ダンスと酒と太陽と年の差のある同性二人が、部屋を借りて一週間の同棲生活…!!という某局の伝説の旅番組に出演する石川と竜三ネタが降ってきたので書いとく。
①キューバ編
弓の達人の上、五輪の射撃競技でも記録を叩き出してる石川と、キューバで一週間一緒に過ごすという謎企画を持ち込まれた新進のダンサーの竜三。石川ってだれ?くらいの認識。そしてキューバってどこ??だけど、海外タダで行けるとかラッキー、と安請け合い。
先に現地入りした竜三、ボディランゲージと勢いだけの英語で無事アパートに到着。最低限必要そうなものを買って準備して、夕方着の先生を迎えに行く。
どの人だろ、とそわそわゲート辺りで待ってると、人混みの中に厳ついサングラスに柄シャツ、殺気まで漂わすような、一目でお近づきたくない感じの男がやってくる。
あれじゃないよな、あれはきっとヒットマンかなんかだ、違うよな、と目を反らしていたがまっすぐ竜三に近づいてきた男。それが二人の出会い。
石川さん、怖い…リアルゴ○ゴ。何かふわふわした男だな。ピアスも開けすぎだ、と本音カメラに。双方印象よくない。
部屋に着いてまず、料理はできるか?と石川が切り出す。独り暮らし長いんで、まあ。と竜三。そうか、儂は鍋くらいしかできん、と。竜三、料理を任される。
それから、せっかくだから(人の金で)遊んどこう、と好奇心のままにフラフラと満喫する竜三。でも、ここぞというところで腰が引けている。それが歯痒い石川、もっとがつっといかんか、と苦言。
遠征で鍛えた英語と堅気には見えない迫力でホームのように遊んでいる石川。すげーなー、と引っ張られる竜三。
免許取ったらあーいうの乗りたい、と真っ赤なクラシックカーを見つけて言う竜三。そうか。なら乗るか?と言い、話をつけに行く石川。えっ、うそ、マジで??と驚くのをよそに、話をつけて早速運転席に乗り込む石川。そして唐突に始まるドライブ。
キューバ音楽のラジオかけながら、オープンカーすげー!と大興奮の竜三。二人での暮らしの中で緊張しっぱなしだった竜三の楽しそうな様子を見てガキだな、と面白がる石川。そのまま車を走らせて、海にまで出かける。
青いカリブ海と眩しい太陽、白い砂浜。たどり着いたビーチのクラブで、酒を飲んで、熱気と音楽に誘われて踊り始める竜三。地元の人々に混じって、踊り、歓声を浴びながら楽しむ姿を石川はベンチから満足そうに眺めている。
「なあ、一緒に踊ろ」
「踊り方など知らん」
「いいんだよ、テキトーに楽しく腰振ってりゃ」
人混みの中で、からだの触れる距離で踊る。こう、こう、な?手をちょっと取られ、見せながら教えられるステップ。しなやかにリズムを取る姿に、美しいものだ、と内心感心する石川。
そのうち、からだがリズムに馴染み、音楽と踊りの渦の中へ。日が暮れるまで踊りあかす頃には、お互いの前で素で笑えるようになっている二人。
名残惜しくはあるが、酒を買い込んで部屋に戻り、買ってきたエンパナーダを食べて飲んで3日目終了。
翌日、揃って二日酔いで遅くに起きてくる2人。ベランダのソファに伸びて水を飲んでいる。
「グレープフルーツ、半分食う?」
「ああ、すまんな」
1つを半分に切って、砂糖を振り掛けて石川に渡す竜三。はや後半の4日目でまだ、グダグダしている。
「昨日、楽しかったな」
「そうか、それは良かった」
ぽつりと呟く竜三。石川、同意するが実は踊りすぎて腰が痛い。
「石川さん、両手に美女でめちゃめちゃ嬉しそうな顔してたの、見る?」
ラテン美女二人と写る石川、エロジジイと言われても否めないほどに満面の笑顔。
「はぁ?何撮ってるんだお前は。消せ」
「だめ、やだよ。記念だろ」
スマホを後ろに隠す竜三。
「昼になったら復活して、遊びに行こう」
