する職員会議は二学期に行われる予定で、応援団はすでに高校野球地方予選の応援席でデビューを果たしているというのに、書類上は無認可団体である。ゆえに夏休み中の活動は基本的に禁止だ。(余談になるが、野球部の応援については例年一般生徒の応援・現地観戦も推奨されていることと、野球部父兄と顧問・吹奏楽部の顧問と部員など参加人数(および、大人の監視)が多いために応援団の活動についても黙認されていた)
     そして剣道部にも剣道会にも所属していない宇髄は部外者のため、剣道部校内合宿への参加は認められない。
     しかし宇髄は諦めなかった。部活という名目が使えないのなら、合同参加する剣道会経由で近づく作戦を決行した。
     剣道会は地域の青少年健全育成のための団体で、週に三回この高校の剣道場を使用して稽古を行なっている。下は小学生から剣道歴数十年の高段者まで所属していて、この地域の剣道経験者はほとんどこの剣道会の出身なのだそうだ。もちろん煉獄もこの会に在籍している。
     地域の青少年のためなので、見学や参加も随時可能。それを利用して、宇髄はちょくちょく練習を覗きに行くことにした。そうして保護者たちとも顔見知りになり、「あの(眉目秀麗にして質実剛健、剛毅果断で勇猛果敢な)煉獄くんのお友達」という認識が広がればあとは容易い。手伝いをちょっとしただけでも株は爆上がりだ。何しろ宇髄といえば「気は優しくて力持ち、長身にして容姿端麗なイケメン男子」である。保護者会の覚えも非常に良い。
     そこで手に入れた最初のアイテムは、合宿スケジュールだった。


    「——で、風呂は銭湯使うってスケジュールに書いてあったから、先回りして待ってたってわけ」
     来るのが遅いから全身洗い終わっちゃったけどなと言えば、煉獄は定刻通りだぞと片眉を上げた。
    「きみ、ちょっと暇を持て余しすぎじゃないのか」
     そもそも合宿スケジュールくらい、見たければおれに言えば見せるのにと煉獄が言う。むしろそれは絶対断られると思っていた宇髄は、煉獄が宇髄も合宿にくることを心待ちにしていたのかと胸が熱くなった。頭も熱い。煉獄が来る三十分前から風呂に入っているのだ、そろそろのぼせても不思議ではない。
    「湯あたりしてしまうぞ」
    「ん。ちょっと冷ましてくる……。風呂の後、レクやるんでしょ。あれの手伝いするって言ってあるから、一緒に行こ」
    「宇髄は本当にマメだな!」
     煉獄は感心とも呆れともつかない調子で言うと、宇髄へ早く上がれとせっつく。本当は背中の洗いっこをしたり、煉獄のシャンプーを借りて同じ匂いを楽しんだりというお風呂充実プランもあったのに……と思いながら、ふらふらと湯船を出た。
     脱衣場にある扇風機の前に陣取れば、早々に上がった小学生チームがこの後のレクリエーションである保護者会主催の花火大会の話に沸いている。その花火の買い出しは宇髄も手伝ってきたところだ。小学生は花火までで帰宅。合宿は中高生のみで行われる。もちろん部外者の宇髄も花火の手伝いまでだ。
     この夏らしい最後の思い出になるかもしれないのに、のぼせてぐったりだなんて全く格好がつかない。それでも濡れ髪に扇風機の風が通ったせいか、徐々にスッキリとしてきたようだった。気分が悪いということもない。
     やがて煉獄も桶を片手に風呂から出てきて、宇髄が座る長椅子に腰掛けた。
    「気分はどうだ?」
    「ん。ありがと、大丈夫」
     そうかと言って、煉獄はシャンプーやボディスポンジが入った桶を差し出してきた。
    「これ、宇髄のだろう?」
     見覚えのあるタオルが入っていたからと言って、煉獄は宇髄の名前が記されているタオルをずるりと桶から引き出して見せた。部活関係で使うものは記名をしておかないと誰に使われるか分かったものじゃない。が、こういうラッキーもあるから名前は書くべきだ。
    「そうそう、置きっぱなしにしてて忘れてた。ありがとね」
    「——うん、きみのだなとわかったから、シャンプーを勝手に借りてしまった」
     用意していたつもりが忘れてしまったからと煉獄は申し訳なさげに眉を下げる。
    「全然いいよそんなの。明日も使うなら貸しといたげる」
     そう言ってシャンプーのボトルを差し出すと、煉獄はありがたいと言って顔を綻ばせた。
    「あっ。じゃあ今って結果的にお風呂充実プラン完遂じゃん!」
    「?」
     宇髄が発した謎のプラン名が煉獄に通じることなど当然ない。だが、宇髄は急激に上昇したテンションで煉獄の手首を掴んだ。
