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    NaO40352687

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    忘羨ワンドロワンライ
    お題: 『神頼み』
    所要時間:1時間45分
    注意事項: 空白の16年中

    #忘羨ワンドロワンライ
    wandolowanRai
    #陳情令
    theUntamed
    #藍景儀宣誓する

    忘羨ワンドロワンライ【神頼み】 藍景儀は十一を過ぎてしばらくして結丹した。幼い頃から同室の藍思追が同期で一番早く結丹して以来、絶対に自分も結丹するのだと心に決めて、毎日苦手な早起きを頑張り、得意ではない整理整頓も礼法の授業も励んだ。その甲斐あってか思追に遅れること二か月で結丹し、同期の中では二人だけが、今日からの遠出の勤めに参加する。これは結丹した門弟が正式に夜狩に参加できるようになるまでの期間に行われる、夜狩の準備段階だ。
     幼い時から雲深不知処で寄宿生活をする門弟達は、あまり世間慣れしていない。特に藍思追と藍景儀は共に実家が雲深不知処の中にある内弟子で、雲深不知処からほど近い彩衣鎮にすら、年に数回、兄弟子に連れられて出かけたことがある程度だ。夜狩をするとなれば、街で休むなら宿を自分たちで取り、街がないなら夜営を自分たちで行わなければならない。もちろん、食事の準備も自分たちで行うことになるし、夜営に適した場所を選び、様々な采配を行うのも自分たちだ。夜狩では常に列をなして行動できるわけではない。最悪、その場で散開して帰還する羽目になったとしたら、一人で安全を確保しながら雲深不知処に向かわなくてはならない。そのためには地理に慣れ、人に慣れておかなくてはならないのだ。こうした夜狩に必要な知識を遠出の勤めを繰り返すことで習得し、剣技や邪祟の知識などを習得してはじめて、姑蘇藍氏の仙師として夜狩の列に連なることができるようになる。
     遠出に参加する門弟は、各段階から数人ずつが選ばれる。藍景儀のようなこれから学ぶ段階の者、既に食事の準備や采配などの習得段階にある者、夜狩に参加して経験を積みはじめた者――そしてこれらを率いるのが夜狩に熟達した高位の門弟である。今回、藍忘機が引率者として遠出を率いるのは、一つには思追や景儀が周囲に比べて飛び抜けて幼いからだったが、それ以外に、門弟が夜狩に参加できるまで成長したかどうか見極める試験を兼ねているせいだ。
     幼い二人以外の門弟は、既に座学を終え剣技も最終試験付近まで来ている者が多い。その中で藍景儀と藍思追は、特別に兄弟子に手を引かれて歩いている。夜狩では静かに整然と列を乱さず歩かねばならないが、初めて遠出する二人には、それぞれ既に夜狩に参加している兄弟子が付きっきりになって、あちこちを指差しては様々なことを教えている。街を抜けるときは、その街の大まかな地図を教え、良い宿とそうでもない宿の区別の仕方を教える。野道では、注意すべき草や夜営の時に有用な草木を教え、休息の際に利用する街道沿いの井戸の場所や次の町までの距離を教える。藍思追は、慎重で生真面目な性格そのままに、指さされた先を見つめては時々質問しながら歩き、藍景儀は好奇心の赴くまま、身を乗り出すようにして周囲を眺め回していた。
     
