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    mmikumo

    @mmikumo 文を書きます。ツシマの石竜、刺客と牢人好きです。渋くてカッコ良い壮年以上のおじさまたちをだいたい書きます。

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    mmikumo

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    牢人×牢人。ただ二人で楽しんでるだけです。

    木陰 暖かな夜。牢人にて拝み屋の伊吹の住む廃寺には今宵も小さな火が点っている。
     寺の半分が崩れてはいるが、幸いにも夜風も堪えられぬという季節はすぎた。
     そして山肌の一角に張り付くように建てられたここからは、青海までを一息に眺め下ろすことができる。村は遠目にも見える花盛り、夜に浮かぶ淡い白がまるでそこだけ極楽のように輝いている。
     ボロくはあるが、気に入りの我が家である。
     今宵はその家に訪れている客がひとり居た。夜へ剥き出しの柱に凭れ、着物と交換で分けてもらった酒をちびりちびりと舐めながら、景色を楽しんでいる。名を十郎という。
     家主の伊吹と同じく牢人で、時折ふらりと現れては、飯を食ったり、飯の種を共に稼ぎにつるむ仲である。
    「なかなかの絶景だな」
    「そうであろ」
     十郎の傍らに座した伊吹が茶碗に酒をついでやる。昼間二人で一仕事終えて、今日はささやかに打ち上げをしている。
    「あの下では宴でもやっておろうな。潜り込んだらタダ飯を食えんかなぁ」
    「内輪の宴会なぞろくなもんではない。それより、ここでお前を抱いている方が良い」
     十郎がふん、と鼻で笑い酒を空ける。そして徐に伊吹の肩に腕を回して抱き寄せた。
    「ん、う…」
     有無を言わさず塞がれる唇。流し込まれた酒が熱く、するりと胃の腑に流れ落ちる。
     それを飲み干した伊吹は、唇を離されて、はぁ、とため息を着いた。
     このたび仕事を手伝って欲しいと持ちかけたのは伊吹である。だが、苦労の割に褒美は期待外れ。誘った分、後ろめたい。
     だから、大人しく自腹を切る事にした。文字通り体で。着物の合わせに手を突っ込まれたまま、もたれかかる。
    「褒美の悪さはお前の責ではないゆえ、こんな風に気を遣う必要はなかったのに」
    「その割に、拒まぬのだな」
    「もちろん。まあ、お前がくれると言い出さなくても誘うつもりであったよ」
    「うん…」
     気休めに床に簑を敷き、その上に押し倒される。そして性急に着物を全て引き剥がす。
     いつものように徐々に乱すのとは違うやり方に、伊吹がいたたまれないと言うように目を固く閉じた。
    「今日はやり方が違う…」
    「夜桜を背に抱く。風情があるだろう」
    「ど助平の言うことはわからん」
     十郎という男とこうなってから、伊吹はずっと女側である。始めての時、女とも数少なく男との経験はない自分と、手足全部の指でも足りないほどに男も女も食い散らかしてきた十郎、という状況で自然とそうなってしまった。
    「またしょぼくれた顔をしておるな」
    「…男の身で、男に乳を吸われればこんな顔にもなる」
    「そうやって葛藤しながら、ぐちゃぐちゃに追い詰められていく顔を見るのが興奮する」「ひどい男…」
     雄の顔で見下ろされて、泣きたくなる。十郎の雄の顔を見ては、何だこの野郎、と雄として噛みつく気持ちが出てこない。
     これが十郎以外なら躊躇いなく金的狙いでも何でもできるが、この男にはできない。何度も食われてしまったからだがそう言う。少しだけ、すん、と悲しくなった。
     体中を触られ、舐められてだんだんおかしくなっていく。今日はもう、乳をねぶられながら、尻の穴を拡げられている。いつもよりずいぶん性急だ。
    「あぁ……」
     腕で目元を覆って顔を隠す。感じるところをみんな変に弄られて、勝手に涙が出てくる。恥ずかしいと感じながら、酷なほどに気持ち良い。ぐちゃぐちゃに追い詰められている。こちらを見下ろす十郎のギラついた目に、肚の奥がきゅうと締まる。
    「あぁ、もうたまらんわ」
     中のしこりをたっぷりといじめられて指を抜かれると、脚の間に体を割り込ませた十郎が切っ先を躊躇いなく宛がった。
    「…もう……?」
    「久し振りの本命に、腫れ上がって痛い。一発抜きたい」
     腰を持ち上げられて、ズブリと。
    「ひいっ…!」
     固く大きな熱の塊が、指の届かなかった奥まで肉を割り裂く。苦しい。圧迫感にはくはくと息が思うように吸えない。十郎が腹をくるりと擦った。
    「大丈夫か?」
    「…ない……くるし…」
     ふるふると首を振る。頬を優しく擦られて深く口付けられて宥められた。
    「本当に可愛い顔をする」
     くるり、と中を捏ねられて腰が跳ねる。そのままゆるゆると揺すぶられ始め、だんだんと動きが大きくなる。
    「あ、あ、あ…!」
     開いた口から息と一緒に声が出る。伊吹は無意識に自分の腰をわし掴む十郎の手首を掴んで、引き剥がそうともがく。
    「へん、なるっ…や、っ、も、かんに…して…っ」
     それには答えず、より深く、貪るように穿たれる。十郎は低く呻きながら、夢中で体を動かしている。
    「くそっ、もたん…」
    「ひ、あっ…!」
     奥にじわりと広がる熱。それを感じた瞬間、伊吹もまた、中を締め付けながら達していた。
    「なか…やめて…」
    「すまん…」
     すんすんと鼻を啜りしゃくりあげる伊吹を抱えたまま、十郎が頭をがしがしとかく。思うようにできんかった、と言わんばかりの恥ずかしそうな様子に、伊吹はちょっと溜飲を下げた。
    「……悪かった…加減ができんかった」
    「…ええよ。久し振りだから、仕方ないな…」
     ばつの悪そうな顔をする男を、伊吹が抱き寄せる。そしてやんわりと床の上に横たえた。
     自分を抱き締めてかき撫でる男は、再び欲を固くしている。伊吹は十郎を宥めるように髪をすいた。
    「…わしと会わん時も、相手には困っておらんのだろ?」
    「…困りはせんが、満足もせん。物足りなくて、いつも餓えている」
     十郎が伊吹の脚を抱え直す。そして再び張り始めたものを入口に擦り付ける。
    「他のがただの酒なら、お前は天の甘露だ。そんなのを知ったら満足などできまい。なぁ」
    「…仏様に土下座して謝れ、ばかもの」
     くちり、と先端を捩じ込まれて伊吹が跳ねる。そのまま奥まで再び押し込まれて、切なそうにため息をつき、身を震わせる。
     月明かりのした、しとどに汗と欲にまみれた体が踊る。それを見下ろし、そうさせているのが自分だと思うと、十郎はたまらぬ、とまた呟いた。
    「じゅ、ろ…」
     慈愛深き瞳が、欲に溺れて泣いている。惚れた相手とからだを繋げて、ひとつになって、熱も欲も共有している。それが頭が溶けそうなくらいに心地好い。名を呼ばれるだけでぞくぞくとする、
     再び愛おしいからだを好きに貪りながら、抱き締める。伊吹はもう文句も言えず、甘く裏返る声ばかりを漏らしている。
     その爪が背に立てられる痛みさえ喜ばしい。はは、と酔ったように笑いながら十郎は我を忘れて夜に沈んだ。

