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    もくもく

    @8clouds_hrkw

    ss置き場。
    書いたものや書ききれなかったもの、それから進捗をまとめておいています。

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    もくもく

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    謎時空。ナチュラルに同棲してる。あらたに甘えるそまが見たかった。そまは世話する方だと思うけど、そういう人の気を抜いた姿とか、甘える姿ってたまらなくなるなという妄想。あらた面倒見がいいし。

    #颯新
    dashingNew

    微睡む君の回復薬(颯新) 日本の夏はどうしてこうも暑い。湿度が高くて蒸し蒸しする上に、毎日毎日こう猛暑だ、最高気温更新だ! と騒がられるとこっちが干からびたミイラみたいになってしまう。
    「うう……つめたい。ここから離れたくない」
     ぺたり。我が家の中にも避暑地を、と梅雨明け早々導入された接触冷感ラグ。滑り込むようにその上に寝転がった。
     コンビニに行くだけで、アイスも自分も溶けそうになった。無事購入できた氷菓子は既に俺の腹の中に消え、カップとスプーンは汗だくのままテーブルのうえに放置されていた。
     ひんやりとした空間にほっとして、欠伸を一つ。どうせしばらく颯真は帰ってこない。また床で寝てって怒られるんだろうなと思いながら、微睡んだ。
     ぱちりと目が覚める。遮光カーテンをすり抜けてオレンジ色の光りが床を照らしていた。
     随分寝ていたようだ。起きあがろうとすると、何かに挟まっていてうまく動けない。
    「……っ、」
     うなじにすぅすぅと息がかかり、びくりと体を丸めた。背中側に感じる人の気配と体温。
     腹回りにホールドされた腕。これが夏でなければ、恋人同士の戯れとして俺もこのまま二度寝を決めたかもしれないが、とにかく暑苦しい。早々に脱出させてもらう。
     熟睡しているのか、身体はするりと抜けた。抱き枕がわりに颯真が俺に似ていると買ってきたつり目の黒猫の抱き枕をはめてやった。
     もちもちの触り心地がくせになると、いつも颯真の腕の中にいる猫の頬をつっつく。俺、こんなにふにふにしてないし。どうせ誰も見てないからと口を尖らせた。
     それにしても今日は暑くてだるいので、何もしたくない。扇風機の前に椅子を持ってきて、その風を背中に浴びながら、颯真を観察することにした。
    「ん、ん〜〜、……ふぅ」
     むにゃむにゃと寝言を唱えながら、腕の中の猫の首が締まる。随分と熱烈だ。
     今度は自身の頭を猫の首に埋めるように、ぐりぐりと押し付けている。じつはあれ、短い髪の毛がちくちく刺さってくすぐったいし、ごりごりと背中を押されて痛かったりする。
     寝惚けてスキンシップを取ることが多いので、本人には自覚はないんだと思う。
     でも、俺は心が広いので許してあげます。
     これはあんまり知られていないことだけど、颯真が昼寝をするなんて珍しい。猛暑だろうと、豪雨だろうと外で駆け回るようなタイプ。それがこんなにとろとろ溶けて甘えてるんだから、だいぶ疲れているとみた。
     もともと自分のことより世のため人のために働くような性格だ。さっきだって仲違いしている後輩ユニットのために出かけて行った。思ったより帰宅が早い。うまくいったのだろう。
     颯真はここぞというときしか「お願い」をしない。俺に何か頼むときも一応拒否する権利はくれる。なんで、一応ってつけたかって。
     思わず、広めのシャツの襟口から見える紅に視線が落ちた。……こほん。今のはなしで。
     体調が悪くても倒れるまで我慢するし、人からのお願いごとは断れない。
     昔、扁桃腺が腫れるくらいの酷い夏風邪を引いた時は、一週間は会わないと宣言されて、本当に会ってくれなかった。見舞いくらいさせろよ。
     それに押しに弱いところがちょっとある。ちょっとだけ。部活の助っ人とか、外国人の道案内とかそういうことは積極的にするタイプだった。女子からの告白は即座に振るくせに。この人たらし。
     なんだかちょっとイラっとして足の甲で颯真のふくらはぎを蹴る。ただの八つ当たり。俺がどんなに悩んだかあの頃のお前に教えてやりたいよ。
     蹴られた颯真はぴくんと肩を跳ねさせ、小さく呻き声を上げた。
    「んー? あれ、あらたぁ?」
     ぱちりと瞳が開く。恋人からすり替わった猫の顔と目があった。むくりと起き上がった彼は数度瞬きをして、首を捻る。多分……寝惚けてるなぁ。
     床で寝ていたから身体が痛かったらしい。大きな欠伸をしながら、腕を上に伸ばした。どっちが猫みたいなんだか。
    「はいはい。お目当ての新くんはここにいますよー」
     椅子から降りて、胡座をかいている颯真の前で膝立ちになる。腕を広げて、おいでと名前を呼ぶと俺を見つけた颯真がとろんとした瞳で笑った。
     ちなみに朝に強い颯真が寝惚けているのも相当レアだ。知っているのはおじさんとおばさんと、多分俺だけ。嘘だと思うならこいつに聞いてみればいい。まあ、覚えてないと思うけど。
    「ん、」
     がばっと、颯真の腕が再び俺の背中に回される。やっぱり熱い。颯真は子ども体温だから、冬は快適だ。夏のハグはできたらご遠慮したい。颯真は俺が嫌がるのを分かってて、なにかとくっつきたがる。結局、俺が折れる。その繰り返し。
    「……ぐぅ」
    「あ、こら。もうすぐ夜になるから寝るな……って、うわぁ……」
     颯真の腕がくたりと床に落ちる。徐々に俺の方に倒れてくる体を支えきれず、二人とも水色のラグに逆戻り。意識のない人間ほど重いものはない。
    「あーあ。寝ちゃった」
     今度は俺があやすように背中をぽんぽんと二度叩く。
    「おつかれ、颯真」
     面と向かってだとどうせ茶化してしまうから、寝惚けてるくらいが丁度いい。ふぁ……と、俺の口からもあくびが飛び出す。どうせ、何もできないし。たまにはこうしてのんびり過ごすのもいいよね。
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