夜の桜 せっかく桜が咲き始めたというのに、このところ雨続き。週末には焦凍とお花見デートする予定なのにこの分だと花弁は落ちてしまっているだろう。なんて天気に文句を言っても仕方がない、今は部活の遠征試合中、バスケットボールは幸いにも体育館の中で出来るスポーツなのだから。

『また勝ち進んだんだな、おめでとう』

何その気持ちの入っていないおめでとうは？“だって勝ち進んだってことは勝己が帰ってくる日が後倒しになったってことだろう？”って、そんな何ヶ月も会えてないみたいな言い方するけれど春大会はたった1週間だからな。

『その1週間で俺は干涸びてしまう、深刻に勝己が不足してんだ』

もう、ヒートん時のオメガみたいなこと言ってないで、今イケメンが台無しになるような情けない顔してるだろ？せめてお前の顔が見たいって、しょうがないなァってビデオ通話に切り替えてみたものの、焦凍と話していたら明日の支度ができない。

『可愛い、このまま勝己でオナりてえ』

これ以上イケメン崩壊させンなって叱ってやろうと思ったのに、

『でも週末のデートまで我慢する、我慢した分たっぷり勝己で癒してもらうから覚悟しろよ』

その一言で体にゾクリと電気が走り、俺はそれだけで立っていられなくなりその場にペタンと座り込む始末。やめろよ、本気のアルファの声聞いたら俺の身体がおかしくなっちゃうだろ。じゃあこのまま抜きあうかって、バーカ、エロい動画の見過ぎじゃね？

＋＋＋

可愛い勝己がケダモノどもと一緒に寝泊まりしているだなんてとても正気を保っていられねえ事態、それが1週間ともなると気が狂っちまう。せめて毎晩通話して様子を聞きたいけれど、一日中走り回った勝己は疲れて早く寝ちまうしマジのマジに勝己が足りねえ、

有り余るモヤモヤを吹き飛ばすため雨の合間を見計らってジョギングに出掛け、ついでに週末勝己とお花見デートするコースを予習しておく。オメガの勝己を不用意に人混みに突っ込むわけにはいかねぇから、なるべく混雑しない道を、そしていざという時逸れる横道もチェックする。もしも俺よりも強いアルファが現れた時、勝己を確実に逃すルートも。

（もう既に随分と花は落ちてしまっているからお花見はできねぇな)

正直俺にとっては勝己が花、だからお花見はあくまで勝己とデートする口実。だってどう考えても勝己は桜より綺麗なのだ、淡いピンク色の肌は桜よりも可憐、鼻腔を擽ぐる甘い匂いも時折見せる儚げな印象も、全てが桜を凌駕している桜色の恋人を持つ俺にとっては勝己こそが花、

（いや、この場合食っちまうから勝己は団子に相当するのか？）

＋＋＋

週末まで続いた雨のせいでお花見デートは名前のないデートになり、帰宅して冷えた身体を温めると称して幼馴染の特権を駆使して一緒にバスタブに浸かる。

『はぁ、やっと勝己にさわれる』

デート中ずっと引っ付いてたジャンって、あれは牽制も兼ねているし、人前じゃ色々出来なねえだろ？

ビクンって俺の胡座の上に収まっていた小さな尻が跳ねた、

『色々って言葉に反応したな、ほら、勝己も期待してる』

敏感なところに指を這わすとヒャンと甘い声が漏れ、みるみるうちに羞恥でピンク色に染まっていく、その身体を抱き上げてベッドに寝かせて部屋の灯りを消すと、勝己の白い肌が闇に浮かび上がる。その甘くて柔らかい身体に舌を這わすと薄桃色はどんどん濃くなっていき夜桜のよう、

世界にひとつだけの俺の桜を愛でながら、俺は勝己を食べ始めた。