ファンサービス 久しぶりに緑谷や飯田と飲みにいく機会があり、酒の席で爆豪のファンサービスには定評がある、という話を聞いた…気がする。
気がするというやや曖昧な表現なのは、その話題を聞いた時には既にかなり酒が入っていてその会話の前後をよく覚えていなかったのと、 すっかり酒が抜けて正気に戻った翌朝になってから改めて考えてみても、爆豪が積極的にファンサしているところなんてみたことがなかったから。爆豪がファンに手を振ることはまずないし、笑ってとかウィンクしてとかの要求に応えることもない。唯一サインだけは惜しみなく書いてやるがあとは梨の礫といった所。実際本人に訊いてみると、
『ファンサ?そんなもんこの俺がするわけねーだろ』
まあ、そうだろうなと思いつつも煙のないところに火は立たないという諺を思い出し、今度はしっかりした頭で緑谷に連絡を取り、先日の爆豪のファンサの話っていったいどういうことなんだ?と問いただした結果、
提供された情報を前に今俺は頭を抱えている。
+++
任務終了し、遅くなったからこのまま直帰すると事務所に連絡を入れてマンションに着くと部屋の前に人影がある。ヒーローの自宅にいきなりやってくるヴィラン、というのは考えにくい。ならば何処かから俺の住所でも手に入れたファンだろうか?取り敢えず近付いてみたそこにはー
『テメェなにしてんだ、俺ン部屋の前で』
爆豪が帰ってくるのを待っていたんだと返す轟を取り敢えず招き入れると、
『マジでその格好でうろついていたのか、勘弁してくれ』
格好?ああこれは潜入捜査で…と言おうとする側からいきなり身体を壁に両手首ごと押し付けられ、身動きが出来なくなった所でズイと突き付けられたのは轟のスマートフォン、画面に映っていたのは水色のチャイナ服を着た俺、
つまり今現在も着ている衣装を付けたタイムリーな俺の動画が何故か轟のスマートフォンから流れてくるのだ。それはアングルからして轟が撮影したものではない、もっと複数のカメラから撮影されたもの、
『この動画は【大・爆・殺・神ダイナマイトのファンサービス】ってまとめサイトにあげられたものだ、こんなサイトがあるなんてついさっき知ったんだが、お前、俺の知らねぇ所で色んな衣装着ていたんだな』
ギリ、と締め付けてくる腕は馬鹿力が過ぎてとても外せそうにない。
『俺たち付き合っているのに、何で俺はお前のエロい姿を知らなくてお前のファンは知っているんだ?』
ちょ、エロいってなんだよエロくねーだろ!
…確かにマフィアの親玉に近付く為に闇オークションに出される役をした時は多少際どい格好もさせられたが、そン時くらいであとは普通にスーツとかだし、今日だって露出のない平凡なチャイナ服だろうが!と言うと、
『そのマフィアの時の動画も出回っていた』
マジか、あの潜入操作は一般人の目には付くことなかったはずなのに?アレは流石に恥ずィんだが、誰だそんな映像流出した奴、
『爆豪、お前が自ら好んでエロい格好して人を誑し込んでいるわけじゃねぇってことは解っているつもりだ。だけど、実際にはこうしてお前の映像がファンサービスと銘打って出回っている。それが何故だか解るか?』
ンなこと知るかよと言おうとした口は轟の噛み付くようなキスで塞がれ、戦闘時に切り裂かれたチャイナ服の隙間から手が侵入してくる。
『こんな際どいところを選択的に切りつけられていること自体、何かおかしいと思わなかったのか?』
戦闘中そんなことなんて構っていられねェし、そもそも俺は男だから太腿や胸チラくらい別にどうってことねェわと言い返していると、
『そうか、爆豪は自分のエロさが解らねぇみてぇだから、今から自覚させてやる』
と言ってバスルームに連れて行かれ、その格好のまま下着だけ剥ぎ取られ、デカくなった轟のモノを裂かれて露呈した太腿に押し付けられた。
+++
もともと轟は向かい合ってセックスしたがる方だが、今日に鍵っては着衣のまま、鏡の前に立たされ、後ろから身体中を撫で回される。スリットから差し込まれた手の片方は胸に、もう片方はケツに回され、逃げることも叶わず執拗に攻められた結果、鏡に手を付きバックからヤラレる自分を眺めながらのセックスが始まった。鏡に映る轟の顔はマジで怒っている、
『なぁ爆豪、俺にもファンサービスしてくれよ』
既にこの状況を許していること自体がサービスだろうがっ!と掠れた声で言ってやると、じゃあこの姿がエロいと認めるか?とまたしつこく訊いてくる。そこだけは譲れねぇ、
『格好はエロくねぇ』
抗議しているうちに轟の動きが止まる、
『そうだな、確かに格好自体はエロくねぇ』
だろーが、
『俺が間違っていた、エロいのは格好じゃなくて爆豪だった。どんな服を着ていても中身が爆豪である限りエロくなるのは必然、つまりは何を着てても爆豪が立ち回るだけでファンサービスしているってことなんだな』
ハ?何言っているんだ、コイツ?
と思った途端、ズンと奥まで一気に突かれ一瞬頭が真っ白になる。何か言い返してやりたいのに、それを許さない勢いで身体を開かれ、何度もイかされ記憶を飛ばした翌日の昼下がり、
どんなに布量が多い服を着ても隠しようがない情事の痕を前に怒り狂う俺の前にまたしても差し出されたのは轟のスマートフォン。表示されているのは轟のファンサービス用のSNS、映っているのは明らかに事後って感じの俺の寝顔で、既に数万件のリアクションが付いている。
『俺もファンサービスってのをしてみようと思ってな、前から誰と付き合っているのかしつこく訊かれていたんだ。ずっと無視していたけれど、こうすればファンの期待にも答えられるんじゃねぇか、それにお前に纏わりつく悪い虫への牽制にもなる、いいアイディアだろう?』
そうしてドヤ顔する世間知らずには一生ファンサービスなんて解りゃしねぇ。どーすんだ、こんなことしてっ、これじゃ俺たちがそういう関係だって告白しちまったようなもんだぞ、
『そうだ、だから今から結婚発表しような、そうすりゃ万事解決だ』
って、何が万事だ解決したのはテメェだけじゃねーかっ!