「お前は些かひとを頼らない節があるな」
「なんの話??」
唐突に投げられた言葉。タブレットを操作しながら買い物途中であったページをそのままにしてカタン、とテーブルに置く。対面に座る彼はいつか見慣れていたはずの着物姿から白シャツにジーパンといった現代ならややラフな格好して頬杖を付きながら立香を見ている。
「身の回りの事は一通りやってしまうし、料理だっておまえの方が美味い」
「それってなんか悪い事なの?」
「いや……そう、だな。悪い事ではない」
「?」
質問の意図が汲み取れずに頭をこてんと傾ける。伊織といえばあーでもないこーでもないと手を組みながら何事ぶつぶつ床に向かって呟いているが思考の渦からは帰還できないようである。
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