    「では、次の井戸で水の補給と休息を行う」
     道中の采配を行う兄弟子の声に、藍景儀は水筒を懐から取り出した。万一を考えて取り出すことを我慢していた水筒には、まだ半分ほど水が残っている。一口だけ含んで再び仕舞い込んだ景儀に、付いていた兄弟子は微笑んだ。
    「うん。最初の言いつけをよく守れているね。次の井戸で水を補給できる確約はない。夜狩では、見つけた井戸が邪祟に穢されていることもあるからね。常に先のことを考えて行動することが大切だ」
     褒められた景儀は嬉しそうにくしゃりと笑った。
     しばらくずっと藪ばかりだった小道の両側に、少しずつ岩肌が近付きはじめて、『関』が近いことがわかる。道幅が狭くなることを利用して、道ゆく民を検分したりする場所だ。夜狩の目的は常に邪祟であるわけではない。特には邪祟のせいかと思われた事件が、人の手によるものの場合もある。そういった時にはこの『関』を利用して検分する。そういった『関』の近くにはたいてい井戸があり、自然に人が留まるようにしてあるのだ。人が座れるような切り株や石が置いてある関もある。もちろん、今回は遠出の勤めだ、井戸に異常があるわけもない。井戸に到着すると、全員、残っていた水で手や顔を清め、新しい水を汲むことにした。
     景儀と思追は水筒の水を入れ替えて、兄弟子に勧められて切り株に腰掛けた。今回の隊列の中で二人は飛び抜けて幼く、体力も華奢だ。何かにつけて兄弟子たちは二人が休めるように手配してくれる。
     景儀は顔を回らし、周囲の様子を面白そうに眺める。ちょうど農繁期にあたるためか道行く人影は少ないが、井戸の周りは綺麗に草が刈られ、整えられている。次の町まではまだ距離があることを考えると、道ゆく人が通りすがりに井戸を利用するたびに整えているのだろう。
     井戸の奥に小さな祠を見つけ、景儀は思わず立ち上がった。祠は背丈ほどの灌木の陰になっているためか、井戸に比べ少し手入れが行き届いていない。
    「景儀?」
     不思議そうな思追の声に返事をすることも忘れて、景儀は祠に歩み寄った。石で作られた小さな祠は下部が苔むして、隙間に枯れた灌木の葉が挟まっている。景儀は枯れ葉を取り除くと、両手を合わせた。
    「剣の修練がどんどん進みますように。早く次の修為に上がりますように。もっともっと御剣で遠くまで行けるようになりますように」
     小さな唇から漏れたのは、彼らしい、少し幼いが素直な願いだ。
     それを見つけた兄弟子たちは笑った。仙師は神頼みはしない。むしろ、神頼みをする民の願いの中から、邪祟や悪事に関連した出来事を探し出して解決に導くのが仙師なのだ。
    「景儀、そんな願いをするものではないよ。祠は民のもの、仙師は祠に集まる願いの中から邪祟に関わるものを探り解決するものだ」
     景儀はハッとして合わせていた手を背後に隠して、バツが悪そうに俯いた。
    「あ、含光君」
     兄弟子の驚いたような声が聞こえるのと、景儀の顔に誰かの影がかかるのはほぼ同時だった。
     驚いた景儀の目の前で、藍忘機は傍に転げていた小さな茶器を祠の前の献茶器台に置くと、そこに自らの水筒から汲んだばかりの水を注いだ。そして、祠の小さな屋根の上の枯れ葉を丁寧に取り除き、静かに手を合わせる。その様子に兄弟子たちも言葉を失った。
     
