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    NaO40352687

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    忘羨ワンドロワンライ
    お題: 『仙薬』
    所要時間:58分
    注意事項: 道侶後

    #忘羨ワンドロワンライ
    wandolowanRai
    #陳情令
    theUntamed
    #魏無羨失敗する
    weiMuJealousyFails
    #極上の甘露
    theFinestNectar

    忘羨ワンドロワンライ【仙薬】「止血するには、まずは押さえるってことは学んだよな? 傷口が汚れているなら洗う。毒があれば搾り出して、毒の全身への侵食を進めないように必要以上に体を動かさないこと。刺し傷で絞り出すことが難しい場合は、切開して絞り出すか、吸い出す。――では、今日はその次、丹薬についてだ」
     魏無羨はポンと丸めた教本で自らの肩を叩く。
     今、魏無羨の前に並んでいるのは、これから夜狩に参加を許される予定の若い門弟たちだ。彼らは実戦の前に薬剤の講義を受ける。詳しい内容は薬師が教えるが、初歩の初歩、最初の授業を担うのは夜狩を指揮する高位の門弟と決まっている。今日は魏無羨にその役目が回って来た。
    「夜狩の際には、全員に丹薬袋と止血粉が支給される。もちろん、自前で中の薬を増やしてもいいが、丹薬袋に最初から入っているのは三種類だ。霊気が尽きかけた時のための補気丸、血を流しすぎた時の補血丸、そして霊気をうまく制御できなくなった時のための理気丸だ。理気丸を服用するときは、霊気の消耗が激しくなるので補気丸も一緒に服用することが望ましいが、混迷しているときは補気丸ではなく直接霊気を送る方が安全だ。霊気には相性があるので、日頃から気を付けておくこと。年齢、顔立ち、背格好、血統、似ているもの同士の方が相性はいい」
     門弟たちは目の前に並べられた丸薬を手に取り、確認しながら魏無羨の言葉を書き留める。
    「丹薬は一時的な効果しか持たない。実際は周囲の野草などを使って凌がなくてはならないこともある。夜狩の途中で薬効のある草木を見つけたら、必ず位置を覚え、必要なら手元に確保しておくこと。間違いやすい草もあるから、薬草園の勤めに入るときは、仕事をしながらしっかりと見ておくように。ここの薬草園はかなりの種類を網羅しているからな」
     講義の手伝いとして付いている藍景儀が、小さな白い小瓶を門弟の前に置いていく。
    「次は、止血に使う止血粉だが、大きく二種類ある。雲深不知処で使われているのは、こっちの黄色い方だ。だが、世の中で多く使われる、より薬効が高いのはこっちの赤い封がしてある白い方。白い方は蛇毒を利用しているので、雲深不知処では作られていない。大きな違いとして、黄色い方は内服できるが、白い方は口に入れると害がある。止血粉がない場合は、周囲に生えている蓬などの苦味のある野草を止血に使う」
     小瓶の蓋を開けてしげしげと中を覗き込んでいた門弟は、白い方は蛇毒と聞いて、慌てて蓋を閉めて布巾で手を拭く。
    「とりあえず、丸薬は少し齧るくらいなら何の害もないから、齧って自分で試してみろ。あと、黄色い方の止血粉も舐めても害はない」
     齧った門弟が、ポツリと『甘い』と呟く。
    「そう。丸薬は薬草を粉末にしたものに、米粉と蜂蜜を加え、丸めたものだ。緊急時に服用しやすいように丸薬にしてある。保管が悪いと虫に齧られるから注意しろ。毎日の陸稲の世話も養蜂の勤めも、単に食事のためだけじゃないからな」
     魏無羨は、煎じ薬が煎じ方によって大きく薬効が変わってしまうことや、薬草の保管の大切さなどを次々と話し、門弟たちは一心に筆を走らせた。
     
