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    eikokurobin

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    レニ/右爆/轟爆
    眠れぬ夜の小さな図書館

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    轟爆/プロヒ

    #轟爆
    bombardment

    1年後 学校が終わって寮に戻るとリビングが賑わっている。何かあるのだろか、黙って眺めていると、

    『轟くんも一緒にお祝いしない?』

    何を祝うのか訊くと、今日は爆豪くんの誕生日なんだと返ってくる。そうかアイツ4月20日が誕生日なのか…知らなかった、

    『入学した年はまだ学校生活始まったばかりでお祝いできへんかったし、2年生に上がる年は進級すら見えない宙に浮いた状態でデクくんもいなくてそれどころじゃなかったから、3年生の今年初めて皆でお祝いできるんだよ』

    初めてなのか…俺はもう2度も祝って貰っているのに、何なら爆豪からプレゼントも貰っているのに。

    『爆豪さんはして欲しいこととか一切仰りませんので、わたくし達が気付かないとお祝いもできませんの』

    そうか、爆豪は欲しいとか何も言わねえのか。

    (そうだったか?主張の強い奴だと思っていたが)

    仮免補講やインターン先など一緒に過ごす時間が他の奴より長かった俺は爆豪のことを多めに知っているような気がするが、違ったのだろうか?誕生日か、爆豪の欲しいもの、欲しそうなものは………

    (さっぱり思いつかねえ)

    確かに爆豪はあまりしたいことや食べたいものを言わない。辛い味付けを好むことは知っているが、好きなメニューは何かと言われたら解らない。かたや爆豪は俺の好きな蕎麦を作ってくれたこともある。

    (何で今まで知ろうとしなかったんだろう?仲は良いのに)

    そう、この時俺は爆豪のことを何も知らなかった。

    +++

    プロヒになって1年目、というより雄英を卒業して1ヶ月後、待ちに待った爆豪の誕生日がやってきた。1年前は当日聞いたこともあってろくにお祝い出来なかったが今年は違う。プレゼントは用意したしホテルのディナーも予約した。後は爆豪の予定だけだが、卒業式の日に“1月後にお前の誕生日を祝いたいから空けておいてくれ”と言っておいたし、律儀な彼のことだからきっと空けてあるだろう。同じ日無理やり爆豪から聞き出したメールアドレスに待ち合わせ場所を送ると、

    “ニュース見てねえのか?そのホテルなら3日前ヴィランによって破壊された”

    マジか、それじゃ誕生日を祝う場所を探し直さねえと、

    “別にホテルじゃなくてもいーわ、何だったら俺ン家にこい、その辺の店より美味いモン食わせたる”

    そ、それこそマジか、爆豪の家に入れて貰えるなんて!思わず宜しく頼むと返事してしまったが、爆豪の誕生日を祝うのに爆豪の手料理を食べさせてもらって良いのだろうか?確かに今から適当な店を予約しても爆豪の手料理より美味い店は見つけられないだろうが、それとこれとは話が違うような気がする。そうして首を捻っている間にあっという間に爆豪の誕生日、仕事を早めに切り上げて教えてもらった住所に向かいインターホンを鳴らし、出てきた爆豪を見て俺の思考は停止した。

    『何つっ立っとンだ?』

    いや、だってエプロン姿で出迎えてくれるなんて聞いてねえし、なんかエプロン姿ってソワソワしちまうな、

    『今配信中だから大人しく座っとけ』

    そうかなるほど配信中…って、はいしん?取り敢えず座っておけと指で示されたソファに腰を下ろしてから爆豪は事務所の意向でSNSを始めたことを思い出す。プロになってまだ1ヶ月未満なのにもう登録者数が半端ないと誰かが言っていた、確か緑谷からリンクを貰っていたはずだ。どれどれ、開いた動画配信では当然ながらすぐ目の前でキッチンに立つ爆豪が映し出されている。配信のタイトルは【バースデーケーキ】、どうやら爆豪はホールのショートケーキを作っているところを配信しているらしい、その一挙一動に恐ろしい勢いでコメントがついていくが、爆豪は調理をしているからコメントを見ていない。どれどれ、一体何が書かれているのか、美味しそうだの手際が良いなどに混じって流れてきたのは、

    “エプロン姿エッロ”

    (確かにエロいな、そうか、さっき出会った時ソワソワしたのはエロかったからか)

    “人妻感半端ない結婚したい”

    人妻ってなんだ爆豪はまだ人妻じゃねぇしこれから俺と結婚して俺の妻になってもらう予定だ、

    “ホールのケーキは誰と食べるの?もしかしてショートだったりして“

    『そうだ、俺と一緒に食べるぞ』

    “うっそ誰かいる?今声が聞こえた“

    ああ、俺だと爆豪の隣に立つと思いっきり睨まれたが配信中だからだろう、顔出したからにはテメェも手伝えと言われ、危うく芸術的なホイップクリームのデコレーションを壊しかけて即アシスタントをクビになり、またコメントをチェックすると、俺と爆豪の関係についての話題がちょくちょく流れてくる。