    「シャンプー貸したげるから、匂い嗅がせて」
    「酷い交換条件だな」
     ぐっと顔を近付けると、扇風機からの風のせいで風呂上がりの清潔な煉獄の匂いがもうほのかに届いてはいた。が、どうせ交換条件と言っているのだから、もうちょっとレートを引き上げてみる。
    「今の濡れ髪と、乾いてからと、あと朝イチ! ……と、練習後!」
    「四回も!? 暴利じゃないか」
    「じゃあ、今とー、花火の後とー、明日は背中洗いっこしよ」
     煉獄の目が細まる。ものすごく不服そうだ。
    「オーケー。じゃ、今だけに負けといたげる」
     不承不承といった様子でごく小さく頷いた煉獄の耳元へ、宇髄は遠慮なく鼻先を寄せた。
     冷静に考えれば、二人とも腰にタオルを一枚巻いただけの素っ裸だ。——それを言うなら、普段も服の下は素っ裸に違いないが、いやしかし、これは破壊力が違う。
     上がったばかりの湯の匂いには、シャンプーと石鹸の清潔な香りと煉獄の肌の匂いも混ざるのだろう。宇髄が普段使っているシャンプーの香りと少し印象が違う。温かみのある甘さがほんのりと乗って、艶やかで滑らかな肌に吸い付きたくなる。裸の胸が近づいただけで、肌が放つ熱気を感じるような気がした。掴んでいた手首から少し上に掌を滑らせると、非難がましい視線がチラリと宇髄の方を向く。だが、物言いは付かなかった。顔見知りがそこかしこにいるのだ、あまり騒ぎ立てたくはないのだろう。
     ごくりと生唾を飲み込んだ宇髄は、もう少し触れても叱られないんじゃないかと考えて、腕に触れていた手を煉獄の肩甲骨へと滑らせる。
    「もういいだろう、ちょっと調子に乗りすぎだ」
     煉獄が囁くほどの低い声で告げ、宇髄の胸を押しやった。——が、それは体格差ゆえの誤算か、煉獄の掌は宇髄の胸筋の位置にぴったりと触れていた。煉獄は自分から触ったくせに椅子から飛び退くほどその感触にびっくりしたらしい。
     一方の宇髄は、煉獄に身体を押しやられて逃げ出されてしまっただけだから、きょとん、だ。正直胸筋などぎゅうと押されただけでは気持ちがいいわけでもない。しかし、煉獄の動揺っぷりは見ものだった。イケナイコトをしてしまった羞恥に似た空気を醸し出している。率直に下っ腹へ物凄く効く表情だ。
    「あれ? ……なんか、ラッキースケベみたいな感じになった?」
    「知らん」
     宇髄と目を合わせることなく、煉獄はさっさと着替えのためにロッカーへと向かってしまう。
     置いてけぼりを食らった宇髄は、煉獄の背へ触れた自分の掌へ視線を落とす。そしてそれを、煉獄の手が触れた自分の胸へと重ねてみた。
    「ひと夏の経験ってカンジ……?」
     少し頑張ればときめくこともできそうなのだが、いかんせんここでは小学生が花火を待ち望んで賑わう声も高く、ロマンチックに浸り切ることは出来なさそうだった。


     かような経緯の後。
     その銭湯から全員が合宿先の学校へと戻り、校庭へと集合した。
     宇髄は、各年齢を均等に分けた五チームへ水の入ったバケツを用意しては運び、花火を配った。花火大会といっても、打ち上げるものはなく、全て手持ち花火である。それでも花火が許可される場所も少ない子供たちには貴重な経験らしく、大はしゃぎだ。
     剣道会の父兄も和やかムードで、会報用なのかたくさんの写真を撮っている人もいる。よく冷えた小さな缶ジュースとスイカもあるとなれば、もう祭りかパーティの様相だ。ここが校庭だということも忘れてしまいそうになる。
     煉獄は当然合宿組の五チームのひとつに入っている。小学生と中学生の後輩へ花火を振り分けてやりながら、鮮やかな色の花火に火をつけた。風が強いわけではないが、校庭は遮るものがなさすぎて蝋燭の火がすぐに消えてしまうらしい。煉獄は自分の花火で子供たちが新しく取った花火へと火を移してやっている。いいお兄ちゃんっぷりに思わず目が細まる。
    「宇髄君も花火参加してらっしゃいよ」
     父兄と共になんとなく皆の様子を眺めていた宇髄に、保護者会の人が声を掛けた。
    「俺は大丈夫です。スイカ配る準備しちゃいましょっか!」
     ちょっと煉獄を怒らせてしまったし、ほとぼりが冷めるまでちょっかいを掛けない方が良いだろう。宇髄は自分が調子に乗りやすいことは熟知しているが、人間関係に於いて致命的なエラーも出さない方である自負はある。こういう時に、あまり真剣に謝りすぎるのも結果的に気を遣わせることになってしまう。こういう時こそ平常心で、自分のなすべきことに集中する方がいい。