     
     剣術を修め、皆から含光君という称号で呼ばれはじめた年若い藍忘機にとって、祠とは市井の民の心を推し量る手段の一つだった。供物が多いか少ないか、民の訪れが頻繁か、或いはほとんど訪れがなく寂れているのか――その原因を推測していくと、そこに不意に邪祟が顔を覗かせたり民を虐げる悪辣な出来事が見えてくる。叔父から教えられた通り、極力御剣を使わず自分の足で歩くようにしながら、藍忘機は道筋に祠を見つける度に検分し、以前と変わりがないかと気を付けている。陰鉄の欠片を寒潭洞で託され、一人旅の予定が勝手に押しかけてきた魏無羨によって二人旅になってからも、その態度は変わることはなく、道筋の祠を見つけた藍忘機は、井戸の状態を調べ、祠を検分した。
     船で対岸の大きな街道まで渡り、隣で埒もなく話しかけては一人ケラケラと笑っている魏無羨に内心ため息を吐きながら、藍忘機は灌木に隠れた井戸に立ち寄る。街道から少し北に逸れた小道にある井戸は、あまり使う民が多くないためか、桶を下げる縄が朽ちはじめていた。
    「藍湛、それじゃダメだ」
     縄に霊力を注ごうとした藍忘機の手を止めさせて、魏無羨は周囲の草むらから補強に使える稲に似た植物を探し始める。両手いっぱいに草を摘み取ると、魏無羨は器用に解れて弱くなった縄目に草を編み入れながら補強していった。
    「霊力で補強しても、尽きたら元通りですぐダメになっちゃうだろう? こうしてちゃんと編みなおしてやれば当分大丈夫だ。少なくとも霊力よりは長持ちするし、無駄に霊力を使う必要もない。まあ、限界はあるから、近くで民家をみつけたら井戸の事情を伝えて、銀子を渡して新しい縄に交換してもらえるように頼もう。その方がいい」
     もちろん銀子は藍湛持ちだからな――と軽口を叩きながら、魏無羨の手は止まることがない。
    「器用なものだ」
     その手元を見ながら思わず感嘆したように呟く藍忘機の言葉を聞いて、魏無羨は嬉しそうに笑った。
    「細工物は得意なんだ。同じ力でも今よりもっと遠くまで飛ぶ矢羽を作ったり、井戸の桶を年寄りでも軽々持ち上げられるように屋根と滑車を取り付けたり。これでも結構いろいろ役に立ってるんだからな」
     よしできた――魏無羨はそう言うと、縄をピンと張らせて強度を確かめる。そして水を汲み上げると、藍忘機へと手を差し出す。
    「ついでに水を入れ替えてやるよ」
     差し出された藍忘機の水筒がほとんど減っていないのを見て、魏無羨は首を傾げる。
    「姑蘇藍氏は水筒の水も節制するのか、徹底してるな」
     中身を辺りの草にかけてやり、新しい水を入れて藍忘機に手渡すと、魏無羨は周囲を見回した。木陰に隠れるように建っている祠を見つけると、枯れ葉を払い、倒れた献品台を元に戻す。数歩離れたところまで転がってしまっていた茶器を見つけ、泥を水で洗い流して新しい水を注ぎ祠に供え、足元に新しい蝋燭が数本落ちているのを見つけて、それもきちんと立て直した。
    「あまり人は寄り付かないようなのに、蝋燭がやけに新しいな。井戸の縄に気付いていないみたいだからお参りしたのは近くの民なのかもな」
     魏無羨は両手を合わせると、目を閉じて祠に軽く頭を下げる。その姿を不思議そうに藍忘機が見つめていたことに気付いて、魏無羨はポリポリと鼻の頭を掻いた。
    「祠には民の祈りや願い、苦しみが集まる。仙師は神に祈ることは少ないかもしれないけど、民に寄り添いたいと願うなら、心の支えになっている祠を尊重するのは当たり前だ。俺は神を見たことはないけど、他の誰かを神様のようだと思ったことはあるんだ」
     一人彷徨い歩いた幼い頃、道筋の祠に参る民は魏無羨に優しかった。祠を整えていた老爺が、祠に捧げる供物の中から果物や水を分けてくれたことは一度や二度ではない。
    『これは施しではなく、神様がお前に与えなさいとおっしゃったのだ。遠慮はいらない。感謝は神様に伝えなさい。もしも、これから先、お前が飢えてどうしようもない時、生き延びるために供物を食べる事を神様はきっと許してくださる。でも、必ず手を合わせてから食べるのだよ。感謝の心を失ったら、お前は罪人になってしまうからね』
     だから、魏無羨は祠の乱れを見逃すことができない。祠に託された祈りと信仰は、幼い魏無羨にいつも優しかった。祠に参る老爺や、祠に祀られた神に、何度も『諦めずに生きなさい』と背中を押されて生きのびたのだ。
    「さ、行こうか藍湛」
     魏無羨は跳ねるように街道へと足を進める。藍忘機は、祠を振り返り、ぎこちなく小さく頭を下げた。
     
     
     陰鉄を探す旅に出ていたあの頃、藍忘機にとっての魏無羨は、矛盾した感情を抱かせる相手だった。規則をことごとく破り自分とは正反対の人物だと腹立たしく思う反面、魏無羨が育った雲夢と雲深不知処の違いを考えるとそれも仕方がないのではないかと思い至り、腹立たしく思った自分を反省する。周囲を煽動する軽佻浮薄な人物だと不快に思う反面、その気安さで周囲の士気を上げ教え導くのかと感嘆もした。藍忘機にとって魏無羨とは捉え難い人物であり、善とも悪とも判断がつかず、無視しようと思えば思うほど気になる人物だった。
     いつの間にか背中を預けるのが普通になり、目を見交わすだけで相手の意図が分かり、唯一無二だとお互いに認め合い、押し流されるような日々の激動になす術なく二人して立ち尽くし、それでも必死に前へと進み続け――そして突然、藍忘機の生身の半身を剥ぎ取るようにして魏無羨は消えた。
     子供らしく素直で裏表のない景儀は、時々藍忘機にかつての魏無羨を突きつける。
    「景儀」
     藍忘機の静かな呼びかけに、藍景儀の身体は硬直する。
    「先ほどの言い方では、願いをかけていると誤解されてしまう。お前は修練に手を抜くつもりはないし、楽をして成果を上げるつもりもないのだから、宣誓の言葉にする方が良いのではないか?」
     景儀はポカンと藍忘機を見上げた。思追は慌てて景儀の袖を引き、藍忘機に礼を取る。
    「ありがとうございます、含光君」
     礼をする思追を見て、景儀は慌てて自分も礼をすると、再び祠に顔を向けた。思追も同じように祠を見つめ、二人して手を合わせる。景儀は大きく深呼吸した。
    「剣の修練に今まで以上に励みます。修為をどんどん上げてみせます。もっともっと御剣で遠くまで行けるように――」
     景儀は小さく首を傾げて言葉を探すと、うんと小さく頷く。
    「好き嫌いせず、しっかり食べます!」
     途端に兄弟子たちから明るい笑い声が小さく漏れる。
    「さあ、水の補給もできたし、休息もできた。次の町で宿を取らなくてはいけないからそろそろ行きましょう」
     隊列を整えはじめた兄弟子たちの中に、景儀と思追は嬉しそうに駆けていく。
     あの日の魏無羨と同じ、跳ねるようなその歩みに、藍忘機は静かに目を伏せた。
     