    「まあ、初歩の初歩はこんなところかな。個々の薬草の薬効は、薬草園の勤めの時に薬師に尋ねたりしておけ。結局のところ、夜狩で頻繁に使うのは止血粉であることが多い。補気丸や補血丸は他で代用出来ることが多いし、血を止めて安静に出来れば殆どの傷は対処可能だ。世の中には何にでも効く『仙薬』なんてものもあるというが、たいてい偽物だ。そうそう都合のいい万能薬は手に入らないからな」
     そうだろうなと言うため息のような微かな笑い声の中、傍に控えていた藍景儀が『え』と大きな声をあげる。
    「なんだよ景儀、お前まさか、騙されて『仙薬』を買ったのか?」
    「いや、買ってはないです。買ってはないですけど。でも、俺、小さい時に『仙薬だ』って言って薬を飲んだんです。苦しくて苦しくて仕方がなかったのが嘘のように消えて、起きあがれないくらいだったのが、すぐに治ったんですよ」
    『嘘だぁ』と茶化す魏無羨に、藍景儀は一生懸命言い募る。
    「本当ですって。絶対に嘘じゃないですよ。だって、その『仙薬』を口に入れて下さったの、含光君なんですから!」
     ポカンと魏無羨は口を開ける。藍忘機がそう言ったと言うなら、確かに『そう』だと言うことだろう。呆れられたと思ったのか、藍景儀は何度も必死に『本当ですよ』と繰り返した。
     
     
    「――というわけなんだよ、藍湛。本当に本当に『仙薬』なのか?」
     帰宅した藍忘機が静室の扉を開けるなり、魏無羨は怒濤の如く今日受け持った薬剤の授業の話を話し始めた。とにかく藍忘機が使ったと言う『仙薬』とは何かを知りたい。それは本当に『仙薬』なのか、藍景儀が言った通り、『昨日までは何ともなかったのに、突然朝から苦しくて起き上がることもできなくなってしまったのを、丸薬一つを口に含んだだけで治った』のかどうか、知りたくて知りたくてたまらない。本当だとしたら、入っている薬は何なのか、何に効くのか、どうやって手に入れたのか、どうやって作るのか――好奇心が疼き始めると、魏無羨は止まらない。
     藍忘機は静かに魏無羨の話を聞くと、『うん』と小さく頷く。
    「確かに景儀に『仙薬』と伝えた。あれはまだ、景儀が結丹する前、八つか九つの時だったと思う。朝から景儀の様子が変だと言って、思追が真っ青になって私のところに来たのだ」
     昨晩まで元気いっぱいだった景儀は、突然調子を崩した。顔色は青褪め、ガタガタと震え、四肢に力は入らず、体は冷えていた。気持ちが悪いと言い、声も出ないほどだった。
    「それが丸薬ひとつで治ったのか」
    「うん、半刻も経たないうちに、元気になったと記憶している」
     ――それは確かに『仙薬』と呼ばれていいような効果だな。
     ブツブツと魏無羨は景儀の症状を繰り返し、半刻で治すなんて一体何が入っていたんだと、考え込む。
    「魏嬰、ちゃんと座って、そして食事をして」
     考えをまとめているのかウロウロと歩き回る魏無羨の手を取り、食事を並べた卓前に座らせると、藍忘機は菜を箸で摘み、魏無羨の口元に差し出してやる。雛鳥のように無意識にそれを噛み取りながら、魏無羨は心ここに在らずといった風で、心は完全に仙薬に囚われている。
     藍忘機はそんな魏無羨の様子に僅かにため息を吐くと、いつも以上に甲斐甲斐しく世話をし始めた。時々投げかけられる質問に答え、食べさせ、口元を拭ってやり、風呂の用意をする。
    「ほら、魏嬰。おいで」
     いつもなら『流石に風呂は一人で』と断られてしまうのだが、すっかり仙薬の虜になった魏無羨は上の空で何の疑いもなく藍忘機の手を取った。幼児のようにされるがままになっている魏無羨を眺めて、藍忘機は微かに満足げに笑った。
     