     切ってもらったスイカを縁台に並べ、皮を入れる大きなゴミ袋も用意する。花火が品切れになったチームへスイカと缶ジュースを勧めてやれば、そのチームは自然とおしゃべりタイムに突入していく。
     夏休みの思い出作りに貢献しているという充実感が湧いてくるのどかな光景だ。
    「宇髄」
     呼ばれて振り向くと、煉獄がしゅわしゅわと色が変化してゆく花火を手元に掲げたまま、宇髄にも花火を差し出してくる。
    「一緒にやろう」
    「ん。ありがと」
     受け取って、煉獄の花火へとくっつけて火を貰い受ける。なんか間接キスみたいじゃない、これ? と言いたい気持ちは仕舞っておく。余計なことは言わない方がきっといい。
     宇髄の花火はぱちぱちと弾けて、舞い散るように華やかだ。明るい火花が照らし出す煉獄の瞳が輝いて見えて、とてもきれいだった。夏の思い出ってこういうのかもしれない。宇髄はチラリと煉獄の横顔を盗み見て思う。
    「宇髄。さっきは突き飛ばしたりして済まなかった」
    「ううん。俺がちょっと調子に乗りすぎたから」
    「そう。元はと言えばきみが変なことを言い出すからだ」
     と、煉獄は肩で宇髄をとんと押しやってくる。
    「その元は、煉獄が俺のシャンプーを使ったからですぅ」
     と、宇髄も押し返せば、煉獄も負けじと受けて立ち、声を立てて笑う。
    「風呂場に丸ごと忘れていくきみが悪いぞ」
     言い合いながら二人で右に左に揺れて、花火もキラキラと左右に揺れる。思い出もいいけれど、思い出のために生きてるわけじゃない。こうやって煉獄と笑顔で過ごせる一瞬一瞬がたまらなく貴重だ。
    「煉獄くん、会報用の写真撮っていい?」
     カメラを持った父兄から声が掛かり、煉獄ははいと大きな声で応じる。煉獄が呼ばれたのだからと離れようとすると、即座に煉獄に腕を引かれた。
    「え、でも剣道会の会報でしょ」
    「だってきみ、顔出しNGというわけじゃないだろ?」
    「そりゃ別にいいけど」
     ごちゃごちゃと言っているうちに、カメラマンからもう少し二人の距離を詰めるように言われる。花火を持ったまま、宇髄はなんとなくこそばゆい気分でカメラの方を向く。
     もうほとぼりも冷めたかなと、少しばかり緊張しつつも煉獄の肩へ手を置いてみる。大丈夫そうだ。
     さっきも言ったように、もちろん思い出のために生きているわけじゃない。でも、特別仲が良いという既成事実とその証拠写真はあってもいいんじゃないかと宇髄は思う。他人を巻き込んで外堀から埋めていくパターンは得意な方だ。
    「撮るよー」
     カメラマンの声に笑顔を作り、さりげなく花火をハート型に振りながら写ってやった。仕上がりが楽しみだ!


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺🎇🎇🎇🎇🎎👯📷😙😻🎇🎇🎇🎇🎇🎇🎇🎇🎇🎇☺💘💕🎆🎆🎆🎆🎆🎆🎆🎆💕🎇🎇🎇☺☺☺☺☺☺☺💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    rica_km

    PROGRESS宇煉・天桃前提の💎🏅です
    💎🏅・🔥🍑は、どちらも従兄弟関係(年齢設定とか詳細は齟齬が出そうなのでw、ふんわりで…)
    🏅19歳(大学生・成人)・🍑16歳(高校生)の3歳差。両思いながら🍑が未成年の上、🏅が注目を浴び易い状況であることから色々堪えているところ
    💎🔥はいずれも社会人で恋人同士
    💎が一人暮らししている部屋へ🏅は泊まりに来るほど懐いているし、秘密も共有している…
    ひみつとつみひとつ◆01◆01 Tengen side
     俺のマンションには、従兄弟の天満が時々泊まりに来る。いや。時々よりは、もう少し頻繁に。
     立地が便利だからというのは理由のうちほんの一部に過ぎない。
     天満は抜きん出た才のせいで少々注目され過ぎているもので、自宅近辺には大抵マスコミ関係の誰かしらが潜んでいるらしかった。横柄だの生意気だの好き放題に言われやすい天満だが、あれで結構繊細なところもあるのだ。注目の体操選手として世間の注目を浴びるのも無理からぬことだが、衆目に晒され続けて疲弊するメンタルが有名税とは到底思えない。フィジカルにだって影響を及ぼすことくらい想像に難くないはずなのに、それでも世間様は若干十九歳の青年を好奇心の赴くままに追い回して好き放題に書き立てる。
    3041