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    na2me84

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    お題 『日課』

    #K暁

     風呂上がりに濡れた髪から水を滴らせたまま、缶ビールのタブを開ける。炭酸が抜ける軽い破裂音と同時に、スマホがメッセージの着信を告げた。急かすように点滅するLEDを見ながら端末を手に取る。片手で操作しながら水滴をまとった缶から一口呷った。喉を通り抜ける炭酸の刺激が、1日の終わりを高らかに宣言するようだ。
    アプリを開いてメッセージを表示する。送信者は見ずとも分かる。
     
    [お疲れ様!今日も暑かったね、体調は大丈夫?]
     
    何やら可愛らしいスタンプと共に送られてくる、労いのメッセージ。俺にこんなものを寄越す奴は一人しかいない。

     [今度の休みには会えそう?]

     上目遣いの柴犬のスタンプと共に表示されるメッセージ。あざとい。可愛い。年若い恋人からの言葉に、だらしなく相好を崩すおっさん、それが未来の自分の姿とはあの夜には想像もしなかった。全く、現実とは予測不能なものだ。

     
     
     毎日、大体決まった時間に送られてくる定期連絡。その日にあった些細な出来事や食べた物、今日みたいな体調を気遣うものや出会った犬猫の写真──これは嫌がらせかもしれないが。
     俺が返事を返すことは稀だが、それでも懲りずに一日の終わりには必ず送ってくる。
    「まるで日課だな」
    俺が言うと、
    「日課っていうか、…日記代わり?」
    うーんと、首を傾げながら答える。
    「日記なら俺に送るんじゃなくて、ノートにでも書いてろよ」
    「それでもいいんだけど、まぁ、誰かに聞いてもらいたいって事あるじゃん?別に、返信とかはしなくていいからさ」
    そう言われたので、お言葉に甘えて特に返信はしないが、既読だけはつけている。安否確認も兼ねているのだろう。忙しさにかまけて未読放置したら、徹夜明けで寝ているところを叩き起こされた。貴重な睡眠を妨害されて文句を言うと、
    「KKが過労で突然死しないか、心配してるんだよ」
    そんなに心配なら一緒に住んでくれ。

     
     別に束縛したい訳じゃない。ただ、いつも手の届くところに居て欲しいだけだ。でも、あちらは学生、就活やら何やらと忙しい身で、生活サイクルの違う人間に合わせるのは難しいだろう。それが分かっているから、言い出した事は無い。でも、たまに泊まっていった翌日は、手放すのが心底、嫌になる。毎晩一緒に寝たいし、毎朝その声で言うおはようを聞きたい。
     年を取ると先が見えてくるせいか、貪欲になるようで、枯れて悟りがひらけるようになるには、まだ暫くかかりそうだ。それまでに、あいつに愛想を尽かされなければいいが。


     [明日は友達と飲み会なんだ]

     いつものように、送られてきた定時報告と写真を確認していると、昼間に食べたらしい机上一面の食い物の写真の次に、珍しい一言が続く。
     普段あまり、あいつからそういう付き合いの話を聞くことはない。まぁ、大学生なら本来はよくある事なのだろうが。

     [あんまり遅くなるなよ]
     
    分かってるよ、と短い返信とご機嫌な柴犬。若者らしく、青春を謳歌してるのは良いことだ。良いこと、なんだが。
    妙に落ち着かない。
    こんなおっさんの相手ばかりではなく、同年代との交流も必要だと理解してはいるが、如何せん、俺はまぁまぁ心の狭い男だから、恋人が飲みに行くとなると、色々と気を揉んでしまう。けどまぁ、あいつはしっかりしてるし、大丈夫だろう。無理やり自分を納得させて、この件は頭から追い出した。

