君の寝顔でこころが満たされる話既に朝だろうか、昼だろうか、はっきりとは分からないがカーテンから朧な日差しがベッドへ木漏れ日となり線状に落ちていくのを見た。ルカはその光の線を、ピアノの鍵盤の反射のようだと思いながら、ふにゃりと目を開けた。
目を開けた先の光景は碌なものではなかった、ルカの自室だ。煤けた部屋、散らかり壮大である機械薬学の研究紙、そして金属部品、不要な衣類、食事の後、エトセトラ、見慣れた風景が並んでいる。だと言うのに、全ての床や壁に比べて、この頑張れば二人寝られるような小さなベッドの中だけはやけに煌めいて見えている。薄汚れたシーツを少しばかり開けると、恋人であるアンドルー・クレスが無防備な顔でまだすうすうと眠っているのだ。ルカはきゅうと胸が締め付けられるような気持ちになった。白くきらめいた睫毛がゆるりと揺れるのを見るのは可愛らしい。青白い顔色は、睡眠により僅かながら血色も良い。何より、胎児のようにくるりと腹を守るようにして抱え込みながら丸まっているのは、筆舌尽くしがたい。
2098