     
     夜具に包まれたまま、魏無羨は『失敗したなぁ』と心の中で呟く。仙薬のことを色々と考えていたら、いつの間にか食事を与えられ、風呂で頭の先から爪先まで洗われ、そのまま牀に放り込まれた。すっかり心を仙薬に囚われていたせいで、まんまと藍忘機にしてやられた。美しく規律正しく公明正大な含光君は、魏無羨の前でだけ悋気の激しいごく普通の道侶になることをすっかり忘れていた。その道侶がようやく仕事を終えて帰って来たのに、ひたすら『仙薬』のことばかりを質問して、好奇心の赴くままに相手を完全に放置したのだ、拗ねられ不機嫌になられてもいいところを、藍忘機は甲斐甲斐しく食事から風呂まで世話をしてくれた。牀の中で少々我儘に振る舞われたとしても文句は言えない。
    「よいしょ――と」
     魏無羨は牀から身を起こすと、ボサボサに寝癖のついた頭を掻く。隣に道侶は居ない。まだ夜明け前だ、いつもより早く起きたらしい。
    「魏嬰」
     微かな衣擦れの音を立てて藍忘機が牀へと戻ってくる。夜衣に外衣を羽織った簡単な格好だから、静室からは出なかったようだ。
    「あー、藍湛、昨日は、その」
     昨晩のことを謝ろうと口を開いた魏無羨に、藍忘機は微笑みを浮かべた。
    「魏嬰、口を開けて」
    「あ?」
     脈絡のない藍忘機の言葉に、魏無羨は首を傾げる。
    「口を開けて」
     パカリと魏無羨が口を開けると、藍忘機の綺麗な指が黄金色の丸い塊をそっと舌の上に置いた。舌の上で塊はトロリと蕩ける。
    「藍湛、これ」
    「仙薬だ」
     魏無羨はキョトンと目を見開く。
    「これが、景儀の言っていた『仙薬』だ」
     これは魏無羨には馴染みのある味だ。呪具を開発する時など、根を詰めすぎて疲れて来た時に食べるようにと、藍忘機がいつも切らさず用意してくれている、彩衣鎮にある一番上等な甘味の店の、一番上等な――
    「飴じゃないか」
    「そう」
     あの頃、景儀はちょうど体が成長している時期で、特に剣技に力を入れていた。激しい稽古をして夕餉を胃が受け付けず、あまり食べられないままで床に入ってしまい、翌朝、起き上がれなくなったのだ。こういった時、食事を摂らせれば治るのだが、飴を舐めさせる方が早い。ただ、甘やかすわけにはいかないので、『仙薬のようなもの』と言って食べさせたのだ。思追が熱を出した時などにも、飴を口に含ませていたと言う。
     嘘を吐いてしまったことになるのだろうかと、神妙な顔をしている藍忘機を見て、魏無羨は思わず吹き出す。
    「なるほど『仙薬』か。確かにそうだな、紛れもない『仙薬』だ」
     日頃から頑張って自ら節制をしている童が、体調がすぐれない時に貰った極上の甘露。しかも、この人のようになりたいと心から尊敬する師が、自分を気にかけて、床に駆けつけてその手で与えてくれたのだ。
    「ああ、でも、これから講義で話す時には気をつけないとな。景儀はまだ心の底から『仙薬』だと信じているぞ。夢を壊さないようにしないと」
     口の中の極上の甘露を味わい尽くすと、魏無羨は楽しげに笑い、もう一度パカリと口を開ける。
    「藍湛、もう一つ『仙薬』が欲しい」
     朝餉までは少し時間があるからもう一個だけ――と無邪気に甘える魏無羨の舌の上に、藍忘機はそっと黄金色の塊を一つ置いて、嬉しそうに笑った。
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    NaO40352687

