師の心、弟子知らず【ピッコロ視点】未来
『ピッコロさんと一緒なら大丈夫だよ、ね?』
弱気ながらも確信と覚悟を持って振り返る幼子の時も。
『ピッコロさん!へへ、今のどうでした?』
片鱗を見せる強すぎる力を制御して見せる自慢気な笑顔も。
『ピッコロさん。僕に任せてください』
大きくなった背中越しに見る勇ましい顔つきも。
悟飯は俺を師だと仰いでは、なんの疑いもなく信頼を向けた。
それは幾つになっても、悟飯がどれだけ強くなって、俺を追い抜いて行ったとしても、変わらない。
ピッコロさん、と呼ぶその声が俺を何度でも奮い立たせ、俺を悟飯の師たらしめる。
「ピッコロさん?」
瞑想のフリで干渉に浸る俺を覗き込んだ顔は大人になった今も、あのあどけないあほづらだ。
ふっと笑った俺に気を良くして、何ですか?何がおかしいんですか?と嬉しそうにちょろつくのも、いつまで経っても変わらない。
「教えてやるもんか」
「えぇ?!もう、今日は気になって寝られないんですけど」
思ってもない不満を垂れる男の鼻を摘んで立ち上がった。
「お前は変わらんな」
「え?……そう、ですかね?」
「あぁ」
きっとこれから先、ずっと先の未来でもそうして俺を見て笑うんだろう。
そんなことを思って満たされる俺の心も知らずに。
頭をかき撫でてから歩き出す俺の後ろを追う気に満足して、また、はっ、と笑った。
-師の心、弟子知らず-
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【悟飯視点】一緒
『悟飯!気を抜くな!!』
期待を裏っ返したような叱責も。
『悟飯……よくやったな…』
自分事のように誇らしげなその顔も。
『悟飯!!!』
僕の力に期待して送られる合図も。
ピッコロさんは、全ても投げ打って僕に投資する。
どれだけ僕が不甲斐なく、その期待を裏切ったとしても、そんなことはなかったかのように、信頼して僕に預けてくれる。
ピッコロさんは、悟飯、と僕の名前を呼んで、大事な何かを僕に任せて頼ってくれた。
それが僕にとって、どれだけ嬉しい事かなんて、きっと考えたこともないだろう。
「ピッコロさん」
僕の先をいく機嫌の良さそうな背中を追ってふっと笑った。
貴方と一緒なら、何処へだって、どんなことだって出来そうな気がする。
そんなことを言えばきっと嬉しそうに笑いながら、思ってもない悪態をつくんだろう。
素直じゃないその笑顔を一番近くで守れる事を喜びながら、いつまでもその背中を追っていた。
-弟子心、師知らず-