「んんん……。すっっごく悩みますけど、こちらにしますっ!」
十数分の熟考の上、ティアラが手に取ったのは白地に金魚柄の浴衣だった。ところどころに広がる水色の波紋が涼しげなデザインで、その後に流れるように決めた朱色の帯やレモン色の帯留めとよく似合っていた。満面の笑顔で「決まりました!」とはしゃぐティアラから浴衣一式をステイルが受け取る。
裾が床に付かないように気を払いながらレジで三人分の会計を済ませた。プライドは黒地に白の百合柄の浴衣に深紅の帯、白黒の帯留めだ。ステイルは紺色の浴衣にねずみ色の帯でシンプルにまとめている。
「時間がかかってごめんなさい、お姉様、兄様」
「大丈夫よ、今日はこのために来たのだもの。あとは簪かしら?」
「はいっ! 専門のお店があるみたいなんです」
「ああ、さっき見かけたな。二人が疲れていないのでしたらこのまま回りきってしまいましょうか」
「そうね」
店員から一式を受け取って三人は店を出た。
〜ステイルが夜空に赤い花火モチーフのとんぼ玉の簪を選んで、プライド様が喜んでるところ〜
「この色、ちょうどステイルの瞳と髪の色だもの」
花火がプライドのようだったので、という言葉は干上がった舌ではどうしても言うことができなかった。