    DONE忘羨ワンドロワンライ
    お題: 『仙薬』
    所要時間:58分
    注意事項: 道侶後
    忘羨ワンドロワンライ【仙薬】「止血するには、まずは押さえるってことは学んだよな? 傷口が汚れているなら洗う。毒があれば搾り出して、毒の全身への侵食を進めないように必要以上に体を動かさないこと。刺し傷で絞り出すことが難しい場合は、切開して絞り出すか、吸い出す。――では、今日はその次、丹薬についてだ」
     魏無羨はポンと丸めた教本で自らの肩を叩く。
     今、魏無羨の前に並んでいるのは、これから夜狩に参加を許される予定の若い門弟たちだ。彼らは実戦の前に薬剤の講義を受ける。詳しい内容は薬師が教えるが、初歩の初歩、最初の授業を担うのは夜狩を指揮する高位の門弟と決まっている。今日は魏無羨にその役目が回って来た。
    「夜狩の際には、全員に丹薬袋と止血粉が支給される。もちろん、自前で中の薬を増やしてもいいが、丹薬袋に最初から入っているのは三種類だ。霊気が尽きかけた時のための補気丸、血を流しすぎた時の補血丸、そして霊気をうまく制御できなくなった時のための理気丸だ。理気丸を服用するときは、霊気の消耗が激しくなるので補気丸も一緒に服用することが望ましいが、混迷しているときは補気丸ではなく直接霊気を送る方が安全だ。霊気には相性があるので、日頃から気を付けておくこと。年齢、顔立ち、背格好、血統、似ているもの同士の方が相性はいい」
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    NaO40352687

    DONE忘羨ワンドロワンライ
    お題: 『神頼み』
    所要時間:1時間45分
    注意事項: 空白の16年中
    忘羨ワンドロワンライ【神頼み】 藍景儀は十一を過ぎてしばらくして結丹した。幼い頃から同室の藍思追が同期で一番早く結丹して以来、絶対に自分も結丹するのだと心に決めて、毎日苦手な早起きを頑張り、得意ではない整理整頓も礼法の授業も励んだ。その甲斐あってか思追に遅れること二か月で結丹し、同期の中では二人だけが、今日からの遠出の勤めに参加する。これは結丹した門弟が正式に夜狩に参加できるようになるまでの期間に行われる、夜狩の準備段階だ。
     幼い時から雲深不知処で寄宿生活をする門弟達は、あまり世間慣れしていない。特に藍思追と藍景儀は共に実家が雲深不知処の中にある内弟子で、雲深不知処からほど近い彩衣鎮にすら、年に数回、兄弟子に連れられて出かけたことがある程度だ。夜狩をするとなれば、街で休むなら宿を自分たちで取り、街がないなら夜営を自分たちで行わなければならない。もちろん、食事の準備も自分たちで行うことになるし、夜営に適した場所を選び、様々な采配を行うのも自分たちだ。夜狩では常に列をなして行動できるわけではない。最悪、その場で散開して帰還する羽目になったとしたら、一人で安全を確保しながら雲深不知処に向かわなくてはならない。そのためには地理に慣れ、人に慣れておかなくてはならないのだ。こうした夜狩に必要な知識を遠出の勤めを繰り返すことで習得し、剣技や邪祟の知識などを習得してはじめて、姑蘇藍氏の仙師として夜狩の列に連なることができるようになる。
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    「夜狩の際には、全員に丹薬袋と止血粉が支給される。もちろん、自前で中の薬を増やしてもいいが、丹薬袋に最初から入っているのは三種類だ。霊気が尽きかけた時のための補気丸、血を流しすぎた時の補血丸、そして霊気をうまく制御できなくなった時のための理気丸だ。理気丸を服用するときは、霊気の消耗が激しくなるので補気丸も一緒に服用することが望ましいが、混迷しているときは補気丸ではなく直接霊気を送る方が安全だ。霊気には相性があるので、日頃から気を付けておくこと。年齢、顔立ち、背格好、血統、似ているもの同士の方が相性はいい」
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