    そもそもなぜコメントに俺が出てきたか、それは俺も今日ここにくる前にSNSをしてきたから。ほとんど初投稿と言っていいそこに書き込んだのは、今から爆豪の誕生日を祝いに行ってくると書いたからだろう。爆豪は知る由もないだろうが、これも今夜の作戦のひとつ、その作戦とはー

    『配信終わったわクソがっ、妙なところで妙な顔の出し方しやがって!責任取れや』

    『ああ勿論だとも、それよりも爆豪、お前こそ今日俺をお前の家に入れてくれたってことは、そういうことでいいんだな?』

    白い顔を覗き込むと紅い瞳が僅かに揺れる、まずはディナーを食ってからだと促されていつの間にかご馳走が並べられたテーブルについた。

    +++

    1年前の高校3年生の誕生日、轟に告白された。

    突然好きだと言われて友達ごっこはしねえと言ったら友達の好きじゃねえと言われ大いに動揺した。だが、友達の好きじゃねえとはどういうことだと聞くと明確には答えられず、ただ好きだからだの、尊敬できるからだのと、誰にでも当てはまる言葉を並べ立てた。なるほどコイツは恋愛初心者、いや、もしかしたらまだ恋愛すらしてねえかもしれない。対する俺は違った。

    俺はもっと鮮烈に轟に恋をしていた。きっと俺が轟に求める好きは、轟のそれを遥かに上回るだろう。愛の重さの違いは時に破局を招きかねない、今はまだその時ではない、

    だから俺はこう答えた、【その返事は1年後にするわ】

    暫くは食い下がった轟も丁度1年後には卒業することもあり、今は俺が学業に専念したいのだと解釈し、

    『解った、卒業まで一緒に頑張ろうな、一年後を楽しみにしている』

    とクソいいツラで笑い掛けたが、俺は半分も期待していなかった。だって轟はスゲェモテる、優しくてカッコいい、もしも俺が女だったら落とせたかもしれねぇが、生憎俺は男だった。今は狭い世界で生きているから俺に目が向いたかもしれねぇが、卒業してプロヒになれば一気に世界も視野も広がって俺への恋愛感情なんて四散してしまうだろう、

    そんな心構えでいたから、卒業式の日、1ヶ月後の誕生日を空けておくように言われた時は驚いた。それも前後じゃなくて当日だ、コイツはもしかしたら俺に当日一緒に過ごしたい相手がいるかもなんていう発想はないらしい。更には指定されたホテルはどう考えても婚約などの記念日に利用されるもの、

    さすが世間知らずの坊ちゃんだ、知らず知らずのうちに相手を期待させる物件を用意してしまうだなんて、こうやって糠喜びさせて後でそんなつもりじゃなかったなんて展開を繰り返していたらいつか刺されるぞ、色々思うことはあったけれど、

    1年後に返事をするという約束をしたのは俺だ、だから家に招いた。家ならば不本意ながらガチ泣きしても誰かに見られることはない、今夜一年前の告白を撤回しにきた轟にフラれて俺の初恋は終わるのだと覚悟しておいたのに、

    蓋を空けてみれば配信に顔を出すわ、俺との仲を疑われても全く否定しないわ、晩飯を食い終わるとプレゼントを渡したいと言って差し出してきたのは水色の小さな化粧箱。どう見ても中に入っているのはアクセサリー、

    待てまさか、

    振り払えない程度の力で手を掴まれ、左手の薬指にゆっくりとそれを嵌め込みながら、

    『俺と結婚して欲しい』

    だから待てって、まだ俺は何も言ってねえのに、一年前にたった一言、テメェからの好きだしかなかったこの関係がどうしたらいきなり結婚まですっ飛んでいくんだ?

    手首を掴んだまま轟は続ける。

    『この1年ずっと我慢してきたんだ。爆豪のことが好きで好きで堪らないのに、友達以上の接触ができなくてすげぇもどかしかったし、爆豪が仲良い奴と戯れているのを見る度腹が立って仕方なかった。その度に1年の辛抱だって言い聞かせてきた、あと少しで爆豪は俺のものだってな。だから今日はこうして正面から爆豪を貰いにきたんだ』

    コイツ、俺の意思ってものが丸ごと抜けてやがる…!確かに俺は轟が好きで、轟を俺のものにしたくて仕方なくて、だからこそ慎重になってきたというのに蓋を開けてみれば何だこの茶番は?これじゃ1年間我慢した俺がバカみてェじゃねーか、あまりのことに溢れ出した涙を前にやっとオロオロし始めた轟がいよいよ変な勘違いをする前に、

    これが俺の返事だと轟の唇に唇を重ねてとっくに好きだわ、と囁いた。

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