     朝方。白いもやが海に向けて立ち込めている。寺の屋根のある方に共寝しながら、十郎は伊吹の髪を弄んでいた。
     伊吹は顔の半分まで上掛けに埋めて、ぐっすりと眠っている。
     日の下で見れば、昨夜のむしゃぶりつきたくなるような蠱惑はどこへやら、無精髭が気になる男である。目の下の隈も垂れている。
     だが、それでも飽きず眺めたくなるほどには好ましいと思うのだ。
    「男を可愛いと思える日が来るとはな」
     十郎はぼそりと呟き、身を起こす。昨夜激しく活動したため、腹が減っている。干した野菜と肉を砕いて、少しばかりの穀物と共に火にかける。これで少しは暖かいだろう。
    「…んー…」
     木の燃える匂いに気がついたか、伊吹がうなる。そして十郎の背とその向こうの鍋を見て、だるそうに寝返りした。
    「大丈夫か」
    「無体された尻が死んでるわ」
    「なら食えんか」
    「食うに決まっておろ」
     くわぁ、と欠伸して顔を伏せる伊吹。ぼんやりとしている。
    「しんどくて動けんから、式へのお供えは頼むぞ。もちろん、わしのぶんも」
    「わかっておる」
     こうやって朝を迎えるのは二度三度ではない。転がった伊吹に掛布をかけ直してやり、鍋をかき混ぜる。
     他の男や女と寝た後の朝のようなよそよそしい空気とは違い、この親友で相方で、家族でもあるような男と迎える朝は日々の延長だと感じる。
    「俺が後朝に飯を拵えてやるなんぞ、お前くらいのもんだぞ」
    「宿賃がわりにそれくらいせい。わしの家と、わしの貯めた薪だぞ」
    「へいへい」
     たわいもない戯言を楽しむ相手がいる。それが、明日をも知れぬ浮草のような人生の、束の間の癒しになっているのだ、と十郎は気に入っているのだ。
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