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    kotoluv15

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    kotoluv15

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    「恋とはいずれ必ず失われるものである」をテーマに見切り発車したら途中で「……なんか違うな」となって放置していた落書き理銃。
    この長さを一度で書ききれないとどうせ続き書かないだろうから供養。
    いつか同じテーマで再挑戦したいです。

    【理銃】


     恋とはいずれ、必ず失われるものである。
     まだ汗も引かぬベッドの上でそんなことを告げられて、銃兎は盛大に渋面を作った。ふわふわと雲の上に寝そべっていたような心地から、南極の海に急転直下だ。喉の奥から出た「はあ?」という声は、誰が聞いてもわかりやすく不機嫌でコーティングされているように思う。
     しかしそうなってしまっても、誰も責められないだろう話題だ。どう考えてもピロートークには相応しくない。たった今肌を合わせ、互いの身体が一つに溶けあうほど深く繋がって熱に浮かされたように好きだのなんだのと言い合ったその口で、言うに事を欠いて「恋は必ず失われる」だ。
    「……理鶯。まさかとは思いますが、ヤるだけヤってから別れ話をしようとしてます?」
    「まさか。だが、小官は事実を言ったまでだ」
     汗ばむ前髪を掻き分けられ、少し腫れたように感じる唇が額に触れてくる。熱を持った胸板に爪を立てると、理鶯は困ったように笑って銃兎の身体をやわらかく抱き締めてきた。
     鼻先に理鶯の匂いが香る。体温が上がって濃さを増した、少し甘い雄の匂いだ。
     別れ話ではないと聞いて確かにほっとした自分を自覚して、銃兎は小さく舌を打った。理鶯とこういう間柄になって以来、いつでも手放せるようにしようと思っていたはずなのに、気がつけばそれを惜しむところまできてしまっている。
     優しく髪を梳いてくる手つきは普段なら眠気を誘ってくるが、今日は得体の知れない据わりの悪さを連れてくるばかりだ。落ち着かない。
    「小官は今まで、ずっと銃兎に恋をしていた」
    「……過去形かよ」
    「今もおそらく、半分ほどは恋をしている」
     ああそう、という声にはほとんど感情が乗っていない。乗せないようにするだけで精一杯だった。
     これは本当に別れ話ではないのか。どう考えても別れを切り出される雰囲気に、銃兎の心臓が走る速度を増す。鎖骨の辺りに額を押しつけ、眉間の皺を隠した。呼吸の乱れを誤魔化すように、意識して深く息を吸う。
     毒島メイソン理鶯という男の得難さを、銃兎はその身をもって知っている。初めて会ったときからそれは実感していた。一つ所にとどまる男ではないことも察していた。それでも彼が欲しかった。だから手に入れたのだ。まさか仲間として以外の名を持つ関係にまで発展するとは、あのときは想像だにしていなかったけれど。
     後頭部を撫で、首の後ろに添えられた手が熱い。
    「銃兎、すまない」
    「……別に、謝らなくても」
     抱くだけ抱いて別れるつもりなら前歯の二、三本はへし折ってやろうと思っていたが、実際別れてくれと言われたら殴りかかることはできそうにもなかった。そんなことをしたところで、余計に惨めになるだけだ。そうですねと、冷ややかに笑って受け入れてやるべきなのだろう。
    「どうやら小官は、銃兎を愛してしまっているらしい」
    「………………はい?」
     なにやら面妖な台詞を聞いた気がして思わず顔を上げれば、そこにはベビーフェイスに恥じらいを滲ませた理鶯が微笑んでいた。
    「実を言えば、恋と愛の違いをよく理解してはいないのだが、その……。言ってもいいだろうか?」
    「なに、を……」
    「唯一わかっていることは、家族に抱く愛情を、『恋』とは呼ばないということだ」
     頭の中に滝ができている。轟音を立てて流れ続ける水の激しさに掻き消され、理鶯の声が遠い。
    「あの……、……はい?」
    「手放せると思っていた。手放されても平気だとも。だが、もう『平気だ』と言うことはできない」
     銃兎に嘘はつきたくない、と理鶯が肩を竦める。その裏側に、赤い筋が幾本も見えた。つい先ほど銃兎が刻んだものだ。
     感情の瀑布が思考を乱す。なにを言われているのか理解できない。淡い海の色を見つめることしかできず、その青に呑まれそうだった。
    「家族、って……。私たち、他人ですけど……?」
     困惑のままそう言うと、理鶯は珍しく噴き出すように笑って「ああそうだな」と頷いた。
     銃兎の腰に回っていた手が、ぐっと身体を引き寄せてくる。汗ばむ身体が合わさって、理鶯の心音がはっきりと伝わってきた。身体の興奮は引いたはずなのに、その鼓動は銃兎のものよりもずっと激しくなにかを叫んでいるようだった。
    「他人だからこそなれる家族の形があると思うのだが、銃兎の考えを聞かせてくれ」
    「いや、え、ちょっと意味が……」
    「おそらくそう遠くはない未来で、必ず別れのときがくる。共に同じ時を進むことはできないだろう。それでも、いっときの夢を見させてくれないだろうか」



