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    na2me84

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    na2me84

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    暁人くんに「そんなの今更だよ」と言わせてみた。
    けのさんにお題の台詞を頂きました!ありがとうございます!
    とりあえず甘口にしてみましたが、暇潰しにでもなれば幸いです。

    #K暁

    そんなの今更だよ 最初は多分、ただの憧れだった。今まで身近に、指針となるような大人の男性がいなかったから。早くに亡くした両親の代わりに妹を守ろうと、気を張っていた僕にとってあの時出会った彼は、まさに想い描いていた父親像そのものだった。
     正しく厳しさと優しさが混在する、理想の父親。時には親友のようにふざけあいながら、時には師のように導いてくれる、最高の相棒。
     彼に出会えたことはまさしく奇跡だった。

     無事に事件は片付いて、妹以外の人々が戻ってきて、何だかんだで、僕はまだ彼の側に居られている。調査の仕事を手伝ったり、彼のだらしない生活の質を上げるために、世話を焼いたり。そんな風に過ごすうちに、自分の中で、今まで経験したことの無い感情に気づいてしまった。

     

     KKは基本、誰に対しても無愛想だ。凛子さんや恵梨佳ちゃんに対してもそれは変わらない。怒ってる?とよく恵梨佳ちゃんに聞かれ、KKが違うと答えれば、ただ人相が悪いだけだ、よく犯人に間違われたんじゃないか?と凛子さんに揶揄されている。
     
     確かに彼は不機嫌そうに煙草を吹かしていることが多いが、僕が話しかければ、それが例えどんなに他愛ない話でもちゃんと聞いてくれて、悩みや相談には親身になって考えてくれる。あまり、人と打ち解けて話す事が無かった僕にとっては、何でも話せる相手というのはすごく貴重で、KKの事は特別だった。KKにとっても僕は、一つの体を共有しあった間柄だったからなのか、話しやすい相手のようで、あの夜に僕から言い出したように、お互いの家族の話とかもしていた。
     僕がする、取り留めのない家族の思い出話も、彼はただ聞いてくれていた。そして、たまにぽつりとKKの家族の話もしてくれた。息子さんの話も。
     
     最初はただ純粋に嬉しかった。話すのにおそらく、痛みが伴うだろう家族の話を僕にしてくれる、信頼の証のようなそれが素直に嬉しかった。でもそのうち、彼にそこまで想われ愛される家族が羨ましくなった。僕がもう二度と得ることの出来ないもの。それを当たり前のように享受し、独占している人達が。
    それと同時に、気づいてしまった。求めるものが父親の愛情であったのが、それが何時の間にかKKからの愛情に変化していることに。

     僕は嫉妬しているんだ。KKの家族に。別れてもなお、彼の心の中での大きな存在である妻と息子に。

     今までこんな風に、誰かに執着するような事は無かった。恋愛感情なんてものは、対岸の花火で、自分自身の内側にこんなにも熱量の高い感情が燻ることがあるなんて想像もしなかった。なんだろう、これが初恋だというのなら、それは言われている程、綺麗なものだとは思えなかった。
     意識してしまうと、もう駄目だった。KKの側に居られるのは嬉しい。でも、同時に苦しい。こちらから向ける愛情と、あちらから向けられる感情が噛み合わないのは。彼は僕に対して、恋愛感情は無いだろう。だって、僕たちは同性で、年齢差もありすぎる。たぶん、間違いなく対象外だ。少し冷静になろう。取り返しがつかなくなる前に。

     きっとこれは、何かの錯覚に違いない。そう、思い込もうとした。共に死線をくぐり抜けた吊り橋効果的な。あるいは、体を共有した後遺症的な。物理的な距離を取れば、気持ちも落ち着くかもしれない。
     だから、KKとの接触を減らそうとした。冷静さを取り戻して、また相棒として彼の隣に居られるように。

     
     
     それなのに、KKという男は無神経にも程がある。学業が忙しいから会えないといえば、近くまで来たからと大学前で出待ちする、体調が悪いと言えば、自宅まで様子を見に来る。もはや、わざとやってるのかと疑うほどだ。何なんだこれは。よく分からないが、父親というものは、こんなに息子を構うものなのか?KKの息子はまだ小さいようだから、その感覚なのかもしれないが。どうあっても距離を詰めてくる。色々と理由をつけて距離をとり続けるのも、疲れる。こっちだって、出来れば離れたくないのだから。もういい加減にして欲しい。

     
     その日も、どうしても手が足りないというKKに押しきられ、調査に手を貸した。予想通りというか、わんさか現れるマレビトを二人で片付け、アジトに戻ってくれば、誰もおらず二人きりで、気まずい事この上ない。なのにKKは上機嫌で、
    「やっぱりおまえは最高の相棒だよ、暁人。俺たち相性が良いよなぁ」
    なんて、僕の気持ちも知らず、さも楽しげに頭を撫でてくる。こっちはもうそれだけで嬉しくて、心臓が高速回転してるっていうのに。なんだか、無性に腹が立ってきた。
    「ちょっと、もう、子どもじゃないんだから。頭、撫でんなよ」
     出来るだけ不機嫌に聞こえるように言って、頭の上の手を掴んで下ろす。本当はこのまま離したくないと思いながら、邪険に振り払った。
    「なんだよ。最近、おまえ、冷てぇな」
     苦笑しながら、まるで小さい子の機嫌を取るように、アイスでも食うか?と聞いてくる。その言い方にこちらの苛立ちは募るばかりだ。