    『さ、行こうか藍湛』
     
     聞こえることのない声を探し、見えないはずの面影を探して、藍忘機は顔を上げる。
     未来から剥ぎ取られてもなお、これほどまでに生々しく隣に寄り添う思い出は、藍忘機の心の中で何度も誓いの言葉を繰り返す。
     
    『一生、悪を挫き、弱きを救えるように』
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    NaO40352687

    DONE忘羨ワンドロワンライ
    お題: 『仙薬』
    所要時間:58分
    注意事項: 道侶後
    忘羨ワンドロワンライ【仙薬】「止血するには、まずは押さえるってことは学んだよな? 傷口が汚れているなら洗う。毒があれば搾り出して、毒の全身への侵食を進めないように必要以上に体を動かさないこと。刺し傷で絞り出すことが難しい場合は、切開して絞り出すか、吸い出す。――では、今日はその次、丹薬についてだ」
     魏無羨はポンと丸めた教本で自らの肩を叩く。
     今、魏無羨の前に並んでいるのは、これから夜狩に参加を許される予定の若い門弟たちだ。彼らは実戦の前に薬剤の講義を受ける。詳しい内容は薬師が教えるが、初歩の初歩、最初の授業を担うのは夜狩を指揮する高位の門弟と決まっている。今日は魏無羨にその役目が回って来た。
    「夜狩の際には、全員に丹薬袋と止血粉が支給される。もちろん、自前で中の薬を増やしてもいいが、丹薬袋に最初から入っているのは三種類だ。霊気が尽きかけた時のための補気丸、血を流しすぎた時の補血丸、そして霊気をうまく制御できなくなった時のための理気丸だ。理気丸を服用するときは、霊気の消耗が激しくなるので補気丸も一緒に服用することが望ましいが、混迷しているときは補気丸ではなく直接霊気を送る方が安全だ。霊気には相性があるので、日頃から気を付けておくこと。年齢、顔立ち、背格好、血統、似ているもの同士の方が相性はいい」
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    NaO40352687

    DONE忘羨ワンドロワンライ
    お題: 『神頼み』
    所要時間:1時間45分
    注意事項: 空白の16年中
    忘羨ワンドロワンライ【神頼み】 藍景儀は十一を過ぎてしばらくして結丹した。幼い頃から同室の藍思追が同期で一番早く結丹して以来、絶対に自分も結丹するのだと心に決めて、毎日苦手な早起きを頑張り、得意ではない整理整頓も礼法の授業も励んだ。その甲斐あってか思追に遅れること二か月で結丹し、同期の中では二人だけが、今日からの遠出の勤めに参加する。これは結丹した門弟が正式に夜狩に参加できるようになるまでの期間に行われる、夜狩の準備段階だ。
     幼い時から雲深不知処で寄宿生活をする門弟達は、あまり世間慣れしていない。特に藍思追と藍景儀は共に実家が雲深不知処の中にある内弟子で、雲深不知処からほど近い彩衣鎮にすら、年に数回、兄弟子に連れられて出かけたことがある程度だ。夜狩をするとなれば、街で休むなら宿を自分たちで取り、街がないなら夜営を自分たちで行わなければならない。もちろん、食事の準備も自分たちで行うことになるし、夜営に適した場所を選び、様々な采配を行うのも自分たちだ。夜狩では常に列をなして行動できるわけではない。最悪、その場で散開して帰還する羽目になったとしたら、一人で安全を確保しながら雲深不知処に向かわなくてはならない。そのためには地理に慣れ、人に慣れておかなくてはならないのだ。こうした夜狩に必要な知識を遠出の勤めを繰り返すことで習得し、剣技や邪祟の知識などを習得してはじめて、姑蘇藍氏の仙師として夜狩の列に連なることができるようになる。
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