     
     いつもならメッセージが来る時間になっても、スマホは沈黙したままだ。昨日、飲み会と言っていたから、当たり前なんだが。あいつがわざわざ昨日のうちに言っていたのに、心の何処かで来るのを期待していたようだ。全く、俺の方こそ、あいつから送られてくる日記を見るのが日課になっていたようだ。それが無いとこんなにも落ち着かないとは。
     こちらから何かメッセージを送ってやろうかとスマホを手に取って、止めた。今そんな事をしたら、くだらない嫌みばかりになりそうだ。大人の男としての矜持が踏みとどまらせる。駄目な大人の自覚はあるが、それでも恋人には少しでも格好いいと思っててもらいたいものだ。
     こういう時は、酒でも飲んでさっさと寝るに限る。3本目のビールを取りに、冷蔵庫を目指して腰を上げる事にした。


     浅い眠りが、電子音によって妨げられた。手探りで枕元のスマホを探す。アラームとは違うメロディー、電話の着信音だ。開きたがらない瞼をこじ開けながら、ようやく探り当てた端末の画面をタップし、耳に当てる。
     
    「KK?」
     未覚醒の耳に飛び込んでくる無遠慮な声。これがあいつの声でなければ、即切りしているところだ。
    「朝まで友達と飲んでて、今家に帰ってるところなんだけどさぁ、」
    酔いを含んだ、どこか浮わついた声音に苛立つ。酔っぱらいめ、今何時だと思ってやがる。窓の外は、薄明に追われてそろそろ夜が撤退しようかとしている頃合いだ。
    「そーかい、それで?」
    何の用だ?と不機嫌を隠せない無愛想な声で続けようとすると、
    「…なんか、KKの声が聞きたくなっちゃって」
    僅かな間を挟み、緩い口調で殺し文句を吐いた。

     寝てたよね、朝早くにごめん、と俺の機嫌の悪さに怖じ気づいたのか、早々に通話を切ろうとする暁人の声に被せるように尋ねる。
    「今、どこだ?」
    暁人が告げた場所を脳内の地図で検索する。
    「すぐに行くからそこで待ってろ」
    「え?いや、もう家に帰るから…」
    「帰るな。いいから待ってろ」
    困惑する気配が伝わってくる。俺の意図が掴めないのだろう。
    「KK、怒ってる?」
    常識外れの時間に電話したことを咎められると思ったのか、恐る恐るという感じで聞いてくる。
    「違う、そうじゃねぇ。俺が声だけじゃ満足出来ねぇんだ。いいからそこを動くな」
     時間が勿体無いと一方的に通話を打ちきり、其処らにある服を掴む。
    まだ、夜が明けたばかりだ。完全な朝になるまでは、あともう少しの猶予がある。例えほんの僅かな時間でもいい。あいつを側に置いて独占したい。
     どう切り出せば、あいつは俺と一緒に住んでくれるかは、道々で考えるとしよう。今は一瞬でも早く、あいつの顔を見たかった。

     [待ってるから、早く来て!]

     放り出した端末の通知欄にはそう表示されていた。
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    okusaredango

    MEMOフォロワーの雨映さんとお話してて話題にあがったK暁の猫パロのネタが湧いてきたのでとりあえずざっくりメモ。
    なんか、こんな感じの絵描きたい......
    本編後全員生存エンドで紆余曲折あってお付き合い後同棲を始めたK暁の世界線。K暁と猫2匹のほのぼの平和物語。
    以下思いついた設定↓

    KK→仕事(怪異退治)の帰りに怪我をした猫を発見。何となく既視感を覚えてお持ち帰り。そのまま飼うことに。我が子のように可愛がる。デレデレ。最近何処の馬の骨か分からない男(猫)連れてきてうちの娘(オス)はやりません状態。

    暁人君→同棲人がどこからか拾ってきた猫に戸惑いながらも懸命に看病するうちに愛着が湧いてそのまま飼うことに。デレデレ。自分と同じ名前なのでたまに自分が呼ばれたのかと思って反応してしまうのがちょっと恥ずかしい。

    猫1(あきと)→元野良猫。車と事故にあって右側(特に顔と腕)を負傷。倒れてるところをKKに保護されてそのまま飼われることに。怪我は治っているが後遺症で右目が少し見えずらくなっている。名前は模様が何となく嘗ての暁人君に似ているということでKKが勝手に暁人と読んでたら定着してしまった。通称あき君。飼い主大好き。最近野良猫と仲良くなって家に連れてきた。
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