若さと勢い 部屋にやってくるなりグロスタが覆いかぶさってきたので、俺は慌てて奴の顎を掴んで引き離そうとした。
「っ! おいグロスタ! がっつくな!!」
「すいません、今日余裕なくて」
その言葉通り、ぐぐと力を入れられると、不意打ちされたこともあり、こちらが負けてしまった。俺の手が顎から外れると、そのまま貪られるようなキスを何度も繰り返される。音を立て、舌が絡まり、吸われ、唇を噛まれ……さすがにこちらの息が続かない。
「ばっ! か!! 息、させろ!!」
口が離れた隙を見て言うが、本当にこちらを気にする余裕もないのか、自分本位のキスばかりだ。こいつにしては珍しい、と思う。
俺たちは身体だけの付き合いだ。そこに愛情はない。
けれどこいつが俺を抱く時は、女でも抱いてるつもりか、と言いたくなるくらい優しく抱く。だからこそ、今日みたいなこういう行為は珍しい。つーか初めてだ。
正直、性欲処理だけの関係だから、こういう乱雑な抱き方でも構わない。構わない、が今日の抱き方はいつもと違いすぎて戸惑っちまう。
「こ、んの……野郎!」
キスに夢中で俺の腕など気にしていなかったから、繰り出した右フックがグロスタの頭に華麗に決まった。さすがの不意打ちに抵抗なんざ出来るワケもなく、そのまま吹っ飛んでいった。
「目ェ覚めたかよ」
口を拭いながら半身を起こして、グロスタを見る。頭を押さえながら「うぅ」と声がして、それからゆっくりと身体を起こした。
「……すいませんでした」
しょんぼり、という言葉がぴったりなくらい項垂れたグロスタに少し可哀想な気もしたが、その股間が一切萎えてないことに気づいて俺は引いた。
「おいおい……若いからってさすがにどうなんだ……」