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    kotoluv15

    MOURNING付き合ってない理銃がひたすらキスするお話で、うっかり飲酒してるのにいるまさんを車で帰らせようとしたためボツにしたシーン。
    車の描写以外はそのまま使う予定。
    2022年の5月か6月の本になるはず。
    理銃NGシーン「今夜はもう遅い。泊まっていくか?」
    「え、あ、いや……、帰り、ます」
    「そうか。では下まで送っていこう。火の始末をする間、少し待っていてくれ」
     おそらく、本能がこの場にとどまることを避けろと命じていた。
     脳裏に飛来したのは取って喰われる恐怖ではなく、その真逆の取って喰いかねない恐怖だった。生まれてこの方異性以外に発情した覚えなどないが、今確かにこの胸の奥にある衝動は、危うい欲と紙一重の場所に居を構えているものだ。
     断じて理鶯をどうこうしたいわけではない。
     信じる神などいやしないが、神に誓ってそう言える。
     ではこの衝動はなにかと問われれば、単に欲求不満が招いた誤作動だと銃兎は答えるつもりだった。もうここ数年恋人の存在はなく、自動的にキスをする相手もいないことになる。左馬刻のシマで情報屋まがいのことをしているママ(性別は男だが)に不意を突かれて強引に唇を奪われた苦い思い出はあるものの、あれはもはやただの事故だ。キスの内に入らない。
    697

    kotoluv15

    MOURNINGなんかシリアスな話になる予定だったらしい理銃
    どんな話にするか思い出せないので供養


     ──誰かを殺したいほど憎んだことがあるか。
     薄っぺらい箱の中で、売り出し中の若手俳優がいささかやりすぎな演技でそんな台詞を吐いていた。手には血まみれの包丁を握っている。どうやら犯人役らしい。BGM代わりにつけていただけの番組が、連続ドラマの最終回だったのだとそこで初めて気がついた。
     銃兎は深く息を吐き、犯人に語りかける主人公の姿をぼんやりと眺めた。主演俳優は五十代の大御所と呼ばれる立場の俳優で、犯人役の若手俳優よりも自然な演技を見せた。分かりますよ、とベテラン刑事の主人公が言う。そして始まる回想シーン。
     繰り広げられる茶番を見ていられず、銃兎は手早くリモコンを操作して電源を落とした。身体の中に澱が溜まるのを自覚する。苛立ちの対処療法として煙草を咥えたが、こういうときに限ってなかなか火がつかずに余計にストレスが増していく。舌打ちと共にフィルターを噛み潰し、火もついていないそれを灰皿に投げ捨ててソファに身を投げた。
     足を抱えるように座面にごろりと横になれば、暗くなったテレビ画面が鏡面と化してくたびれた銃兎の姿を映し出しているのが見える。どうせ誰にも見せることもないのだからと 1555

    kotoluv15

    MOURNING「恋とはいずれ必ず失われるものである」をテーマに見切り発車したら途中で「……なんか違うな」となって放置していた落書き理銃。
    この長さを一度で書ききれないとどうせ続き書かないだろうから供養。
    いつか同じテーマで再挑戦したいです。
    【理銃】


     恋とはいずれ、必ず失われるものである。
     まだ汗も引かぬベッドの上でそんなことを告げられて、銃兎は盛大に渋面を作った。ふわふわと雲の上に寝そべっていたような心地から、南極の海に急転直下だ。喉の奥から出た「はあ?」という声は、誰が聞いてもわかりやすく不機嫌でコーティングされているように思う。
     しかしそうなってしまっても、誰も責められないだろう話題だ。どう考えてもピロートークには相応しくない。たった今肌を合わせ、互いの身体が一つに溶けあうほど深く繋がって熱に浮かされたように好きだのなんだのと言い合ったその口で、言うに事を欠いて「恋は必ず失われる」だ。
    「……理鶯。まさかとは思いますが、ヤるだけヤってから別れ話をしようとしてます?」
    「まさか。だが、小官は事実を言ったまでだ」
     汗ばむ前髪を掻き分けられ、少し腫れたように感じる唇が額に触れてくる。熱を持った胸板に爪を立てると、理鶯は困ったように笑って銃兎の身体をやわらかく抱き締めてきた。
     鼻先に理鶯の匂いが香る。体温が上がって濃さを増した、少し甘い雄の匂いだ。
     別れ話ではないと聞いて確かにほっとした自分を自覚して、銃兎は 1886

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