     もう、いいや。僕の中で何かが切れた。
    「ねぇ、KK」
    「おう、なんだ?アイスか?苺大福もあるぞ」
     KKは冷蔵庫に向かおうとする。今はアイスの気分なんかじゃないというのに。
    「僕、KKの事が好きなんだけど」
     その背中に、なるべく、重くならないような口調で告げる。KKの足が止まった。やや間があって、KKが振り向いた。
    「それは───恋愛的な意味でか?」
    「それ以外でわざわざこんな告白しないでしょ、普通」
     KKはくるりとこちらを向いて頭を掻きながら言う。
    「あー……一応確認するが、それは俺の事を父親だと思ってるからじゃないのか?ちょっと離れてみて、本当に恋愛感情なのかどうか、考え直してみなくていいのか?」
     一瞬、殺意が沸いた。どの口が言うんだよ。

    「なんだよ…それ、そんなの、今更だよ…」
     今まで何度もそうしようとした。KKから離れようと。その度に連れ戻して来たのは何処のどいつだ?おまえだろ。僕がどれ程悩んで、眠れない夜を過ごしたと思ってるんだ。やっと眠れても、夢にまで、KKが出てきたんだぞ。
     もう、手遅れなんだよ。
    「……最悪だよ…初めて本気で好きになった相手が、こんな無神経なおっさんだなんて…」
     泣きたくなってきた。床にへたりこんだ僕を見て、慌ててKKが駆け寄る。
    「もう、KKのせいで、ほんと、最悪…」
     俯いて呟いた。
    「俺が悪いのか…!?」
    「そうだよ!KKが悪い!」
     KKの困惑した声に怒鳴り返す。
    「だって、KKが……僕を、好きにさせるから…」

     少しの沈黙のあと、真上から声が聞こえた。
    「おまえ…なんでそんなに可愛いんだよ…」
    顔を上げると、片手で顔を覆っているKKが目に入った。
    「くそっ、信じらんねぇ、可愛いにも程があるだろ…」
    「KK…?」
     想定外の反応に下からおそるおそる声をかける。
     KKと目が合った瞬間、勢いよく抱き竦められた。膝をついた彼に床に押し倒されそうになって、必死で持ちこたえる。
    「ちょっ…!KK、危ないから…!」
     本能が警戒を告げる。このまま持ち込ませるわけにはいかない。KKの鳩尾に蹴りをいれて引き剥がし、何とか拘束から逃れる。
    「暁人…てめぇ…」
     KKは呻き声をだして、それでもなお、僕の腕を掴んでくる。
    「もう、落ち着いてよ」
     腕はそのまま掴ませておいて、自分からKKに身を寄せる。掴まれていない方の手で、彼の頬を撫でると、それがお気に召したのか、腕を離して僕の腰に手を回してきた。手にあたる無精髭の感触が面白くて、掌で遊んでいたら、その手を取られてキスされた。

    「俺はおまえのこと、息子のようには思ってねぇ。まぁ、最初の頃はそんな風に感じた事もあったが、最近じゃあ全くねぇな。暁人は暁人だ」
     床に座ったまま、KKの胸元に頭を預けて凭れ掛かる。彼の体に耳を当てていると、声の振動が直接伝わって、体の中から声が響いてくるような錯覚をおぼえる。
    「息子じゃないなら、KKにとって僕はなに?」
    「無二の相棒、ってだけじゃねぇな」
     眼を瞑ってKKの声に意識を集める。耳にも体にも心地よく響く声は、求める答えをくれるだろうか。
    「俺はおまえのことが好きだし、執着してる。誰にも渡したくねぇ」
     肩を抱かれて耳元で囁かれる。
    「おまえは俺のもんだ」
     安堵のあまり、体の力が抜けるのを感じた。無意識に握りしめていた手を開いて、KKを抱きしめる。

    「そういえば」
    と、頭にふと浮かんだ疑問をぶつけてみる。
    「KKも僕の事が好きなら、さっきは何で考え直せ、なんて言ったの?」
    「一応だ、一応。いざとなったら、やっぱり違いましたーって言われても、そうですか、って離してはやれないからな。ちゃんと確認しただろ?って押し切るためだ」
     しれっと怖いことを言っている。意外と策士だな、と暁人は思う。
    「おまえが傍にいないと不安になるんだよ。目を離したら、また無くしちまうんじゃないかって。俺はいつも大切なものを守れねぇからなぁ」
    「大丈夫、僕はずっとKKの傍にいるし、KKのこと守るよ」
     KKの顔を見つめて宣言すると、彼は一瞬固まり、すぐに今まで見た事の無い笑顔になった。
    「頼りにしてるぜ、暁人」
     大切な恋人からの返事は、この上なく暁人を満足させるものだった。
     
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