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    Umi1115Tkso

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    Umi1115Tkso

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    室さんの燈、足さんまで届いたら…って話が熱すぎて……
    あと、台風といえば室さんって言うのも…

    凛とした足さんと剛健の室さん、
    楽しく書かせていただきました😌

    モブ小坊主視点で、すいかで大しけの日の室足です…

    ##灯台
    ##室足

    今日の波は高く、燈がなければのまれてしまいそうなほど黒い。右から左から聞こえるざんざんと岩を喰らう音も私の恐怖を煽る。
    そんな闇を照らす白い塔の足元に佇む影にようやく辿り着いた。

    「足摺様!」

    恐怖と波の音に掻き消されてしまわないように少し声を張って、その名前を呼ぶ。
    私の呼び掛けに振り返られた足摺様はその闇の中にあっても柔らかに微笑み、困ったように眉を下げて目を伏せた。

    「…見つかってしまいましたね…」

    答える足摺様の声は静かでも、私のものよりもはっきりと耳まで届く芯がある。それにほっと胸を撫で下ろして、すぐそばまで駆け寄った。先程までよりよっぽど海に近いのに、のまれてしまいそうな不安は不思議と小さくなっている。

    「今、こんな近くに来ては危険です!向こうに人がいくらか待っていますから、戻りましょう!」
    「…いいえ。私は」

    ここを護ります、と覚悟を持って深刻そうに海に向き直った足摺様は、真っ直ぐ遠くを見つめていた。荒ぶ波が今にも掬って攫わんとその足元を濡らしても何も構わないとばかりに凛と立つ。どころか情けなく寄り添う私を庇うように片腕を広げられた。

    少しでも助けになりたくてここまで来たと言うのに、そんなこともままならず、果ては足手纏いを1つ増やしただけ。
    歯痒さから、責めてもと私も海を睨みつけた。

    (…あれは…)

    そんな折、広がった袈裟の隙間からきらりきらりと瞬く燈を見た。足摺様もそれに気がついたのか、みるみるうちに見開かれる瞳。
    その燈を何かの合図のように引き返す波は、さぁあっと軽い音を立てて嘘のように鎮まっていく。足摺様は珍しく悔しそうに表情を歪めて、まったく、と呟いたように聞こえた。

    「……足摺様…今のは?」
    「……もう、大丈夫。戻りましょう」

    苦労をかけましたね、と振り返った顔はいつもの穏やかな笑みをたたえている。
    帰路へと促されながら振り返ると、静かになった海すら牽制するような瞬きが未だ残っていた。
    --------------------
    「おーーーーい!!」

    遥か先に見えた米粒のような影から力強い声が響き渡った。
    それはだんだんと近づいて、みるみるうちに大きくなると、見上げる私の肩をぽんぽんとはたく。

    「室戸様!」
    「よぉ!元気そうだな!」
    「おかげさまで…あ、足摺様ですか?」

    おう!頼めるか、と気持ちのいいご依頼に2つ返事で答えて寺へとご案内した。きょろきょろと楽しそうに中のものに興味を向ける姿はその威厳とは裏腹に親しみやすさを感じさせる。

    そうこうしてる間に着いた足摺様のお部屋の戸に手をかけ、失礼しますと引き開けた。
    部屋で待つ足摺様は室戸様を見とめると昨日の少しばかり悔しそうな顔を再び滲ませて微笑み、私に一瞥をくれる。それに応えて二方を残し、戸をそっと閉じた。1歩2歩とその部屋から離れる。私の影が去るのを見てか、足摺様が話を切り出す声が聞こえた。

    「……昨日は、ありがとうございます。おかげで憂なく床につけました」
    「おっ!届いてたか!随分としけてたからなぁ。こっちも酷いと聞いて、あんたも気を揉んでるんじゃねぇかと思って」
    久々に張り切っちまった。

    そう廊下まで届く豪快な室戸様の声は嬉しさをふんだんに含んでいる。それに応える足摺様の言葉こそ聞き取れなかったが、その音は心底誇らしげなように聞こえた。
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