荘園ってベランダ的なところあるんですかねルカ・バルサーは、恋人であるアンドルー・クレスとの情交を終えて、外の空気を吸う為に扉を開いた。荘園の部屋には簡易的な柵が付いた縁側がありルカは考えが煮詰まった際に、他人との必要以上の接触を避けてそこから顔を出すのを好んでいた。いくら変人・奇人の集いであるこの荘園とは言え、協力した試合が求められるのだから、ルカとはいえ他人の目を気にする。ただひたすらに頭を無にしたいとき、そんな時にこの扉を開けるのであった。
しばらくぼーっと思考を停止させて、ルカは室内をふと振り返る。真っ白のシーツに包まれた恋人の姿を見ると、月の明かりに包まれて淵が曖昧になりシーツの海に溶け込んでいるようだった。こけた頬は荘園で初めて対峙した時よりはふっくらとしたように思うが、骨が浮かび上がるような体全体のラインは変わらない。求めるがままに蹂躙を許し、ルカであるならと視界に入れるのを受け入れた勝手知ったる体は、無防備にその前に横たわるのみである。無防備な姿を見つめて、特徴的な八重歯を覗かせるようにふっと口角があがるのを感じた。
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