理銃NGシーン「今夜はもう遅い。泊まっていくか?」
「え、あ、いや……、帰り、ます」
「そうか。では下まで送っていこう。火の始末をする間、少し待っていてくれ」
おそらく、本能がこの場にとどまることを避けろと命じていた。
脳裏に飛来したのは取って喰われる恐怖ではなく、その真逆の取って喰いかねない恐怖だった。生まれてこの方異性以外に発情した覚えなどないが、今確かにこの胸の奥にある衝動は、危うい欲と紙一重の場所に居を構えているものだ。
断じて理鶯をどうこうしたいわけではない。
信じる神などいやしないが、神に誓ってそう言える。
ではこの衝動はなにかと問われれば、単に欲求不満が招いた誤作動だと銃兎は答えるつもりだった。もうここ数年恋人の存在はなく、自動的にキスをする相手もいないことになる。左馬刻のシマで情報屋まがいのことをしているママ(性別は男だが)に不意を突かれて強引に唇を奪われた苦い思い出はあるものの、あれはもはやただの事故だ。キスの内に入らない。
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