そんな約束をして、午前は二度寝する。午後はハバナ旧市街を歩いて回る。二人でアイス食べる。
5日目、石川がキューバ革命縁の地を巡ろう、と言う。竜三、キューバ革命って何だ??と答える。
石川に案内されながら、歴史を聞く竜三。その夜自分の部屋のカメラに向かって、俺、勉強とか好きじゃねぇけど、革命の話とか歴史聞いて、知らないってダメだなって思った。今のことだけじゃなくてもっと興味をもたないと。と言う。
もう後2日とは短かいものだ。誰かと暮らす、というものは自分が思っていたほど悪くはないのかもしれん。と、互いに目を向け始める。
また、この日は偶然見つけた射撃場にも寄った2人。撃つとこ見たい、と言う竜三。石川はかつてメダルも取ったクレー射撃を選ぶ。竜三にも教えてやる石川。日本に戻ったら、習いに来るといい、とあう。
6日目、今日はどこへ行きたい?と朝食時にきく石川。ちょっと土産を買いたい、という竜三。そしてしばらく考えて、もう一回海に行って踊りたい、と言う。それならば、午前は近場で買い物をし、午後に車を借りて出ようという石川。午前はそれぞれ自由行動。お土産を揃えた竜三、食材を買い込んで少し早く戻るとキッチンに立つ。
アロス.コン.ポジョとロパ.ビエハ。チキンとご飯を一緒に炊くチキンライスと、牛肉と野菜のシチュー。テーブルに用意された食事に驚く石川。
「色々良くしてもらったから、お礼…がわりに。作り方教えてもらって作った」
午前中、買い出ししてレシピを教わり、作った料理。どうかな、とそわそわする竜三に、旨い、と石川。
「珍しいものを色々食ったが、これが一番旨い」
「マジで?」
照れてはにかむ様子を微笑ましいと思う石川。そんな気持ちを感じたことに、後に、驚いたという。
午後、約束通り海へ。今度借りたのは白と水色のオープンカー。初めて来たときはTシャツとかラフな格好だった竜三、今はアクセサリも着けてちょっとおしゃれをしている。
今夜もビーチは盛り上がっている。祝祭のように。世界各国から訪れた観光客らが、さざめき、踊る。
竜三は景気付けにラムを飲んで、人混みに加わる。本気で魅せるダンス、それに視線が集まる。その姿を眩しく、見つめる石川。
熱狂のあと、部屋に帰ってキューバ最後の夜に乾杯する。石川が酒を傾けながら言う。
「初めは、何だかわからん男だと思っていたが。今は旅の相手が、お前で本当に良かったと思っている」
「俺も、最初はあんたのことが怖くてどうしよ、って思ってたけど。この6日で、一人じゃやらなかったような色んな体験をさせてもらったと思う」
ほろ酔いの竜三がふにゃりと笑う。どこからか聴こえる、楽園の音楽。サルサだ。この街は一晩中眠らない。情熱が溢れ返っている。そんな明るく楽しい音楽を聴いて竜三が手を伸ばした。
「なぁ、踊ろ」
「…お前、ほんとにそればっかだな」
「いいじゃん、生きてるって感じがする」
笑いながら、手を取る石川。これからの人生で、こんな風に笑って、草臥れ果てるまで踊る夜なんてあるだろうか、と思う。
最終日、一緒に空港にきた二人。カナダを経由して帰る石川は一足先に出発となる。
「日本に帰ったら、弓を習いに行っていいか?」
「もちろん。散々ダンスを教わったからな」
連絡先を交換する。そして最後に竜三からぎゅっとハグをする。
「気を付けてな。また連絡する」
「お前も迷わず帰れよ。元気で」
出国ゲートに向かうのを見送って、姿が見えなくなってからベンチにゆっくりと腰を下ろす竜三。ちょっと、寂しいな。ぽつりと呟く。
それから、番組の放送後に石川がおもむろにsnsに一枚写真をあげる。耳に赤い花を差して振り返る竜三。自然な笑顔のそれはまたたく間に拡散され、竜三は真っ赤になって顔を覆うのだった。
好評だったので、続いてベルギーのクリスマス編!まで脳内で続いている