無題「真珠が可愛すぎて辛い」
夜光は休憩室のテーブルに肩肘をつき、深刻そうな顔をしてそう言った。そんなことを聞かされた玻璃はあぁまた始まったぞとため息をつく。
「またその話ですか。そろそろ耳にタコが出来そうだ」
「いやもう何なんだよあの笑顔。推すしかない」
「無視しないで貰えますか?」
玻璃は抗議の声を挙げるが夜光は止まらない。会社での業務に加えスターレスのオーナー代理兼パフォーマーなんて立場になってからはずっとこうなのだ。
「表現力高すぎるしパフォーマンスだって最高。あれ? もしかして天使ですか? と思ってんのにスタッフとして会いに来てくれた時はめちゃくちゃ気さくで愛想いいしやっぱ天使だな。付き合いたい。いや付き合ってるな」
「はぁ」
「そもそも初めて会った時から目を奪われてたんだよな。存在が太陽すぎて。色々あったけどやっぱあいつが最高」
「そうですか」
この話は何回聞いただろうか。五回を超えてから数えるのをやめた気がするし、クソめんどくさいとはこういうことなのだなと玻璃はようやく理解出来た気がしていた。
「しかもさ! この前あいつに高級チョコやったんだよ。特に上等な。そしたら真珠のやつどんな反応したと思う? 味が理解できなくて首傾げた後に『おいしい!』だってさ! はぁもう可愛すぎるだろ養いたい」
「今の稼ぎなら養えそうですね」
ダブルワークできっと相当稼いでいる事だろう。ちなみにこんな話を聞いている間にも休憩時間は刻一刻と減っている。幸せそうな顔で語る夜光の反面、玻璃後半のシフトに差し障りそうなので早く終われと願うばかりだ。
「だよな! けど真珠がそんなの求めてるわけないしあいつはステージで輝くのが似合ってるんだ。この店を辞めてもあいつは一生俺のアイドル」
その目があまりにもガチ過ぎてちょっと怖かったのはここだけの秘密だ。